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辻仁成Twitter小説『つぶやく人々』

まとめ『つぶやく人々』第一部 http://togetter.com/li/13322 『つぶやく人々』 『fake「つぶやく人々」』http://togetter.com/li/9484 『「つぶやく人々」番外』http://togetter.com/li/12302 続きを読む
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辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター不定期連載小説「つぶやく人々」第一回:ちぇ、つまんねえ、人生最悪。その時、俺は思わずつぶやいちまった。ところが、気まずいことにそのつぶやきを妻に聞かれてしまう。どういう意味よ、妻が言う。ただのつぶやきじゃん、と俺は返す。疑う目で妻は俺を見つめてやがる。まいったね。つづく

2010-03-05 23:46:37
辻仁成 @TsujiHitonari

不定期連載小説「つぶやく人々」第二回:妻は腕組みをし「仕事してるのかと思いきや、またツイッター」と吐き捨てた。「小説家がつぶやいたら、おしまいでしょ?ただでさえ本が売れない時代なのに、あんたにはプライドとかないの? ないよ、とつぶやきかけて、俺は思わず口を手で塞いでしまう。つづく

2010-03-06 04:22:46
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター連載小説「つぶやく人々」第3回:「あんたそんなにぼやきたいことがあるの?」妻がにじり寄って吐き捨てる。俺は後ずさりしながら、おい、ぼやきとつぶやきを一緒にする奴があるか。つぶやくというのはもっと高尚で孤高な行為だ、と反論する。妻が俺の顔を指さしゲラゲラ笑いだした。つづく

2010-03-06 07:08:50
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第4回:締め切りどうするのよ? 女性自身の斎藤さんからさっき電話あって、締め切り二日過ぎてるって。何しているのかと思って覗きにきたら、ツイッター。嗚呼、まさか、あんたツイッターで小説とか書いてないでしょうね。作家がタダで小説配ってどうするのよ。つづく

2010-03-06 07:25:55
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第5回:でも、フォローされているんだ、と俺は思わず反論してしまう。妻は「誰があんたのフォローなんかするのよ」と怒鳴った。くそ、ツイッター知らない奴とじゃ喧嘩にもなりゃしない。俺はパソコンを指さし、今現在2566人、と叫んでしまった。まいったね。つづく

2010-03-06 15:57:32
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第6回:「その2566人のフォロワーがあんたの小説買ってくれるわけ?」妻が素早く計算する。「それはないでしょ」と俺が苦笑し肩を竦めると、妻は切れ、ドアを蹴り上げた。寝ていた愚息6歳が起きてきて「母ちゃんひもじい」と泣きだす。くそ、フォローミー!つづく

2010-03-06 16:06:51
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第7回:「いい年こいてラウドロック?頭振りすぎて手術までしちゃってさ、命がけ?くだらない映画撮るし、その上、ツイッターってか?あは、ばかじゃないの?作家は小説だけ書いてりゃいいのよ、金になる甘ったるい恋愛小説書いてなさい。ねえ、離婚したろか?」つづく

2010-03-06 18:05:33
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第8回:「ちょっと待て、落ち着け!」と俺は興奮する妻を止めた。「俺はただつぶやいてるだけだろ。何の問題がある?」妻は話にならないという顔をして横を向いてしまう。愚息が俺の服を引っ張る。「父ちゃんひもじいよー」くそ、なんてこった。フォローミー!つづく

2010-03-06 18:14:22
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第9回:「誰かへのメッセージなんてもう古いんだよ。時代はつぶやき。お前に分かるか?応答してくださいなんて言ってちゃ駄目なんだよ。みんな勝手につぶやいて、どっか行っちゃう、この世界が俺はいとしい。言いたいこと言い散らかして消えちゃう奴らが新しい」つづく

2010-03-06 18:19:34
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第10回:「新しけりゃいいのかよ!」妻が怒鳴って本棚をひっくり返した。つづく

2010-03-06 18:28:08
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」破壊された仕事部屋に佇み、俺は俺を囲むこの世界の惨状を眺める。まるで大地震だ。愚息は泣くし、妻は切れるし、食糧はなし。頭の手術から二カ月、俺の中で何かが変化していた。変化の渦の中で俺は世界と対峙していた。もっと真剣につぶやかなければ、と思った。つづく

2010-03-06 18:36:30
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第12回:妻は本の瓦礫の中にしゃがみ込み放心している。愚息は泣き疲れて再び眠った。俺はと言えば、ツイッターが気になってしょうがない。日本の携帯がなったので出ると、女性自身の斎藤からであった。「締め切り」と声がしたので、慌てて閉じた。まいったね。つづく

2010-03-06 19:18:22
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第13回:「あなた、愛はどこへ行ったの?」妻がどことは言えない場所を眺め、つぶやいた。俺は心の中で、やった、と叫んだ。あの妻がやっとつぶやいてくれた。人間はつぶやくとき、本当のことを口にするものだ。だから俺はつぶやく人々を信じる。フォローミー!つづく

2010-03-06 19:22:32
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第14回:「パリに渡る前のあなたの情熱が懐かしい」再び妻がつぶやく。おっと、このつぶやきも本音ということか。「いや、愛が深まったってことじゃねえのか?」俺が返す。「愛が終わったんじゃないの」妻が振り返って睨んだので、俺は慌てて視線をそらした。つづく

2010-03-06 19:34:22
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第15回:「あなたを信じてこんな遠くまで来たのに、ツイッター」妻が嘆いた。嘆くのとつぶやくのとでは大きく意味が違う。人生嘆いちゃ駄目だ。つぶやきなさい。思わず俺はつぶやいてしまう。「なんて言ったの?聞こえないわ」妻が立ちあがって俺ににじり寄る。つづく

2010-03-06 19:40:33
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第16回:俺は思わず後ずさりした。その時、仕事机のパソコンに目がとまる。「うあ、見ろ、三千人を超えてる!」大きな声を出したので寝ていた愚息6歳が起きてしまう。「昼ごはん前は2566人だったのに!」妻と愚息がパソコンを覗き込んだ。「3086人だ」つづく

2010-03-06 21:48:39
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第17回:「どういうこと?」妻が言った。「だから、おれのつぶやきを3086人がフォローしているってことさ。まだツイッターはじめて48時間しかたってないのに。すごい。おい、これがツイッターの実力だ。つぶやきが世界を駆け巡るんだ。フォローミー!」つづく

2010-03-06 21:56:19
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第18回:「あ、父ちゃん、また人が増えたよ」「3090人だ!ひゃっほー、フォローミー!」笑う愚息、妻は椅子に腰を下ろした。「ねえ、つぶやく人々、というのがタイトル?」有頂天の俺は、おお、そうよ、と自慢した。「締め切り無視してこれ書いてたのね」つづく

2010-03-06 22:04:36
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第19回:みるみる妻の顔がこわばった。「あんたって人は、本当にどうしようもない与太公ね。こんなことで文学が守れるの?」「いや、これも純然たる小説で、確かに原稿料とかないけど、でも、俺は書きたいという強い衝撃と意志でこれに打ちこんでるんだよ」つづく

2010-03-06 22:11:06
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第20回:妻の言い分も理解出来る。でも、これだけははっきりさせておく必要があった。「プロになる前の俺は、ただ、書きたかったから書いてた。あの頃の俺が今ここにいるんだよ。分かるか?この小説は自発的に生まれて、読まれている。俺の純粋な心が書いてる」つづく

2010-03-06 22:18:53
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第21回:「ZAMZAを始めたのも同じよ。俺が50歳になったから落ち着きましたってバラード歌うわけにゃいかない。ヘッドバンキングしすぎて頭手術してるくらいが丁度いい。俺みてえな変人がいた方がおもしれえだろ?俺はな純粋へ向かってんだよ。命がけで」つづく

2010-03-06 22:27:39
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第22回:「話をはぐらかさないで!」妻が強く遮った。愚息が「でも、父ちゃんのバンド好きだよ」とつぶやいた。俺は息子を笑いながら指さした。みろ、人は本音を言う時、つぶやくもんだ。「金とか名誉は二の次でいい。だから、書かせてくれ。ツイッター小説!」つづく

2010-03-06 22:33:05
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第23回:「だから文学はどうするの?ツイッターに文学は守れるの?」妻は顔を真っ赤にして抗議する。「いや、俺は俺の文学を守るって言ったまでで、文壇を守るつもりはないよ「言い訳よ、今更、守りなさいよ、え!」「父ちゃん、ひもじいよー」まいったね。つづく

2010-03-06 23:39:30
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第24回:気がつくと、俺たちはつぶやいていなかった。夫婦は顔を真っ赤にして日本文学がなぜ駄目になったのかを議論しあっている。俺は、つぶやきエネルギーを補給する必要があった。一人になって膝小僧を抱え、どことは言えない場所にむかってつぶやかないと。つづく

2010-03-06 23:42:35
辻仁成 @TsujiHitonari

ツイッター小説「つぶやく人々」第25回:俺は激怒する妻を遮り、トイレに逃げ込み、つぶやきエネルギーを補給すべく便座にしゃがんでつぶやいた。「文壇にも芸能界にも干されたロンリーウルフなんだからさ、ほっといてくれよ」ところがこれはつぶやきじゃない、しまった、ぼやきであった。つづく

2010-03-06 23:55:02
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