「ガール・ドリームス・オブ・ワット・カム・トゥルー・イン・カラテ?」

少女の夢はカラテで叶うのか?
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#1

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ガール・ドリームス・オブ・ワット・カム・トゥルー・イン・カラテ?」

2015-07-12 21:09:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

これまでのあらすじ (時は5月。大規模作戦「第十一号作戦」時。霧島と港湾水鬼のタイマン等の紆余曲折の末、西方打通聯合艦隊はついにリランカ島港湾部占領に成功。彼の島を戦略的橋頭堡とすることにより、海上打通作戦成功の目途が見えてきた)

2015-07-12 21:15:17
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(だが、先遣隊から不穏な情報が届く。スラビア海の近くに敵の秘匿泊地がある可能性が出てきたのだ。連合艦隊の蹠球元帥は直ぐ様討伐隊を組織。艦娘母艦護衛の水雷戦隊指揮提督としてリカルドを引き連れ、敵秘匿泊地への強襲作戦を敢行するのであった)

2015-07-12 21:20:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(今回のストーリーは、艦娘母艦が敵泊地があると思わしき海域にへ向かう最中から始まる…)

2015-07-12 21:21:21
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

大型艦娘母艦「ふじ」型の2番艦「やつがたけ」が黒々と瘴気に覆われた空の下、悠然と航海を続ける。瘴気に覆われ、太陽も月も見えぬが、館内に設置された時計たちは今が夕刻であると示す。「やつがたけ」周囲を護衛する艦娘は少ない。何故? 1

2015-07-12 21:30:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

理由は空にあった。「やつがたけ」の前方の空が、俄かに眩い雷光に包まれる。嵐が近いのだ。嵐の海での単独護衛行動及び戦闘行為は自殺に等しい。そして、嵐の海で戦闘ができないのは深海棲艦も同じだ。故の少数護衛であった。「……酷くなるな」双眼鏡で空を眺め、リカルドは呟いた。 2

2015-07-12 21:34:53
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは再び双眼鏡を覗き込む。遠く、黒々とした瘴気を貫く様に稲妻と大雨が降りしきる様が見て取れた。「……まるで鋼龍がいるみてぇだな」リカルドの脳裏に、風を操り周囲の天候を荒らす鋼の龍の姿が過る。彼の龍は災害の化身であり、人の身に余る強敵であった。 3

2015-07-12 21:40:53
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だが、この世界は彼等が跋扈する世界ではない。リカルドは双眼鏡を降ろし、艦内へと歩き去る。艦橋に向かう途中、自身の部下の後ろ姿が見えた。「霞か」「?……ああ、アンタか」燻銀めいた髪色の少女・霞は振り向くなり、そう言った。「相変わらず毒舌だねぇ」「何?私これから哨戒なんだけど」 4

2015-07-12 21:45:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは眉を顰めた。彼女は自身の麾下になってから日が短く、言動も棘のある少女であったが、ここまで冷淡な少女ではなかったはずだ。「どうした?何かあったか?」「何もないったら!」霞は高圧的に吐き捨てる。やはりおかしい。「霞」「しつこい!」言動の節々から、遣る瀬無い怒りを感じる。 5

2015-07-12 21:50:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「兎も角!私はもう行くから!関わらないで!」「あ、ああ…」霞の怒声に気圧され、リカルドは思わず頷く。霞は肩を怒らせ、大股で歩き去って行った。「何があったんだ一体…」リカルドは頭を掻き、ぼやいた。「ぬこさんと話でもするか…ん?」艦橋へ向かおうとしたリカルドは再び立ち止まった。 6

2015-07-12 21:55:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは立ち止まり、目を閉じた。蒼黒の甲冑姿も相俟って、物々しい威圧感が周囲に漂う。「泣き声…?」リカルドは耳を澄ませ続け、訝しむ。どこかから泣き声が聞こえてくるのだ。果たして誰の?「……こっちか?」リカルドは来た道を引き返した。 7

2015-07-12 21:59:14
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

歩く。歩く。歩く。歩き続ける。甲板に続く扉を開け、艦の側面へ向かう。次第に泣き声は鮮明にリカルドのハンター聴覚に捉えられてきた。すすり泣くような、少女の鳴き声だ。歩き続け、やがてリカルドは「やつがたけ」側面に備え付けられた救命艇の前に辿り着いた。 8

2015-07-12 22:08:34
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「グスッ…グスッ…」密閉カプセル型の救命艇の扉が開け放たれ、那珂から少女のすすり泣く声が聞こえた。リカルドはカラテ警戒し、救命艇内部に侵入する。「グスッ…ウウ…霞ちゃんの馬鹿ぁ…」「……ア?」薄暗い救命艇の中、そこには、膝を抱え清霜が泣いていた。「何してんだお前」「…へっ?」 9

2015-07-12 22:13:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「うぇ…えっ!ちょ!り、リカルド司令官!?」清霜は泣き腫らした目を擦り、慌てて姿勢を正した。「ななな…何でここに」「それはこっちのセリフだ」リカルドは狭い艇内に屈んで入り込み、兜を脱いで座り込んだ。「お前さん、何してんだこんなところで」清霜はリカルドから眼を逸らす。 10

2015-07-12 22:17:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アー…」リカルドは清霜の顔を見、そして先程の発言に思い至り、問うた。「霞と、喧嘩でもしたか?」ビクッと清霜が体を震わせる。「分かり易いな、お前さん」「うう…」清霜は顔を羞恥で赤らめ、俯いた。リカルドは壁に寄りかかり、ポーチから酒の小瓶を取り出した。「何かあったのか?」 11

2015-07-12 22:23:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「えっ」清霜は顔を上げ、リカルドを見た。リカルドは小瓶の蓋を開け、酒を呷る。「こう言うのは、話せば楽になるもんだ」リカルドの青い瞳が清霜の心胆を射抜く。清霜は竦んだ。目の前の鎧姿の男が実際よりも大きく見えたからだ。清霜は、ポツリポツリと話し出した。「お昼の事なんですけど…」 12

2015-07-12 22:28:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは黙し、清霜の言葉を待つ。「清霜ね、この前大事な人に再会できたんだ」「大事な人?」「うん。とっても尊敬できる人」清霜は言葉を続ける。「それを霞ちゃんに話したらね、「そんな胡散臭い奴は信頼できない」「貴方騙されてるんじゃない」って言われて…」「アー…」 13

2015-07-12 22:34:18
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「それで、それでね。清霜、ついカッとなっちゃって…勢いでケンカになっちゃって…」清霜は再び目に涙を溜め始める。「でも霞ちゃんは強くってすぐ負けちゃって、霞ちゃん言ったの。「そんなんじゃ戦艦なんて夢のまた夢」だって。「いい加減くだらない妄想は捨てなさい」って」 14

2015-07-12 22:37:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

そこまで言い、清霜は再び泣き始めた。リカルドは思考し、言葉を探す。(霞め、もうちょい理性的だと思ったんだが)リカルドは酒を呷り、内心で愚痴る。(確かに誰とも知れぬ馬の骨に友人が心奪われてたら穏やかじゃねーだろうが、態々カラテを振るうまでやるこたぁないだろ…) 15

2015-07-12 22:40:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドの脳裏に、霞の師のカラテが過る。恐るべきアサシンのカラテが。(まぁ、部下の不始末は片付けんとな…)溜息をアルコールで喉の奥に押しやり、リカルドは清霜に向き直る。「なぁ、清霜」「……」清霜は俯いたままだ。「確かにウチの霞の奴が全面的に悪い。そこは上司として謝る」 16

2015-07-12 22:45:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アイツは少々手厳しいからなぁ」リカルドは笑った。「だが、喧嘩はいけんな。隊の規律ってーのは大事だし、霞はお前さんが自分の知らない奴にうつつを抜かしてちょっと嫉妬してたんだろ」「…そうなの?」清霜が僅かに顔を上げる。「まぁ、半分以上俺の推測だがな」「なぁんだ…」「だがよ」 17

2015-07-12 22:48:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「何時までもいじいじ泣いてちゃ、それこそお前さんの尊敬する人ってのに申し訳が立たんだろ?」「……!」清霜の目に、俄かに驚愕の色が滲む。「清霜、そうやって隅っこで泣き暮らしてるのが、お前が憧れる戦艦か?違うだろ?」リカルドは真摯な表情で清霜を見る。「違う」清霜は決断的に言う。 18

2015-07-12 22:52:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「なら」リカルドは笑った。「まずはここから出て霞と仲直りせにゃな」「うー…」清霜は唸る。「何、俺も立ち会ってやるよ」「それなら…」「よし、なら善は急げだ。とっとと…」リカルドは立ち上がり、救命艇から出ようとした。その時!「やつがたけ」が音を立てて揺れる!「グワーッ!」転倒! 19

2015-07-12 22:57:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「リカルド司令官!?」清霜が驚く。「何が…」リカルドは呻いた。突如、二人は浮遊感を感じた。浮遊感を感じたのは一瞬。セツナ!救命艇の下から衝撃が二人を襲う!BOOOOM!「グワーッ!」「ンアーッ!」「何だ一体!」リカルドはドアの外を見た。白い壁が見えた。否、「やつがたけ」だ! 20

2015-07-12 23:00:52
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