ミイラレ!第七話:こっくりさんのこと(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。主人公、さっそくピンチ。 こちらは原文のみになります。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/848118
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第七話:こっくりさんのこと】 #4215tk

2015-07-16 20:36:27
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「電話、終わった?」部室の中から上級生……都月薫が顔を出す。ちょうど通話を切ったところだった四季は慌てて頷いた。薫が笑みを見せる。「そっか!ちょうどいいね。準備ができたから戻ってきてくれる?」「は、はあ……」引きつりそうになる顔を抑え、部室の中へ。1 #4215tk

2015-07-16 20:39:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

部室の中は薄暗い。電気が消されているからだ。窓から入るわずかな光が、部室中央の机を占領する道具を照らす。ひらがな一覧表に『はい』『いいえ』と鳥居のマークをつけた大きな紙。そして十円玉。四季は体を強張らせる。なぜ入学早々、こんなことになっているのか?2 #4215tk

2015-07-16 20:42:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「おかえり、下級生くん」入り口で立ち止まってしまった彼に声をかけたのは外藤(がいどう)。眼鏡をかけた長身の女生徒。「ご、ごめんね?急にこんなことに付き合わせちゃって……」本気で申し訳なさそうに言ったのが鹿島。目が隠れるほどに伸びた前髪が特徴的な、同じく女生徒だ。3 #4215tk

2015-07-16 20:45:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「かいなってば、そんな恐縮しなくて大丈夫だって!」明るい声で鹿島に答える薫に、外藤が半眼を向ける。「そりゃ薫っちはそうだろうさ。あんた少しは急に呼ばれる方の身にもなりなよ」「なんで?あたしはひとときの楽しみを下級生に体験してもらおうと」「もういいわかった。黙れ」4 #4215tk

2015-07-16 20:48:34
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

うんざりと会話を打ち切る外藤に、薫は笑顔のまま首を傾げていた。本気でなぜ呆れられているかわかっていないらしい。「変なの。ま、いいや。日条くんはこっちね」「は、はあ」相手に促されるまま、彼は上級生たちと一緒に机を囲む。なぜこうなったのか。自問自答しながら。5 #4215tk

2015-07-16 20:51:19
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

花子との再会後、彼はほとんど半強制的にこのオカルト研究会に連れてこられた。今隣に座っている研究会の部長、薫の手によって。ほとんど一方的にオカルト研究会の活動紹介を始めた彼女は、部活体験の一環としてあるイベントを催したのだ。つまり、このこっくりさんを。6 #4215tk

2015-07-16 20:54:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「下級生くん、ほんっとうに申し訳ない」対面に座った外藤が真顔で頭を下げた。「こいつ、言い出したら聞かないんだ。野良犬にでも噛まれたと思って諦めてくれ」「あ、いえ」あたふたと四季は視線を彷徨わせる。ふと相手の首元に巻かれた赤いスカーフに目が止まった。7 #4215tk

2015-07-16 20:57:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「よし、じゃあ始めるよー」四季の思考は薫の声で中断された。そして十円玉に指を乗せ、鳥居のマークの上に移動させる。その上に外藤が指を乗せる。次に鹿島。視線で促され、四季も仕方なく最後に指を乗せた。「こっくりさん、こっくりさん、どうぞ御出でになってください……」8 #4215tk

2015-07-16 21:00:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

先ほどまでと一転した落ち着いた声音で薫が呟く。まるで呪文を唱えるかのように。詠唱が始まるとほぼ同時、四季は自分の指の上になにかが乗せられたように思った。「ん、いらっしゃったみたい」薫がにっこりと笑った。「じゃあ質問タイムだ。じゃあ紅子(べにこ)からね」9 #4215tk

2015-07-16 21:03:34
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

外藤が溜息をつき、質問する。「運命の人と出会えますか」十円玉が動き、『はい』へ。「次、かいな」「失くしたものは見つかりますか」『わ・か・ら・な・い』十円玉が移動。「じゃあ次、日条くん」「ええと……」四季が言葉に迷ったそのときだ。部室のドアがノックされた。10 #4215tk

2015-07-16 21:06:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

指先を重ねていた面々は、一人を除きほぼ同じタイミングでドアを見やる。唯一そうしなかったのは薫だ。「はいはーい」明るい声をあげた彼女は、自分の指を引き抜いて立ち上がる。「え」四季は呆気にとられた。こんなにきつく押さえつけられているのに。いや、それ以前の問題だ。11 #4215tk

2015-07-17 20:39:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

オカルトに疎い彼でさえ、こっくりさんを途中でやめるのはまずいことくらい知っている。にも関わらず彼女は「あれ、零冶じゃん。どしたの?」「どしたの?じゃねえよ!」少年の怒鳴り声。驚いて振り向くと、薫を見下ろすガラの悪そうな生徒が一人。対応からして薫の同級生か?12 #4215tk

2015-07-17 20:42:14
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「お前!こっちに新入生引き込んだろ!」「んー?あーはいはい、いるよー。日条くーん」「え、あ、はい」おずおずと立ち上がった四季は薫の元へ。その横で、外藤たちが慌ててこっくりさんの道具を片付け始めている。薫の側にきた四季はようやく気づく。来訪者は一人ではない。13 #4215tk

2015-07-17 20:45:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

零冶という少年の後ろに三人。見たことのない男子生徒。なぜか生徒会長。そして「怜!」幼馴染の顔を見つけ、四季は思わず声をあげた。彼女はわずかに微笑んだあと、すぐにきつい視線を薫へ向ける。「駄目ですよ、都月さん。入学したばかりの一年を居残りさせては」14 #4215tk

2015-07-17 20:48:10
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

咎める生徒会長に、薫は困り顔を見せる。「そんなこと言われても。昼過ぎまで学校にいたのはこの子のほうで」「それは理由にならないでしょう?」ぴしゃり、と生徒会長が言い放つ。彼女の目配せを受けた怜が、四季の手を取った。「さ、帰ろ。四季」「う、うん」15 #4215tk

2015-07-17 20:51:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

こっそり近づいていた鹿島から荷物を受け取り、四季は手を引かれるままにオカルト研究会を後にする。振り返ると、生徒会長らから説教を受けているらしい薫と目が合う。彼女は意味ありげに笑みを浮かべ、ひらひらと手を振った。彼は軽く頭を下げ、怜とともに昇降口へと向かう。16 #4215tk

2015-07-17 20:54:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

…………「トイレの花子さん、ね」帰りの道すがら、四季は怜にこれまでの経緯を説明していた。彼女が顔をしかめる。「事情はわかったよ。後で生徒会長にも説明しておく」「そうしてくれると助かる」四季はほっと一息ついた。同じ退魔師同士、つながりがあるらしいのが僥倖だった。17 #4215tk

2015-07-17 20:57:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「で、あの都月って人に絡まれてたわけか。ちゃんと断らなきゃダメだよ、そういうのは」「そ、そうは言うけど」「しかも連れてかれた先がオカルト研究会?なんか変なもの触らせられたりしなかった?」「う」言葉が詰まる。怜が眉をひそめた。「ちょっと。なにがあったの?」18 #4215tk

2015-07-17 21:00:18
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「じ……実はその」事情を説明しようとしたそのときだ。『捕まえたーっ!』「ううわっ!?」突如脳裏に響いた念話に、四季は驚いた。『ちょっと、小夜子さん!?いきなり大きな声出さないで』『それどころじゃないです!ようやく捕まえたんですから!』『捕まえたって、なにを?』19 #4215tk

2015-07-17 21:03:36
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怜がごく自然に念話で混ざり込んでくる。驚く四季の背後に、小夜子が姿を現した。『これです!』そして手に握ったそれを二人に見せつける。覗き込んだ四季は目を丸くした。『はっ、離せチクショー!』幽霊の手の内でもがくのは人形サイズの怪異。その頭には黒い獣耳が生えていた。20 #4215tk

2015-07-17 21:06:36
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……この子は?」四季は思わず小夜子を見つめ、問う。『四季さんに取り憑きかけてた怪異ですよー!すばしっこかったんですが、なんとか捕まえました!』「取り憑きかけてた、って」怜が渋面を作り、幽霊の手の内でもがく小さな怪異を見下ろす。「いったいなんで……あっ」21 #4215tk

2015-07-18 15:36:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

不意に怜が声を上げ、四季を睨む。「四季、まさかと思うけど。こっくりさんとかやってないよね?」「な、なんでそれを!?」驚く彼に退魔師は露骨に呆れた様子を見せる。「本当にやってるなんて。なに、あのオカ研の部長さんにでもやらされた?」「う、うん……」「呆れた」22 #4215tk

2015-07-18 15:39:17
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

怜は露骨に溜息をついた。「あのね、四季。嫌なことは嫌だってはっきり言わないと!特に四季の場合は体質が体質なんだから」「ご、ごめん」『この場合、四季さんを怒ってもなんにもならない気はしますけどね』小夜子がのんびりと呟いた。そして退魔師に一瞥され、身を竦める。23 #4215tk

2015-07-18 15:42:11
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「……とにかく。こういうふうに憑いてきちゃったってことは、正しい手順で終わらなかったわけか」「都月先輩が途中でやめちゃって」「あのときか。タイミングが悪かった……というか、あの先輩が適当すぎるのか。オカルト好きなら知ってそうなものだけどね」怜がぼやく。24 #4215tk

2015-07-18 15:45:12