明治の愛国的言論人陸猲南「日本」創刊の言

仏塔　ぐでだま亭免堂苦斎 @wheyh

陸猲南　明治の言論人。新聞『日本』の社長兼主筆。正岡子規を後援した。『日本』⇒ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5… pic.twitter.com/YGIlWhxvN9

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【『日本』陸猲南①】新聞紙たるものは政権を争うの機関にあらざれば即ち私利を射るの商品たり。機関を以て自ら任ずるものは党議に偏するの謗りを免れ難く、商品を以て自ら居るものは或は流俗を赴うの嘲を招く。今の世に当たり新聞紙たるものの位置また困難ならずや。然りと雖も自党の利益を謀るに

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【『日本』陸猲南②】偏してみだりに異論を唱え曲事をおおい以て、自らを政党の機関なりと称するものは新聞紙たるの職分に欠く所なきか。時の流行を追い俗の好嗜に投じ、昨是今非すこしも定見ああるなく、ほしいままに文筆を弄してひたすら読客の意を迎え、以て自らを政党外に中立と称するもの

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【『日本』陸猲南③】また新聞紙たるの職分に欠くところなきか。我『日本』はもとより現今の政党に関係あるにあらず。然れどもまた商品を以て自ら甘んずるものにもあらず。吾輩の採る所既に一定の義あり。『日本』の趣旨を特に掲出して新刊の諸言に代う。徳操勇気の以てその本領を保つなくただ勢いに

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【『日本』陸猲南④】走り俗に媚びるは自立の道にあらざるなり。一個人と一国民とに論なくいやしくも自立の資を備える者は必ず毅然を侵すべからざるの本領を保を要す。近世の日本はその本領を失い自らを固有の事態を棄てるの極、ほとんど全国民を挙げて泰西に帰化せんとし、日本と名付けるこの島地は

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【『日本』陸猲南⑤】ことごとくまさに與地図の上にただ空名を懸けるのにならんとす。ニ、三有識の士あり。よく時弊を痛言して大勢の狂奔をふさぎたれども、是ただふさぎたるに止まりて、未だ之を正路に返すの功を全うせず。日本国民はまさに渦水の上に漂いてその棍棒を失うものの如し。

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【『日本』陸猲南⑥】『日本』は自らをはからずもこの漂揺せる日本を救いて、安固なる日本となさんことを期し、まず日本の一旦亡失せる[国民精神]を回復し、かつ之を発揚せんことを以て自ら任ず。『日本』は国民精神の回復発揚を自任するといえども、泰西文明の善美は之を知るざるにあらず。

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【『日本』陸猲南⑦】その権利自由及び平等の説は之を重んじ、その哲学道義の理は之を敬し、その風俗慣習もある点は之を愛し、特に理学経済実業の事は最も之を欣慕す。然れども之を日本に採用するには、その泰西事物の名あるを以てせずして、ただ日本の利益及び幸福に資するの実あるを以てす。

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【『日本』陸猲南⑧】故に『日本』は狭隘なる攘夷論に再挙にあらず。博愛の間に国民精神を回復発揚するものなり。『日本』は外部に向かいて国民精神を発揚すると同時に内部に向かいては「国民団結」の鞏固を勉むべし。故に『日本』は国家善美の淵源たる皇室と社会利益の基礎たる平民との間を緊密

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【『日本』陸猲南⑨】ならしめ、貴賎貧富及び都鄙の間に甚だしき隔絶なからしめ、国民の内に権利及び幸福の偏傾なからしめんことを望む。『日本』は国民の富力を増さんが為、実業の進歩を期し、国民の知力を増さんが為、教育の改良を期す。『日本』は批評諷刺の方法に依り、常に善悪邪正の分を明らかに

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【『日本』陸猲南⑩】せんことに勉むべし。けだし今日百般改良の実を挙げんには政治法律の力よりも、寧ろ社会の公徳を啓発するに如くものなしと信ずればなり。要するに『日本』は内外に向いて共に信義を旨とし、我が『君子国』の称を回復発揚するに外ならず。この故に『日本』は必ずしも二十三年を

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【『日本』陸猲南⑪】まちて多数を国会に占めんと欲する一政党派の欲望を充たすの目的にあらず。また徒に文舞はし筆をも弄びて、無責任の言論をほしいままにするのみにあらず。『日本』は日本の前途に横たわる内外の妨障を排し、「日本国民」をしてその天賦の任務をつくさしめんことを謀るに在り。

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【『日本』陸猲南⑫】もしそれ新聞紙たるの価値如何は読者の慧眼の在るあり。『日本』豈自らあらかじめ之を誇称せんや。（明治二十二年二月十一日）

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祖父の蔵書、正岡子規の全集を引っ張り出して読んでいたら、横に陸猲南の文章を載せた本があって、つい読んでしまった。当時の西洋化に対して論陣を張ったジャーナリストの先人。だが、西洋化に対する論拠が「国民精神」なのはどうなんだ。保守愛国派は結局日本の「国体」を持ち出すしかないんだなぁ。