紙飛行機(カオルレイ)end

紙飛行機、最終話と次作のほんのりとした紹介です
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二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『……え?』 とあるいい天気の日の昼下がり。 私は……初めて「死にたくなるほどの絶望」というものを知った。

2015-06-07 00:48:03
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

事の発端はユウキさんと別れ病室に戻り、チサ先生から昼食を受け取った時だった。 「カオルちゃん……大切な話があるの」 そう真面目な顔で切り出したチサ先生。何故か病室に緊張感が漂う 『なんでしょう?』 少しだけ手話が震えた。

2015-06-07 00:54:14
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「落ち着いて聞いてね」 深呼吸を、1つ。 「……実は、カオルちゃん……余命半年なの」 『……え?』 余命……?余命って?余命ってなに?残りの命って事じゃないよね? 私は……あと数ヶ月で退院出来る筈なんだよね?手術をすれば治るんじゃなかったの? チサ先生はーー嘘をついたの?

2015-06-07 00:56:07
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『え、そん、え、えっと』 「カオルちゃん!続きを聞いて……!」 ギュッと手を握られる。 「本当は、前の計画(プラン)のままで秋頃に退院出来る筈だったの!……だけど、病気が思いの外早く進行して……元の計画のままだと、カオルちゃんの命が……」

2015-06-07 00:58:43
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

つまり。つまり、それは。 「つまり……手術をする日時を、早めなきゃいけないのよ」 手術の日時を……早める。 「それでね、えっと、私達は治すつもりなんだけど……一応、カオルちゃんの意思も聞いておきたくて……」 チサ先生は何を言うのだろうか。 「カオルちゃん……生きたい?」

2015-06-07 01:01:23
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『……生きたい?』 生きたい?とはどういう意味だろうか。さらに頭が混乱する。 「……えっ、あ、ごめん!私ったら何て聞き方しちゃったんだろ……」 ごめんね、とまた謝るチサ先生。 『……生きたくない、死にたいと言う人がどこにいるんですか?』 私は、ただそう答えた。

2015-06-07 01:04:18
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「なら……!」 『でも』 だけど。 『……少し、考えさせて欲しいです……』 混乱した頭では、そう答えるので精一杯だった。 今は、1人にして欲しかった。1人にして、色々情報を整理したかった。 『……私に、時間を下さい』

2015-06-07 01:05:58

お父さんからもらったワンピースをちらりと見やる。
……よし。

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

病院服から白のワンピースに着替え、病院の外へ出る。頬を涼しい風が撫でた。 『(外出るの……いつぶりかな)』 久しぶりの病院の外。ワクワクするはずなのに……私の胸は高鳴りもしなかった。 景色がどこかモノクロのように見える。

2015-06-07 01:15:15
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

『私って……生きている意味、あるのかな』 チサ先生は手術をすれば助かると言っていた。だけど、その手術はとても難しいもの……もしかしたら、私はそれで死んでしまうかもしれない。 だけど、手術を受けなくても私は半年後にはこの世にいない。

2015-06-07 01:16:31
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

どちらを選んだら正解なのか。そもそも、私はなぜ生きているのか。 自分にただ問いかける。だけど、その問いに答える人は……誰もいない。 『……ははっ、当たり前か、そんなん……』 そして、ただ草原の果てを目指し歩く。ただただ歩く。

2015-06-07 01:18:06
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……どれほど歩いたのだろうか。いつの間にか病院からは大分離れ、病院の隣にある建物の場所まで来ていた。 ……ずっと、病室から見えていた建物だ。 『ここ……一体何の建物なんだろう……』 そして、その建物へと近付いていく。見えない力で引き寄せられているように、歩いていく。

2015-06-07 01:22:02
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「あ、危ないよ!」 そんな声が聞こえ、ハッと意識が戻る。いつの間にか目の前には大きな柵があった。 声のした方へ向く。 『……綺麗』 第一印象は、それだった。

2015-06-07 01:23:47
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

短く少しボサボサとした茶髪。服も少しボロボロで汚れている。 ……だけど、その赤い瞳は力強さを灯していた。思わず目を奪われる。 「……え、あ、あの、ごめん!ただ、その柵に近寄ると危ないよーって……」 目の前の少年は私と会話をしようとする。 ーー私は、声が出ないというのに。

2015-06-07 01:26:08
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

こ、え、で、な、い、ん、で、す 口パクで、その事実を伝えようとする。すると、目の前の少年は手で大きな丸を作ってくれた。 ほっとため息をつく。 あ、り、が、と、う 少年が、同じように口パクでそう伝える。……何故ありがとうなのだろうか?少し不思議だ。

2015-06-07 01:28:15
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

……あ、もしかして声を出せないという事実を伝えてくれてありがとう……かな? そう思い ど、う、い、た、し、ま、し、て と伝えた。 ……そして、私の心にはある気持ちが芽生えた。 ーーまた、あの少年に会いたい。会って、話をしたい。 自然と、私の口は動いた。 ま、た、あ、し、た

2015-06-07 01:30:35
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

また明日。 こ、の、ば、しょ、で この場所で。 胸がドキドキする。少年は何と返してくるか……とても緊張した。 わ、か、っ、た そう言い、手で大きな丸を作ってくれた。 ……嬉しい……!自然と笑顔が込み上げる。

2015-06-07 01:32:10
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

そして、少年に手を振り じゃ、あ、ね と言う。少年は手を振り返してくれた。 くるりと背を向け、私は病院へと向かう。 行きとは違い、足取りはとても軽いものになっていた。そして、ある決心もついていた。 ……天国のお母さんへ。私は、この日「生きる意味」を見付けました。

2015-06-07 01:33:59

(お母さんの話は、またいつか)

二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「受けてくれるのね!」 『はい』 あの少年と会った後、私はチサ先生の部屋まで行き『手術を受けます』と伝えた。チサ先生は、とても嬉しそうな顔をする。 「チサー?どうしたの……って、カオルちゃん……」 『ユウ先生!』 部屋の扉から顔を覗かせたのはユウ先生。

2015-06-07 10:48:56
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

私を見て、少し驚いた表情をする。 「ユウ。カオルちゃん手術受けるって」 「え!?」 「だから……頑張らないと」 強く、そう言い切る。 『私はーー生きたいんです。生きて、やりたい事があるんです』 ユウ先生と、チサ先生にそう伝える。

2015-06-07 10:51:35
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

「……そっか。なら、僕達も全力を尽くしてカオルちゃんを助けるよ」 「それは当たり前でしょ、ユウ」 そうして、3人で笑い合う。 この時の私は、希望に満ち溢れていた。世界が色付いて見えていた。 ……この時は……

2015-06-07 10:53:46
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

翌日。私は昨日の場所へ行く。 少し待つと……向こうから、茶髪の人が走ってきた。昨日の少年だ。 こ、ん、に、ち、は そう言い、手を振る。向こうも こ、ん、に、ち、は と返してくれた。 そして、その少年は懐から何かを取り出す。あれは……白い紙?

2015-06-07 10:57:44
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

い、く、よ そう言い、その白い紙を放つ少年……よく見ると、それは紙飛行機だった。 目の前にある大きな柵を越え、綺麗な軌道を描き、私の元へと降り立つ。 紙飛行機が、来た。柵の向こうの少年から、紙飛行機が。 あ、り、が、と、う そう言い、私は笑った。

2015-06-07 10:59:56
二次小説創作ぶどー。 @uminosati

すると、少年は少し悲しそうな顔をして じゃ、あ、ね と言った。……忙しいのだろうか? ま、た、あ、し、た 私の口からは、自然とこの言葉が出ていた(いや、口パクしているだけだけど)。 少年は少し驚いたあとに嬉しそうな顔をした。 それだけで、私の胸は高鳴る。

2015-06-07 11:02:51
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