古典落語 羽織のもやし

2015/03/24 東京浅草演芸ホールにて。 三代目 高槻亭弥生による演目です。
もやし 長文 演ってみた SS やよい うっうー 創作 落語
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伊月遊 @ituki_yu
「真打 高槻亭弥生」 チントンシャン チントンシャン…… ワー……
伊月遊 @ituki_yu
えー、最近はすっかり野菜も高くなり、世間の母親は大ピンチという奴ですな。 世が冷夏なら奥様方の財布の中身もすっかり寒々しい、なぁんて事も申しまして。 ま、そんな時もスーパーには優しい主婦の味方が居るんですな。そう、もやしでございます。
伊月遊 @ituki_yu
大体のスーパーに行くとこのもやし、大体が20円から30円で売ってましてな。 セールの時なんかはもう5円とかえらい事になるのもしばしばでございまして。 まあー、わたくしなんかの家でもこのもやしは大変に重宝しておりましてな。
伊月遊 @ituki_yu
何せ噺家なんてぇもんは全く食えないもんでして、特にこの785プロなんかじゃそりゃあもう、 もやしなんてもんを食える日はあなた、幸せってもんですよ。 毎日木の根をかじって一人ロビンソンクルーソー的なねぇ、漂流系アイドルといった売り方なんかも考えておりまして。
伊月遊 @ituki_yu
ま、そんなもやしではございますが、皆さんご存知の様にこれが非常に優秀な食べ物でございまして、 煮ても焼いても炒めても、何に合わせても大体美味しく頂けるという、とても良いものでございます。 わたくしもお給金を貰えた日にはもう、たらふくもやし三昧でして。
伊月遊 @ituki_yu
いやほんと毎日もやしでも飽きが来ない。お金の無い学生さんにも非常に人気が高いですな。 そんな人気ですが、やはり今も昔もほんとに人気の高い物は続くというものでございます。
伊月遊 @ituki_yu
江戸の頃にも大層もやし好きの清兵衛という男がおりましてな。 この清兵衛さん、そりゃあもう大のもやし好き。5袋でも10袋でも平らげるという非常にもやし好きの男だったと聞きます。 さて、この清兵衛さんがいつものようにもやし屋へやって来てですな、ぺろりと13袋たいらげました。
伊月遊 @ituki_yu
これはいつもの事だったんですが、その日はちょいと話が違いました。 それに居合わせた馴染みの八っつぁんが、 「なあ清さん、あんた13袋は毎日食ってるが、じゃあ20袋ならどうなんだ?」 とこう言ったのでございます。
伊月遊 @ituki_yu
それを聞いたもやし好きの清兵衛さんはいかにも余裕そうに 「何言ってやがる、俺の胃袋は宇宙でい。20袋なんて余裕余裕」 と答えましてな。 それを聞いたばくち好き八っつぁんの血に火が付きまして
伊月遊 @ituki_yu
「ほぉーう、おもしれえ。じゃあ20……いや、30袋平らげたら1分(ぶ。1/4両)やる。 ただもやし一本でも残したらそっちが1分払うってのはどうだい?」 とまあ、こう言うもんですからもう大変です。
伊月遊 @ituki_yu
それを聞いた清兵衛さんは自信満々に 「おう、良いともさ」 と、すぐにおかみに30袋注文しましてな。 机の上はあっという間にもやしだらけになり申した。 それを清兵衛さんはがつがつと平らげるんですな。
伊月遊 @ituki_yu
それから半時もしない内に、いったいどこに入ったやら、あの大量のもやしは跡形も無く無くなってしまい、 清兵衛さんは意気揚々と「じゃ、こいつは貰っていくぜ」と八っつぁんの手から一分を受け取り去っていきました。 清兵衛さんは嬉しそうですが、八っつぁんはそりゃあもう大変に悔しがりまして。
伊月遊 @ituki_yu
それから翌日、いつものように清兵衛さんがもやし屋に現れるや否や、待っていた八っつぁんは、 「よぅし、今度は40!40袋で一両!勝負だこのやろう!」 と掴み掛かる勢いで言ってきたんですな。
伊月遊 @ituki_yu
それでも清兵衛さん、一瞬は驚いたものの、 「あんたも懲りないねぇ、本当に良いのかい?」  と満更でも無い様子。 そうしてその日もあっさりと40袋平らげていく清兵衛さんなのでしてな。
伊月遊 @ituki_yu
二度も負けた八っつぁんはもうがっくりと肩を落としましてな。 そんな様子が可愛そうだったんでしょうな、もやし屋のおかみさんが慰めようとこう言ったんですな。 「あんた、あの清さんにゃあ勝てないよ。なにせあの男、本気を出せば50袋はいけるって話さ」
伊月遊 @ituki_yu
おかみさんは慰めようとしたんでしょうが、それを聞いた八っつぁんは途端に明るい表情になりましてな、 「なんやあいつ50袋までしか食えんのか!じゃあ70袋食わせれば勝負いけるやん!(ゲス顔)」 と大層喜んだのでございます。
伊月遊 @ituki_yu
さて、その翌日、早速八っつぁんは清兵衛さんにこの話を持ちかけました。 すると流石の清兵衛さんもこれには苦笑い、清兵衛さんが今まで食べたことのある最大は55袋だったのでございます。 嫌ぁな顔をする清兵衛さん、それを見逃す八っつぁんじゃあございません。
伊月遊 @ituki_yu
「よし、4両だ!70袋で4両やろう!」 それを聞いた清兵衛さんは余計に悩みます。4両ってえ言いますと今の価値で大体50万円くらいですな。そこそこな金額でございます。 ただもやしを食うだけで4両ですが、清兵衛さんにも未知の量だったのでございまして。
伊月遊 @ituki_yu
そこで清兵衛さん、丁度商いで信州の方に出向く用事がありましてな、ひとつそれを理由に 何か良い作戦が思いつくまでこの博打を延期しようと持ちかけたのでございます。 八っつぁんははじめ嫌がりましたが、自分から出した話ということもあって、渋々それを受け入れました。
伊月遊 @ituki_yu
さて、そうして多少の猶予が出来た清兵衛さんではございますが、頭を捻ってもどうにも名案が浮かばない。 こうしていたら4両みすみす取られてしまうと、悩んでおりました。 そうして考え込んだまま信州に向かう清兵衛さん。その途中でとある物を見つけたのでございます。
伊月遊 @ituki_yu
信州への道すがら、山道を歩いておりますと、なにやら森の奥で大きな物がガサゴソと動いているのを目にしましてな。 何だろうと思い、息を潜めてこっそり近付いてみると、なんと大きな大きなウワバミが、旅人を飲み込んでいる最中だったのでございます。 そりゃあもう清兵衛さんは大層驚きましてな。
伊月遊 @ituki_yu
それでも声を立てずに必死に隠れていると、ウワバミがなにやら苦しみもがきだしたのでございまして。 流石に人ひとりを飲み込んだのが苦しかったのでございましょうな。そうして見ていると、今度はウワバミは岩陰に生えている黄色い草をぺろりと舐めたのでございます。
伊月遊 @ituki_yu
そうするとどうでしょう、あの四斗樽のように膨れていたウワバミの腹が、元のように小さくなっていきました。 そうしてすっきりとした様子になると、ウワバミは森の奥へと消えていきました。 それを見ていた清兵衛さんは 「これだ」 と思ったのでございます。
伊月遊 @ituki_yu
早速ウワバミが居なくなってから、恐る恐る物陰から出てきて、その黄色い草を少しばかり懐に拝借する清兵衛さん。 これさえあればもやしの70袋や80袋、屁でも無いと笑いながら、意気揚々と旅路を急いだのでございます。
伊月遊 @ituki_yu
それから一月後、再び江戸に戻ってきた清兵衛さんは、早速八っつぁんに例の勝負を持ちかけましてな。 八っつぁんは待ってましたと言わんばかりに食いついて、大勢の観客が見守る中で、 瞬く間に江戸のもやし屋はフードバウトの席へと相成ったのでございます。
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