フォン・シュタウフェンベルクは民主主義のためにヒトラーを殺そうとしたわけではない

「当時のドイツ人の大半は、帝政という非民主主義政体で生まれ育った人々」ということはあの時代を考察・評価する上で欠かせない要素であるという話と、銃後の国民にとってはDNAレベルで飢餓の恐怖が刻み込まれていたという話。
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こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

今日はヒトラー暗殺未遂事件が起こった日、そして明日は実行犯のクラウス・フォン・シュタウフェンベルクが軍法会議で裁かれて死刑になった日なわけだが、現在のドイツでは英雄扱いのシュタウフェンベルクではあるが、本人は別に民主主義のためにヒトラーを爆殺しようとしたわけではないのがミソだ

2015-07-20 22:02:02
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

冷静に評価すると、7月20日のヒトラー暗殺未遂事件は「極右が別の極右を理想の違いから爆弾テロで暗殺しようとした」というろくでもない事件なのは否めない。

2015-07-20 22:05:02
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

シュタウフェンベルクは、突撃隊のような「伝統を汚す成り上がりのならず者集団」が長いナイフの夜で排除された時には単純に喜んでいた。ヒトラーという独裁者の方針がドイツのためにならないと確信して暗殺によって排除しようとはしたが、独裁が登場した時には何の疑問も持たなかった。

2015-07-20 22:20:24
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

……と、いうのは後世だから言える評価。 別の視点では、そもそもがシュタウフェンベルクたち当時のドイツ人にとっては、帝政という非民主主義政体こそが生まれ育ったなじみ深い政体であり、共和制や民主主義というのは帝政崩壊で棚ボタ的に現れた異邦人でござった

2015-07-20 22:27:09
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

だからシュタウフェンベルクがヒトラーを暗殺しようとした動機が「民主主義、共和制のため」でなかったからといって評価を減じるというのはややアンフェアである。しかし、現在の「戦う民主主義」を掲げるドイツ連邦共和国が彼を英雄視する理由も、若干の違和感を残す。

2015-07-20 22:29:29
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

ああそうそう、「ヒトラーが登場した当時のドイツ人の有権者の大半は、帝政という非民主主義政体で生まれ育った人々」というのはあの時代を考察・評価する上で欠かせない要素です。これよく忘れられて、他の時代の他の国と安易に比べられる。

2015-07-20 22:34:15
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

「世界でもっとも民主主義的で先進的だったワイマール憲法」の下でヒトラーは登場した……とはよく言われるが、国家を構成するドイツ人たちもまたそれに比例して民主主義的で先進的だったかというと別にそんなことなかった。この点よくスルーされて「民主主義がヒトラーを生んだ」論に使われる。

2015-07-20 22:38:39
内田弘樹 @uchidahiroki

ドイツ連邦軍がシュタウフェンベルクをはじめとするヒトラー暗殺計画参加者たちを英雄視(軍の始祖とする)するのはそうでもしないと軍を創設する大義名分さえ立てられない、というけっこう切迫した事情があったような気がする。西ドイツの市民でさえ、連邦軍の創設に反対する声が大きかったんだから。

2015-07-21 19:29:12
40面相のくりいむ @muhonnocream

@uchidahiroki シュタウフェンベルクは下手したらヒトラー以上に右寄りの可能性が…。

2015-07-21 19:36:17
内田弘樹 @uchidahiroki

冷戦時代序盤、米ソが衝突してソ連軍がバコバコ核打ち込みながら西ドイツに侵攻するかわからなかった時代でさえ(あるいは、だからこそ)西ドイツ市民のあいだで軍への拒否感が強く、軍の精神的始祖にシュタウフェンベルクなどの神話の担い手を担ぎ出さないといけなかった、というのは興味深い。

2015-07-21 19:32:48
内田弘樹 @uchidahiroki

ドイツ連邦軍は政治的に血まみれなイメージ。

2015-07-21 19:34:33
玉井克哉(Katsuya TAMAI) @tamai1961

あと、敗戦の仕方が、第一次大戦のドイツは国内でほとんど闘っておらず、空襲もほとんど受けてなかったという点で違う。庶民に敗戦の実感がなかった。

2015-07-20 23:19:48
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

↓うにゃ、これは大筋であってるけど若干違います。敗戦の実感がなかったのは前線の将兵。銃後の民衆は、日本の老人が語り継ぐ「配給が少なくてお腹が減って大変だった、芋を盗んだ」レベルでは到底及ばない飢餓にあえいでいた。

2015-07-20 23:25:18
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

第一次世界大戦のドイツ帝国は(どの国もそうだったが)長期戦を考えていなかったので、食糧政策でポカをやらかしまくり、終戦前後には人口ピラミッドで乳幼児のとこが大きくえぐれるほどの飢餓地獄が訪れた。

2015-07-20 23:27:35
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

一方、前線の将兵たちは比較的食糧が回されていた(とはいっても、やっぱり少なかったので、英軍の潤沢な食糧庫を見て作戦そっちのけでドイツ兵が群がったりもした)ので、敗戦は「銃後でアカ(社会民主党)がなんかやってカイザーを追い出して戦争を負けさせやがった」という「伝説」がはびこった

2015-07-20 23:30:44
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

これが「アカの背後からの一刺し」伝説である。

2015-07-20 23:31:10
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

そして銃後の民衆には、DNAレベルで飢餓の恐怖が刻み込まれた。

2015-07-20 23:32:07
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

プロイセン以来の伝統を誇り「軍が国家を作っている」「国家内国家」とまで言われたドイツ軍は、忠誠を誓うべき皇帝という存在を「アカ」のために失ったと思い込み、渇望にあえいだ。 民衆は、とにかくなんでもいいからお腹を満たしてくれる存在をこそ正義と信じた。

2015-07-20 23:37:40
玉井克哉(Katsuya TAMAI) @tamai1961

なるほど。敗戦の実感がない兵士と飢餓に苦しんだ銃後の庶民の双方に、ヒトラーはアピールしたと。

2015-07-20 23:50:05
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

これらの要素はNSDAPが権力を握ったプロセスと密接にかかわっているし、権力掌握後のNSDAPの政策や行動にも表れている。そこまでグダグダ話していると夜が明ける

2015-07-20 23:39:56
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

ナチス党歌の「旗を高く掲げよ」に、わざわざ der Tag für der Freiheit und für Brot bricht an って、「自由(Freiheit)」と同列に「パン(Brot)」が並んでるのはやっぱり飢餓の民族的記憶のせいだよなぁって

2015-07-20 23:45:11
shin nao @shixxna

@MyoyoShinnyo ハンス・ペーター・リヒターの著書「ぼくたちもそこにいた」に「総統のおかげでカツレツが食べられる」と話す男性が。カブラの冬を経験したドイツ人民にとってシュニッツェルが食べらるようになった現実を経て、ナチスを信用する過程が書かれていました。

2015-07-21 00:03:09
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

あと、有名なプロパガンダ映画「意志の勝利」では、党大会にあわせて集った若い党員やユーゲントたちがキャンプで健康な体を披露したり、湯気の立つスープ鍋やソーセージをわざわざ映したりすんのね。あれも、飢餓という地獄を味わったドイツ人たちへのアピールであったことは想像に難くないね

2015-07-20 23:47:08
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

まーなんつーの。とにかく、当時のドイツと21世紀の極東の島国では、いろいろ前提が違いすぎるほど違うんですよ。

2015-07-20 23:50:29
こなたま(CV:渡辺久美子) @MyoyoShinnyo

数か月に一回、ワイマールやナチスの政治の濃い目の話をするとそれ系の話を期待してかフォロワーが微増するのだが、アカウントの「画像と動画」のとこをクリックして「こいつ基本的にくだらない方向の垢だな」というのを見知り置いてからフォローしてください

2015-07-21 00:16:34