鋼鉄の咆哮×艦隊これくしょんSS「超兵器の金剛6」

今回から順次更新式にしていきます。 ご容赦を。
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さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

横須賀鎮守府の演習場。 海上に浮かべた的に向けて、艦載機の矢を放つ空母がいた。 正規空母、加賀。 第零遊撃艦隊の赤城とは、前世も含め長い付き合いになる艦娘である。 彼女が放った流星は、正確に魚雷を投下して、丸太の目標を粉々に砕いた。(2) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:31:07
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

だが、彼女にとってそれはただつまらない的当てのようなものだ。 丸太は自分で動きもしないし、対空砲火も撃ってこない。 こちらを睨むことも、笑うことも、反撃してくることもない。 本当につまらない、ただただ的を射るだけの作業。 はあ、と自然にため息が漏れた。(3) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:32:48
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

これ以上やってもしょうがない。 演習場を後にしようとした加賀だったが、ふいに空を仰ぎ見た。 流れる雲の隙間を注視する。 そして一本の矢を、真上に放った。 変化した矢は偵察機の彩雲となり、雲を抜けて上昇していく。(4) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:37:00
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

雲の海から飛び出した彩雲は、すでに加賀と視覚を同調させていた。 加賀の命令どおりに動きながら、ついに目標を発見する。 入道雲の壁に沿いながら飛行する、一機の飛行艇。 巨大な翼が機体を吊り下げている独特の形状と、青いカラーリングに大きく描かれた白い星。(5) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:39:35
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「カタリナ……?」 加賀の口からその名前が漏れた。 カタリナ。 アメリカ海軍の哨戒飛行艇がその正体だった。 「アメリカ海軍が、なぜこんなところに?」 この世界のアメリカは、前世のように日本と敵対しているわけではない。 むしろ今は同盟関係にある。(6) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:42:15
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

現在、日本に一番近い米軍基地はハワイである。 航続距離が長い飛行艇でも、こんなところまで来られるはずはない。 日本近海に米海軍がいるという話も聞かない。 なによりそのカタリナは、人が乗っているとは思えないサイズだった。(7) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:45:20
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

もっと観察しようと、あわよくば機体番号でも確認できればと彩雲をカタリナに近づける。 その時、加賀の視界でカタリナの後部機銃が、ゆっくりと銃口を向けてきた。 ダダダッ。 「うあっ……!」 刹那、目に鋭い痛みが奔る。 彩雲が撃墜されたのだ。(8) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:47:12
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

意識を集中しすぎたために、加賀にもダメージが返ってきたのだ。 地面に膝をつき、目元を手でおさえる。 「くっ……。提督に、知らせないと……」 まだはっきりとしない視界で、壁に手を付きながら、それでも加賀は力強い足取りで提督のいる執務室へと向かった。(9) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:49:00
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

<南西諸島海域、どこかの島影> 「ふふ、まさか気づかれるとは思わなかった。さすが播磨を沈めた鎮守府の艦娘だ」 呟くのは、白い海軍士官の服に身を包んだ、大柄な女性。 腰まで届く金髪を風に揺らしながら、炎のように赤い目をぎらつかせて空へ微笑みかける。(10) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:51:19
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

彼女が背負う巨大な艤装が唸りを上げる。 それは滑走路かと見間違えてしまうほど巨大な飛行甲板で、一本の長い甲板の左右が展開し、翼を広げた鳥のような形状へと変形していく。 エレベーターからせり上がってきた何十機もの飛行機が、カタパルトに接続された。(11) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:53:14
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「私は播磨のように甘くない。飽和攻撃で一気に殲滅してやる。さあ、行け!」 一斉に飛び立つ飛行機の数は、あっという間に百機を越えた。 その場で旋回して編隊を組み、横須賀へ向けて高度を上げていく。(12) #超兵器の金剛6

2015-07-22 23:56:12
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

ヘルダイバー、デバステーター、アベンジャー、ヘルキャット……。 米海軍の主力機が群れを成して、青い空を黒く覆い尽くす。 「さて、私も動くか」 脚部の機関を稼働させ、彼女は静かに進む。 穏やかな波の上を、ゆっくりと、悪鬼のような表情を貼りつかせて。(13) (続く #超兵器の金剛6

2015-07-23 00:01:45
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

(続き) 「加賀さんっ!」 病室に飛び込んできたのは、正規空母の赤城だった。 よほど急いで来たのか汗だくで、勢いが付きすぎて入った途端に床に転んだ。 「赤城さん、私は大丈夫だから」 「大丈夫じゃ、ないじゃない」 加賀は、両目を覆う様に包帯を巻いていた。(14 #超兵器の金剛6

2015-08-27 01:04:07
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「明石さんの話だと、視覚を偵察機を同調させすぎたことで負荷がかかりすぎたみたい。しばらくすれば治るわ」 「そう、よかった……」 赤城はベットの隣にあったパイプ椅子に腰かける。 「提督にはすでに報告してあるわ」 「聞いたわ。彩雲を落したのはカタリナだそうね」(15 #超兵器の金剛6

2015-08-27 01:09:22
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「そう。でも、あのサイズはどう見ても私たちのような艦娘が操っているとしか思えなかった」 「提督が確認したけれど、日本の近海で活動している米海軍の艦娘はいないそうよ。それどころか、艦娘が運用するようなカタリナはまだ実戦配備されていないって」(16 #超兵器の金剛6

2015-08-27 01:12:23
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「なんですって? でもあれは間違いなく……」 「私も提督も加賀さんが見間違いをするなんて思っていないわ。だからこそ目星がついたともいうべきね。米海軍以外に、米軍機を運用することができる存在に」 「そんな艦が実在するの?」 赤城は大きく頷く。(17 #超兵器の金剛6

2015-08-27 01:17:08
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「以前、南西諸島海域で私は魚雷艇の大群に襲われたことがあるの」 「知っているわ。確か操っていたのは超兵器……まさか」 「そう。カタリナは超兵器が運用していた可能性が高いわ」 「となると敵は水上機母艦、もしくはそれに近いものなのかしら」(18 #超兵器の金剛6

2015-08-27 01:21:26
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

いいえ、と赤城は首を振る。 「加賀さんは知っているかもしれないけれど、カタリナって車輪が付いていて陸上でも運用することができるわ。長ささえ十分なら、空母からも発艦は可能よ」 「ちょ、ちょっと待って赤城さん。カタリナは二発とはいえ大型機なのよ」(19 #超兵器の金剛6

2015-08-27 01:25:41
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

一瞬黙りこくる赤城。 数秒たって、加賀に言い聞かせるように口を開く。 「加賀さん。超兵器に、私たちの常識は通用しないわ。金剛さんに確認を取ったの。米軍機を運用可能な、空母型超兵器の存在を」 「……居た、のね」 「ええ。居たわ。それは超巨大高速母艦……」(20 #超兵器の金剛6

2015-08-27 01:29:27
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

超巨大高速空母『アルウス』。 一つの飛行場ほどの甲板を有し、千機に届く数の艦載機を運用するとまで言われている巨大空母。 その恐るべきは、超重爆撃機すらも搭載可能な強固な装甲甲板と、60ノットを超える俊足にある。(22 #超兵器の金剛6

2015-09-03 02:13:38
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

横須賀鎮守府執務室。 提督は頭を抱えていた。 出現するたびに、超兵器は人類の想像を超えてくる。 「つまり、なんだ。我々は高速で海の上を渡る飛行場を相手にすればいいわけ、だな」 引き攣った顔で金剛に尋ねる。 「Yes. あいつはとびっきりの化け物空母ネ」(23 #超兵器の金剛6

2015-09-03 02:15:48
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「アルウスにしてみれば、カタリナはこっちでいう彩雲みたいなモノ。B-29だって飛ばしてもおかしくはないネ」 「冗談でもやめてくれ、とは言えないか。常に奴らは最悪の状況を運んでくる」 はあ、とため息をつくのもこれで何十回目だろうか。(24 #超兵器の金剛6

2015-09-03 02:18:02
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

空襲で損害を受けた榛名には耳に痛い話ばかりだ。 前世では空母から重爆を発艦させた例もあるが、超重爆ともなればまた話は変わってくる。 それも相手は艦娘化しているのだ。こちらのように何度も何度も飛ばしてくるとなると、悪夢でしかない。(25 #超兵器の金剛6

2015-09-03 02:20:01
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