【ミイラレ!第八話:三本足の人形のこと】(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするお話。一難去ってまた一難。 こちらは原文のみになります。実況つきはこちら→ http://togetter.com/li/851085
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

【ミイラレ!第八話:三本足の人形のこと】 #4215tk

2015-07-22 21:21:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「これは」デタラメに鳴り続ける携帯から目を離し、四季は怜の様子を伺う。彼女の顔はすでに退魔師のものへと変化していた。「『メリーさんの電話』か。いつの間に目をつけられたんだろう」「つまらぬ人形の怪異」鬼女が嘲るように笑みを見せる。「ここに乗り込んでくると?」1 #4215tk

2015-07-22 21:24:22
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

メリーさんの電話。それくらいは四季だって知っている。電話に出る度に近づいてくる怪異。最後には電話主の背後に到達して……そのあとはどうなるんだろう?「と、とにかく。電話に出なければいいんだよね?」「まあ、理屈から言えばそうなるんだけど」退魔師が厳しい表情で言った。2 #4215tk

2015-07-22 21:27:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ま、たぶん無理でしょうな」「え?」あっさりと言う巡。四季がその意味を問いかけようとしたその時。『もしもし。私メリー・トリスケル』携帯電話がひとりでに喋り出す。四季は慌てて画面に目を下ろした。操作もしていないのに通話状態。『今、北都高校の校門にいるの』3 #4215tk

2015-07-22 21:30:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

ぶつん。対応するより早く通話切断。「……おかしいな。触ってないはずなんだけど」「関係ありませんよう。怪異ですもの」巡が笑う。「人間が知恵を回してどうにかなっちまうようじゃ、商売あがったりなんですよ」「なるほど」『なるほど、じゃねえだろ!?』ナナが悲鳴を上げた。4 #4215tk

2015-07-22 21:33:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『ど、ど、どうすんだよ!このままじゃそいつ、ここに来ちまうぞ!』「え?あー、うん。そうだね」耳元で騒がれ、四季は顔をしかめる。彼は怜に視線を送った。彼女は申し訳なさそうに両手を掲げる。得物であるはずの反物は、半ばから焼失し無残な焦げ跡を見せていた。5 #4215tk

2015-07-22 21:36:03
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『もしもし、私メリー・トリスケル。今アパートの前にいるの』『はやっ!?」唐突に再開した電話越しの声に、小夜子が声を上げる。四季は顔をしかめた。学校からここまでゆっくり歩いても十分足らず。怪異ならばそれよりも早く着けるということだろうか。彼は立ち上がった。6 #4215tk

2015-07-22 21:39:33
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

『お、おい?どうするんだ?』ナナの問いに答えず、四季は携帯を持ったまま移動する。相手の名前に聞き覚えはない。が、正体の検討はついた。『もしもし、私メリー・トリスケル』嘲笑うような声が携帯から響く。『今、貴方の部屋の前にいるの』いよいよ時間がない。7 #4215tk

2015-07-22 21:42:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

彼はドアの前に立ち止まり、そこに背を向けた。怜たちが怪訝な顔でこちらを見ている。彼は右手を振ってみせた。その手に小槌が現れる。デタラメな着信音。四季は自分からそれに出た。「はい、日条四季です」『キュルキュルキュル、私メリー・トリスケルキュルキュルキュル』8 #4215tk

2015-07-22 21:45:07
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

不快なノイズが混ざる。四季は自分の背後に怪異の気配を感じた。今だ。小槌を後ろ手に振るう。「今、貴方の背後に」怪異の言葉が終わるより早く、小槌は目的のものに当たった。『背後にあったトイレのドア』に。ドアが内側から勢いよく開く。怪異の気配が増える!9 #4215tk

2015-07-22 21:48:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「いるのあッ!?」驚嘆の声。四季はそこで初めて背後を見た。すぐ目の前に西洋風の人形が浮かんでいる。これが『メリーさん』か。その体は、生白い手で鷲掴みにされていた。「な、なにが」「……メェェリィィーさーん」騒ぎかけた怪異が、その声を聞いて身を凍らせる。10 #4215tk

2015-07-22 21:51:21
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「あ……あ……!?」「あぁーそびーましょー……ってか。よう四季、よく呼んでくれたな?」「うん。まあ、いろいろ手間が省けたよ」四季は肩を竦め、眼を見張っている怜に向き直った。「紹介するよ、怜。花子さんだ」『メリーさん』が魂消るような悲鳴をあげた。11 #4215tk

2015-07-22 21:54:23
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「なんっ、なんで貴女がここにむぐっ!?」なにやら喚こうとした人形の怪異が、生白い手に口を塞がれる。花子は鼻を鳴らし、腕組みした。「少し黙ってろ、クソガキ。おちおち話もできやしねえ」「……!」人形が怯えたように花子を見る。彼女の背後の闇から伸びる生白い腕を。12 #4215tk

2015-07-23 20:48:05
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「これはこれは」やや感心したように巡が声を上げた。「学校の怪談というから少し心配していたが……なかなかどうして。それなりに年季のある子じゃあないか」「そりゃどうも、おばさん」挑発的に花子が返す。「あんたがなんとかいう青行燈?四季が世話になってるらしいな」13 #4215tk

2015-07-23 20:51:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ふふ!なに、世話になってるのはあたしのほうさね」「……そうかよ。で」花子が視線をスライドさせる。「あんたが四季の幼馴染?」「……草江怜。よろしく」「どーも。ふぅん」緊張の面持ちで挨拶する退魔師を、怪異は品定めするように見た。「あんま強くなさそうだな」14 #4215tk

2015-07-23 20:54:15
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「そりゃあそうさ。怪異と人間を比べるもんじゃないよ」眉間にしわを寄せた怜より早く、巡が口を出す。「特にあんたみたいに、それなりに腕の立つ怪異とはね。当然のことだもの……」不意に言葉を切った彼女は手を翻す。その視線の先で、宙に浮かんでいた包丁が動きを止めた。15 #4215tk

2015-07-23 20:57:06
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

包丁?四季は驚いてそれを見つめた。流し台から宙に浮いたそれは、いつの間にか花子の死角から忍び寄ってきていたのだ。一瞬、メリーが悔しげな表情を浮かべる。彼女の仕業か。「……テメエッ!」花子が唸る。それに呼応するかのように、生白い腕が人形を床に叩きつけた。16 #4215tk

2015-07-23 21:00:28
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「ぎゃんっ!」悲鳴を上げたメリーを、花子が力の限り踏みつける!「このクソガキ、ナメやがって!ぶっ壊してやる!」「ちょっと待って花子さん!ストップ!」慌てて静止する四季を、顔を朱に染めた怪異が睨みつける。「なんで止めんだよ!」「い、いや、聞きたいことがあるんだ」17 #4215tk

2015-07-23 21:03:08
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

四季の言葉に花子は眉をひそめた。そして、今気づいたかのように彼の右肩に乗る小さな怪異を見る。「おい四季、なんだそいつは?お前、あのあとまたやられたのかよ!?」「そ、その話もあとでするから!とりあえず踏むのはやめてあげて、ね?」花子が低く唸る。18 #4215tk

2015-07-23 21:06:04
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

彼女は渋々といった様子で人形から足を離し、それを片手で持ち上げた。人形はぐったりしている。「で?なんだよこいつに聞くことってのは」「う、うん。……それよりも、花子さんが追い出した三本足の人形の怪異って、この子でいいの?」四季はまずそれを確認する。19 #4215tk

2015-07-23 21:09:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

人形の怪異は真っ赤なドレスを着込んでいる。そのために下半身が見えないのだ。「ん?あー間違いない間違いない。ほれ」花子が人形を持ち直し、無造作にそのスカートを捲った。四季は反射的に視線を逸らす。『……ん、確かに三本足だな』ナナが呟く声が聞こえた。20 #4215tk

2015-07-23 21:12:09
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「に゛ゃーッ!?」ようやく正気づいたか、メリーが悲鳴を上げる!「ぶ、無礼者!そんな不埒な!やめなさい!」「うるせぇなー、人形のくせに……お前もお前だよ、四季。たかだか人形相手に照れてもしょうがねえだろ」「そういう問題じゃないでしょ!?いいからやめてあげて!」21 #4215tk

2015-07-23 21:15:19
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「はいはい。ほれ、もう大丈夫だぞ」からかい混じりの声に、四季は視線を戻す。言葉のとおり、人形の脚はスカートに隠されていた。彼女は花子の手の内でぷるぷると震えている。「な、なんたる恥辱……!お母様にどう顔向けすればよいのか」お母様。その言葉に四季は眉をひそめた。22 #4215tk

2015-07-23 21:18:12
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern

「その『お母様』っていうのは』四季はゆっくりと語りかける。「『学校の魔女』と同一人物って考えていいのかな?」「……それを知ってどうするつもり?」メリーが睨み返してくる。涙目になっているせいで、あまり迫力はない。「別に。ただ、少し気になっただけだよ」23 #4215tk

2015-07-24 20:51:14