裏サザエさん

サザエさんをネタに妄想を広げてみました。基本、暇つぶしです。なので、気まぐれに更新します。
2
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん-まえがき-】暇つぶしネタを考えた結果、140文字という限られたスペースで遊ぶには既存のフレームを借りた方がよい、との結論に達したので、次はサザエさんにすることにしました。 #sazaestory

2010-12-25 13:46:19
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん0-1】プロローグ ーイソノ家ー イソノ家は東京都調布市の閑静な住宅街にひっそりと居を構えていた。三世代同居の平屋建て、中流家庭に象徴的な間取り。賑やかではあるがけっして目立つことのない一家であった。 #sazaestory

2010-12-25 13:46:34
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん0-2】しかし、今ではその面影は完全に失われてしまっている。窓ガラスは割れ、壁の一部は崩れ落ち、落書き達がお互いに競い合うように書かれている。家の壁には蔦が生い茂り、落ちた瓦がかつては庭であった地面に散乱している。 #sazaestory

2010-12-25 13:46:57
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん0-3】夜。廃墟と化したイソノ家から猫達のけたたましい鳴き声が聞こえる。その声は人間の赤ん坊の鳴き声によく似ていた。薄汚れた白毛の猫がその猫達のリーダーであり、人間をおぞましい目つきで見つめていた。その白猫には前脚がなかった。 #sazaestory

2010-12-25 13:47:22
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん0-4】三本脚の薄汚れた白猫は、かつてイソノ家で飼われており、タマと呼ばれていた。しかし、 当時の面影はなく、主人達の帰りを待つという目的もとうの昔に忘れ、猫達のリーダーとして荒々しい日々を送っていた。あれからもう7年の月日が経っていた。 #sazaestory

2010-12-25 13:47:32
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-1】第一章 ーイササカー イソノ家の隣に古くから居を構えているのが、イササカである。イササカは妻と二人で暮らしている。父の莫大な遺産を引き継いだため、仕事を全くせず、ほとんど家からも出ず、自堕落な生活をしている。 #sazaestory

2010-12-31 18:57:43
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-2】イササカのほとんど家から出ない暮らしぶりに、いつしか、小説家であるという噂が立ち、いつのまにかイササカ先生と呼ばれるようになってしまった。イササカはその世評に応えるべく、和服を着て小説家然として暮らした。本を書いたことなどないのに。 #sazaestory

2010-12-31 18:58:05
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-3】世間から背を向け、息をひそめるように暮らしていたイササカは、隣に暮らすイソノ家を内心騒々しく感じていた。イササカが小説家らしいと近所に触れまわったのも、幼き日のイソノ家の長女サザエであった。イササカはそのことに苛立っていた。 #sazaestory

2011-01-02 10:50:25
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-4】イササカはイソノ家と表面上では良好な関係を保ちつつも、密かに転覆させるための策を練っていた。毎晩、ノートに計画を書き綴りながら自嘲的な笑いを浮かべていた。まるで小説家みたいだ、と。しかし、イササカにそれを実行する力はないはずだった。#sazaestory

2011-01-02 10:51:01
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-5】ある夜、いつものようにイササカは机の引き出しを探った。しかし、いつものノートはなく、見慣れないノートが入っていた。「かわりに、やってあげるよ」そのノートには、赤い字でそう書いてあった。イササカはノートを焼いた。 #sazaestory

2011-01-02 10:51:43
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-6】そのとき、イササカは窓の外が騒々しいことに気づいた。隣のイソノ家が火に包まれていた。イササカは妻と二人で家の外に駆け出し、消防車を呼んだ。イササカの判断が早かった為、イソノ家は半焼しただけであった。しかし、違和感を感じていた。 #sazaestory

2011-01-02 23:48:43
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-7】イソノ家からは誰も出てきていないのである。消防隊員の話によると、家の中では夕食の準備が完了しており、温かい白飯と味噌汁が人数分卓袱台に並んでおり、その状態で焼け焦げていたのだが、人の姿はなくもぬけの殻だったという。 #sazaestory

2011-01-02 23:50:30
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-8】イササカは震える右手で妻の手を取り自宅に入った。自室に戻ると、机の上にはなくなったはずの見慣れたノートが置かれていた。「かわりに、やってあげたよ」そのノートの最後のページには赤い字で、そう書かれていた。 #sazaestory

2011-01-02 23:55:31
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-9】イソノ家炎上事件から一ヶ月。イソノ一家は一晩にして煙のように消えてしまった。イササカが荒れ果てた家を覗くと、焼け爛れた窓ガラスの奥から白い猫がこちらを睨んでいた。タマ。イソノ一家がそう呼んでいた猫の目つきは驚く程鋭くなっていた。 #sazaestory

2011-01-12 21:32:42
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん1-10】3年後。イソノ家炎上事件の前に起こった不可思議な出来事の事を誰にも語る事なく、突然、イササカはその生涯を閉じた。妻がイササカのノートを発見するのは、もう少し先の話である。ー第一章 完ー #sazaestory

2011-01-12 21:32:56
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-1】第二章 ーナカジマー ナカジマはイソノ家の長男カツオのかつての親友である。中学の時にイソノ家が煙のように消えてしまってから10年の間に、ナカジマは地元の高校を卒業し、二年間の浪人時代を経て、大学生になっていた。 #sazaestory

2011-01-12 21:35:14
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-2】ナカジマはバイトを終え、夜道を歩いていた。ナカジマはあの火事以降、イソノ家の前を通る事を自然と避け、回り道をしていた。ただ、その日は回り道が工事で通行できないため、イソノ家の前を通らざるを得なかった。 #sazaestory

2011-01-12 21:36:37
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-3】イソノ家はツタに覆われ、鬱蒼としていた。 そのとき、イソノ家からネコの微かな鳴き声が聴こえた。タマ。 ナカジマは封鎖されたイソノ家の玄関を強引に開けた。中では三本足の白い猫が息絶えようとしており、その目は何かを伝えようとしていた。 #sazaestory

2011-01-12 21:37:21
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-4】ナカジマはジッポのライターを灯し、タマの示す方向を見た。そこには全裸の女性が横たわり、ナカジマを見つめていた。歳は現在のナカジマと同じくらい。髪は結ばれていない。サザエ。10年前に消えたはずのサザエが、あの頃のままの姿で現れたのだ。 #sazaestory

2011-01-12 21:53:03
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-5】ライターの灯りに照らされたサザエは艶かしく、ナカジマは強く興奮していた。そして、サザエはナカジマを誘うような目で見ていた。雑草の生い茂るイソノ家の中で、ナカジマはサザエを荒々しく二度抱いた。お互いに一言も言葉を口にする事もなく。 #sazaestory

2011-01-15 11:03:14
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-6】翌朝、ナカジマが目覚めると、サザエはもう居なかった。ナカジマは服を着ると、玄関に向かった。玄関では三本足の白い猫が息絶えていた。ナカジマは庭に小さな穴を掘ると猫を埋め、線香の代わりにタバコに火を付け、地面に立てた。 #sazaestory

2011-01-15 11:03:24
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-7】ナカジマはイソノ家から出た。隣ではイササカ家の葬式が執り行われていた。イササカ先生。そのイソノ家の隣人とは、何度か言葉を交わしたことがあるものの、印象は薄かった。ナカジマはイササカ家を素通りし、自宅アパートへ向かった。#sazaestory

2011-01-15 11:03:38
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-8】ナカジマは服を脱ぎ捨てベッドに横になり、突然現れたサザエの感触を思い出していた。あれは夢だったのだろうか。その時、ナカジマは脱ぎ捨てたジーンズのポケットから、焼け焦げた紙切れが覗いていることに気づいた。 #sazaestory

2011-01-15 11:04:01
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-9】「わたしたちを見つけてください」その焼け焦げた紙には小さな文字でそう書かれていた。 サザエの字だ。ナカジマの視界は歪み、殴られたように眠りに落ちていた。 その夜のバイト後、ナカジマはイソノ家の前に立っていた。 #sazaestory

2011-01-15 11:38:35
いちかわゆうや @yuyaichikawa

【裏サザエさん2-10】ナカジマは再び荒れ果てた荒れ果てたイソノ家に入り、ライターの明かりを頼りに手がかりを探した。しかし、野良猫の巣窟と化したイソノ家には原型をとどめているものは殆どなかった。ナカジマはタンスの引き出しを開けると、一枚の写真を見つけた。 #sazaestory

2011-01-15 11:38:48