『ウェン・ワン・ドアー・シャッツ・アナザー・オープンス』#1

テキストカラテ。しかな=サンのテキストカラテ『ギター・サウンズ・ライク・サンダーボルト』(http://togetter.com/li/839235)とリンクしています。
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ジュセー @shiroboshi2

『ウェン・ワン・ドアー・シャッツ・アナザー・オープンス』#1 #S57Ninja

2015-07-14 19:37:36
ジュセー @shiroboshi2

それは突然現れた。突然……否。予兆はあったのかもしれない。少なくとも、彼女の両親は、命を落としていた。本来なら、彼女もまた、共に死ぬはずであった。心中。まだ幼い彼女にはよくわからない概念だった。両親だけが死に、彼女は生き残った。生き残って、しまった。 2 #S57Ninja

2015-07-14 19:43:40
ジュセー @shiroboshi2

「ドーモ……アァ?ガキだけ?クソ親共は……ほはっ、成る程な!」扉を蹴破り、彼女の前に現れた男は。ニンジャだった。男は侮蔑的な目で彼女を見下ろした後、冷たく横たわる二人の成人した男女を見る。「心中か!ガキは死にそびれたようだなぁ!これはいい!」 3 #S57Ninja

2015-07-14 19:48:23
ジュセー @shiroboshi2

男は、ニンジャは、俯く彼女の髪を掴み、顔を上げさせた。彼女は目を閉じている。「はん、いいか、よく聞けガキ。お前のクソ親共は派手な借金だけ残していったんだ……お前にはそれを払う義務がある!非合法商業施設行きだぞガキ!ほはっ、ほははっ!」ニンジャは下劣に笑う。 4 #S57Ninja

2015-07-14 19:54:09
ジュセー @shiroboshi2

「……」彼女は、何も喋らない。状況の把握は出来ていないだろう。「ほははっ!ほは……む?お前……何故俺を畏れぬ?」ニンジャは訝しんだ。彼女は目を閉じている……。「畏れよ!俺は」「ニンジャ」「そうだニンジャだ!俺は恐るべき……え?」「イヤーッ!」 5 #S57Ninja

2015-07-14 20:01:05
ジュセー @shiroboshi2

「グワーッ!?」ニンジャの腹部をカタナが貫いた。カタナは彼女の額すれすれで止まる。「な、グワ、ナンデ……」ニンジャは彼女を離し、振り向く。そこには、茶髪の男が居た。得物と同じか、或いはそれ以上に鋭利な目がニンジャを睨んでいた。「……ドーモ」 6 #S57Ninja

2015-07-14 20:06:40
ジュセー @shiroboshi2

男は軽く頭を下げ、アイサツをする。「ヘルハウンド=サン。ブラックチューターです」「グワッ、ド、ドーモ、ブラックチューター=サン……ヘ、ヘルハウンドです……」ヘルハウンドは息も絶え絶えにアイサツを返した。「な、何故俺の名を」「セクトのデータベースを舐めるな」 7 #S57Ninja

2015-07-14 20:09:33
ジュセー @shiroboshi2

「セクト?セクトナンデ?お、俺は、俺も、セクトのニンジャで特に何も非は無く実際粛清の必要性は無い!」「ああ。そうだろうよ」ブラックチューターはカタナを捻る。「グワッ、アバーッ!な、ならばナンデ!?」「俺はセクトのニンジャじゃねぇからな」「え」「イヤーッ!」 8 #S57Ninja

2015-07-14 20:13:09
ジュセー @shiroboshi2

「アバーッ!」ヘルハウンドが断末魔の叫びをあげる。ブラックチューターはカタナを抜き、その様を見届けようとした。が、床に倒れこむ彼女を見ると、ヘルハウンドを掴み、蹴破られた扉の方へと投げ飛ばした。「サヨナラ!」ヘルハウンドは爆発四散した。 9 #S57Ninja

2015-07-14 20:16:09
ジュセー @shiroboshi2

ブラックチューターはヘルハウンドの爆発四散を一瞥すると、倒れ込む彼女を立ち上がらせた。彼女は目を閉じている。「アー……おい。大丈夫か」「……」彼女はコクリと頷いた。目は閉じたままだ。「……お前。目。見えてないのか」「……」彼女はコクリと頷いた。 10 #S57Ninja

2015-07-14 20:20:58
ジュセー @shiroboshi2

「アー……ドーモ。俺は……ミグチだ。ミグチ・ケー。お前は」「……ドーモ。アヤミです……マコリ・アヤミ」アヤミと名乗ったその少女は、消え入りそうなか細い声で言葉を紡ぐ。それを聞きながら、ブラックチューター……ミグチは先を憂いていた。(どうすっかねぇ……) 12 #S57Ninja

2015-07-14 20:26:55
ジュセー @shiroboshi2

彼は元セクトの者だ。大した階級でもなく、実際セクトの目の敵ということもない……が、追っ手は勿論存在している。為に彼は、ニンジャ性を抑え日々を慎ましく生きることに努めていた。彼に憑依したソウルは格が低く、ニンジャ性の発現の心配性も無かった。 13 #S57Ninja

2015-07-14 20:31:05
ジュセー @shiroboshi2

しかし彼は、今日この時、ウカツというべき事をしてしまった。偶々通りすがったこじんまりとした家。荒っぽく破られた跡が目立つ扉。その中で広がる光景。ニンジャが、幼い少女に危害を加えようとしている……気がつけば彼は、アンブッシュを仕掛けていた。 14 #S57Ninja

2015-07-14 20:35:03
ジュセー @shiroboshi2

ヘルハウンド。アマクダリ・セクトの末端。知らぬニンジャではなかった。セクト所属時代に顔と名は見たことがある。向こうはブラックチューターを知らなかったようだが。(末端とはいえ、セクトのニンジャを殺っちまったのはウカツだったな)「……おじさん」 15 #S57Ninja

2015-07-14 20:39:43
ジュセー @shiroboshi2

「ア?」ミグチはアヤミを見る。「……あの……」「なんだ」彼は多少面倒そうな顔で言う。(なんで助けちまったんだろうなぁ、こんなガキを。盲目をサイバネで治すカネもない家のガキ……)ミグチは冷たく横たわるアヤミの両親を見る。心中。彼は舌打ちをした。 16 #S57Ninja

2015-07-14 20:46:18
ジュセー @shiroboshi2

「おじさんは、どんな人なの?」アヤミが消え入りそうな声でミグチに問う。「どんな人?」ミグチは聞き返す。「えっと、悪い……人?」「……アー……どういうべきかね。まぁ、寝たきりのブッダ殿よりはマシだと思うよ」頭を掻きながら彼はそう答える。アヤミは微笑んだ。17 #S57Ninja

2015-07-14 20:49:21
ジュセー @shiroboshi2

「よかった」アヤミは安堵の息と共に胸をなで下ろす。そのバストは平坦であった。「えっと、ありがとう、おじさん」「……ミグチだ」「あ……ごめんなさい。ありがとう、ミグチ=サン」ミグチは答えない。ただ、アヤミの手を掴み、家を出た。セクトの網は大きい。 18 #S57Ninja

2015-07-14 21:15:24
ジュセー @shiroboshi2

ヘルハウンドのバイタル反応の消失は既に近隣の追っ手に知られているだろう。彼は出来るだけ遠くに離れることにした。「ミグチ=サン。どこいくの?」「遠くだ」「遠く」「遠くだ」答えながら、ミグチは自らの行動に疑問を持ち始めていた。何故、自分はアヤミを連れている? 19 #S57Ninja

2015-07-14 21:17:25
ジュセー @shiroboshi2

追っ手の目的は自分だ。アヤミは何ら関係は無い。放っておけばいい。非ニンジャ、それも十代程の少女。手荷物になることは確実。「……ミグチ=サン?」アヤミが消え入りそうな声で、不安げに呼び掛ける。「……残りたいのなら残れ。ただ、ついてきた方が安全ではあるが」 20 #S57Ninja

2015-07-14 21:22:27
ジュセー @shiroboshi2

それを聞き、アヤミはコクリと頷いた。「うん。ついてく。だって、ミグチ=サンは悪い人じゃないんでしょ?」「……」ミグチは答えず、アヤミを連れ、ネオサイタマを駆けていく。 21 #S57Ninja

2015-07-14 21:28:16
ジュセー @shiroboshi2

「フーム……」暗い部屋。戦略チャブの置かれたその部屋に、ニンジャが一人。彼はロブストボア。アマクダリ・セクトの恐るべきアクシス・ニンジャである。彼は壁に掛けられた『不如帰』のカケジクを見ながら顎をさする。禍々しいメンポが鈍い光を放つ。 23 #S57Ninja

2015-07-14 21:41:54
ジュセー @shiroboshi2

メンポ同様、鱗じみたニンジャ装束も鈍い光を放っている。「ヘルハウンド=サンのバイタル反応の消失。近いのは……ポイズナー=サンか」彼はIRC通信を繋げる。彼と同じくアクシスに位置する凶悪なニンジャ、ポイズナーへと。彼は業務的に、無機物的に指令を出した。 24 #S57Ninja

2015-07-14 21:47:51