140字小説 【幸運の靴磨き】 全7話

ついったー上に投下した140字小説です。 140字の区切りはありますが、まとめてひとつのお話です。
紅玉いづき Twitter小説
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紅玉いづき@書いて生きてこ @benitamaiduki
【1】街には幸運の靴磨きがいた。はした女ながら美しい顔をして、お代は薔薇の花一輪。彼女に靴を磨かせれば、物乞いも一代で爵位を得られるという。ある国の王は彼女をとらえ、靴を磨けと刃を向けた。彼女は雪の朝に窓を開け、冬の女王の靴を磨いた。国には二度と春が来ることはなかった。
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【2】街には幸運の靴磨きがいた。彼女がその日磨いた靴は、疲れた羊飼いのものだった。羊飼いはひどく愚鈍で、山に戻れど逃げた羊は見つからない。夜の深さにうなだれながら、家路をたどると背後に気配。振り向いた羊飼いはすっかり驚き、家のランプに火をいれて、尾を振る黒い犬を招いてやった。
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【3】街には幸運の靴磨きがいた。彼女がその日磨いた靴は、婚礼に向かう男のものだった。「僕らは前にも会ったことがある?」さぁどうでしょうと靴磨きは答えた。仕事のお代は花婿の胸の薔薇。彼を見送り薔薇に口づけ、お幸せに、と呟いた。薔薇の館の高貴な当主が、美しく高貴な妻を娶る、麗しき日。
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【4】街には幸運の靴磨きがいた。彼女がその日磨いた靴は、年老いた靴屋のものだった。美しく磨かれた靴はかの地の暴君に召し上げられ、靴屋は残された一生食うに困らない。それから数日後、靴磨きを探す男がいた。「貴様が幸運の靴磨きか」傲慢なその声は、彼女の一番嫌いな支配者の響き。
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【5】とらわれの靴磨き。人を頼らない暴君。二人は互いを罵りあい、決してわかり合うことはなかった。新月の夜、ついに彼女は男の寝台に倒された。どうしてやろう、と唇を噛む靴磨きへ、投げられた靴は見覚えのある小さなもの。暴君は言った。「貴様はそろそろ、自分の靴を磨くべきだ」
紅玉いづき@書いて生きてこ @benitamaiduki
【6】街には幸運の靴磨きがいた。彼女がその日磨いた靴は、くたびれきった自分のものだった。「幸運とは己で掴むものだ」と暴君は言い、あなたはもう少し人を頼りなさい、と靴磨きは言った。「誰を頼れと?」嘲笑う暴君に、靴磨きはため息一つ、仕事に疲れた、手を伸ばす。
紅玉いづき@書いて生きてこ @benitamaiduki
【7・最終話】街には幸運の靴磨きがいたという。はした女ながら美しい顔をして、お代は薔薇の花一輪。かの地を統べるは暴君だったが、近頃迎えた奥方を、唯一頼りとしているらしい。その美しい奥方の、出自を尋ねる者はないが、寄り添いあった夫婦の靴はいつも、どちらも綺麗に輝いている。
紅玉いづき@書いて生きてこ @benitamaiduki
文 紅玉いづき 絵 ☆  提供 TLの前でご覧の皆様
紅玉いづき@書いて生きてこ @benitamaiduki
加えて @fujiwarayu 先輩には、冒頭に宣伝を頂きました。本当にありがとうございます。突然50人以上フォロワーが増えて、パネェってこういう時に使う言葉なんだなって思いました。
紅玉いづき@書いて生きてこ @benitamaiduki
モバイルから絵を見られなかった方には、こちら縮小版になります。二日間のおつき合い、ありがとうございました! http://twitpic.com/15tox1

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