戦間期にスペインが発注した重巡洋艦カナリアス級のお話

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kasado @Kasadojima

ところでカナリアス級。主砲口径が8インチ砲になったのも、ケント級に毛が生えたような物に収まったのも、別に軍縮条約やイギリスが10,000t超の巡洋艦を造るのを拒否したからではなく、あくまでスペイン側の都合である。(「割安な」新型中口径砲が8インチ砲だったのは条約がらみだが)

2015-08-12 19:38:18
リンク Wikipedia カナリアス級重巡洋艦 カナリアス級重巡洋艦(Crucero Pesado Clase Canarias)とは、スペイン海軍の重巡洋艦の艦級で2隻が就役した。本級はスペイン海軍が第二次世界大戦前に竣工させた最初で最後の重巡洋艦である。スペイン海軍はワシントン海軍軍縮条約を批准していないため条約制限は課せられていなかったが、スペイン海軍が使用可能なドックの規模により結果的に条約範囲内に排水量が収められた稀有な艦級である。設計技師はアームストロング・ホイットワースのフィリップ・ワッツ。 スペイン海軍は1908年の米西戦争の敗北から、

カナリアス級重巡洋艦(Crucero Pesado Clase Canarias)とは、スペイン海軍の重巡洋艦の艦級で2隻が就役した。本級はスペイン海軍が第二次世界大戦前に竣工させた最初で最後の重巡洋艦である。スペイン海軍はワシントン海軍軍縮条約を批准していないため条約制限は課せられていなかったが、スペイン海軍が使用可能なドックの規模により結果的に条約範囲内に排水量が収められた稀有な艦級である。設計技師はアームストロング・ホイットワースのフィリップ・ワッツ。(wikipedia引用)

kasado @Kasadojima

カナリアス級の計画は、大本を辿れば1908年にSECN("海軍国営造船社"が適訳かな・・・?)が設置されたときに遡り、自国で建造可能な巡洋艦の設計をイギリスの民間造船会社(ヴィッカースやアームストロング・ホイットワース、ジョン・ブラウン等)に外注したことが原点である。

2015-08-12 19:42:32
kasado @Kasadojima

なんでイギリスに外注しているかというと、"SECN"自体が英国資本の協力により設立されていること、スペイン海軍自体が元々ヴィッカースと繋がりが深かったことによる。

2015-08-12 19:44:52
kasado @Kasadojima

エル・フェロルにあるこの造船所で建造された最初の巡洋艦は1914年度計画のレイナ・ヴィクトリア・ユージニアという4,500t級の軽巡洋艦であったが、この翌年に計画されたメンデス・ヌニェス級2隻と共に、就役は1923年~25年まで遅延してしまった。この間の巡洋艦の発展は著しかった。

2015-08-12 19:53:33
kasado @Kasadojima

そこで1921年度計画で、イギリスの最新型巡洋艦を参考として7.5インチ砲8門(単装x8)搭載案と6インチ砲8門(連装x3、単装x2)搭載案、同6門(単装x6)搭載案がそれぞれスペイン側に提案され、6インチ砲8門案をベースとしてプリンシペ・アルフォンソ級が建造されることになった。

2015-08-12 20:01:47
kasado @Kasadojima

プリンシペ・アルフォンソの最終案を纏めたのはサー・フィリップ・ワッツ(アームストロング)であったけれども、元々の案はジョージ・サーストン(ヴィッカース)であったので、ヴィッカースとしてもこのまま黙ってみているわけにはいかない。ワッツにしてもサーストンにしても、著名な造船官である。

2015-08-12 20:04:25
kasado @Kasadojima

7.5インチ砲案は平甲板型線型で、7.5インチ連装砲4基、4インチ単装高角砲4基、21インチ水中発射管2門、速力31kts(75,000hp)、基準排水量8,000tという性能であった。スケールこそ小さいけれども、のちのケント級重巡洋艦にそっくりなのである。面白いでしょう?

2015-08-12 20:11:26
kasado @Kasadojima

ただ、これがすぐに8インチ砲艦化してカナリアス級になったかというとそういうわけではなく、スペイン側に最初に提案された8インチ砲巡洋艦案(1924年)は三連装砲塔なのである。まだ英海軍に三連装砲塔艦は存在していないのに、大分冒険をする(させる、が正しいか)サーストン卿・・・

2015-08-12 20:15:56
kasado @Kasadojima

プリンシペ・アルフォンソ級を建造した後のスペイン海軍は、取り敢えず近代的軽巡洋艦4隻を持つ(メンデス・ヌニェス級のうち1隻は事故喪失)こともあって、すぐに新艦建造には取りかからなかったのであるが、その間には様々な案が提案されていた。

2015-08-12 20:20:46
kasado @Kasadojima

ケント級を明らかに凌駕する、基準排水量14,000tに達する8インチ連装砲4基8門、60cm魚雷発射管12門、速力35kt(144,000hp)という高雄型並みの巨艦も提案され、さらには10インチ砲や12インチ砲を搭載する15,000t級のポケット戦艦(しかも高速)もあった。

2015-08-12 20:25:42
合歓依 芳之 @SleepyEnsign

@Kasadojima なんか60cm魚雷発車管のあたりに血が騒ぐのですがw

2015-08-12 20:36:25
kasado @Kasadojima

@SleepyEnsign そうなんですよねー。後の計画艦では24インチ魚雷(これはこれで興味深いけど、多分24インチMk.I酸素増量型魚雷でしょうね)という風に英国式なんですけども、60cmというとドイツのH8型くらいしか思いつかないんですよね・・・

2015-08-12 20:48:38
kasado @Kasadojima

スペイン側としては、そんな高性能(=高価)な船は必要ないので8インチ砲搭載の8,500t~10,000t級巡洋艦が興味の中心であった。ワシントン海軍軍縮条約も関係ないことはないが、主な理由は「現実的に必要」でかつ「自国で建造可能」「実際に建造可能なコストにとどめる」ためである。

2015-08-12 20:30:38
kasado @Kasadojima

10,000tで8インチ連装砲6基という(列強海軍的に)無茶な案もあったけれども、それなりの国(海外植民地を持っている)であるスペインは飛びつかず、8インチ砲8門あるいは9門の10,000t級巡洋艦か、ヨーク同様に安価とした6門8,000t級の二系統に絞られていったのである。

2015-08-12 20:38:59
kasado @Kasadojima

これらの案はいずれも、ケント級並みの軽装甲(逆に言うと仏デュケーヌ級よりはマシ)であるが、デュケーヌ級を越える高速力(34.5kts。112,000hp~ 11,5,000hp)も同時に達成しようとしていた。機関はいずれもヤーロー罐11基、ギヤードタービン4基という構成のようだ。

2015-08-12 20:45:42
kasado @Kasadojima

ケント級を明らかに凌駕する、基準排水量14,000tに達する8インチ連装砲4基8門、60cm魚雷発射管12門、速力35kt(144,000hp)という高雄型並みの巨艦も提案され、さらには10インチ砲や12インチ砲を搭載する15,000t級のポケット戦艦(しかも高速)もあった。

2015-08-12 20:25:42
kasado @Kasadojima

10,000t級巡洋艦を中心として検討されていたものの、随伴艦艇に欠けるスペイン海軍では小口径砲に対する防御がイギリスよりも重視され、より攻防走のバランスのとれていた8,500t級の6門艦をベースに、より火力のある艦として1927年に提案されたのがカナリアス級の原型である。

2015-08-12 20:52:50
kasado @Kasadojima

この案は、外見上はケント級と似ていた(まだ集合煙突ではなかった)が、艦内構造は結構な違いがある。ケント級の設計者はユースタス・ダインコートで、双方の設計者が異なるためであるし、スペイン海軍とイギリス海軍の要求の差もある。どのくらい違うかというと、タイガーと金剛くらい違う。

2015-08-12 21:04:43
kasado @Kasadojima

この案からカナリアス級になるまでにも様々な小改正(主にコスト削減方向)され、出力は112,000hpから90,000hpまで低下することを忍び、その代わりに防御隔壁を増加させている。ただ、実質防御力はというと、舷側、水平装甲とも装甲材ではない(HT)ので、単純に良好とも言い難い。

2015-08-12 21:16:08