ザ・ドランクン・アンド・ストレイド #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーことフジキド・ケンジは、ネオカブキチョにおける失踪事件を調査していた。バーの酔客が姿を消し、行方が分からなくなるのだ。だから彼はバーを訪れたわけだ。そこにレッドハッグがいた。レッドハッグはフジキドを煽り、サケに付き合わせた。ここまではいいだろうか。

2015-08-14 23:55:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レッドハッグは実際に失踪した酔客と、失踪しかけたが無事だった酔客を知っていた。彼女はニンジャスレイヤーに同行を申し出、かくして、この二人のニンジャは、酔客失踪事件の調査に乗り出した。一軒。二軒。三軒。四軒。必然的に彼らはサケを飲み、さまざまな出来事に見舞われることとなった。

2015-08-14 23:58:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

そしていま、フジキド達は件の失踪しかけたが無事だった男、ヨコギを確保する事に成功した。ヨコギはニンジャを見ていた。否、ニンジャを今まさに再び見たのである。酩酊者だけが知覚するニンジャ、バッカスであった。フジキドは泥酔しており、このニンジャを実際見る事が出来た。そして嘔吐したのだ。

2015-08-15 00:01:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ザ・ドランクン・アンド・ストレイド】#3

2015-08-15 00:01:23
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「オゴゴーッ!」フジキドはアスファルトに手をついた。「アイエエエ!」ヨコギが尻餅状態で後ずさった。「何やってンだい全くもう」レッドハッグはフジキドの差し出す瓶をかろうじて受け取り、呆れた様子で首を振る。「酒の飲み方知らない男だよ!」「ニンジャだ!そこだ、注意せよ」「アイ、アイ」1

2015-08-15 00:06:16
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ!ニンジャナンデ!」ヨコギもフジキドと同じ方向を指さしている。レッドハッグは彼らが示す方向に目を凝らした。「ウーン?」「それは酩酊が足りんのだ……おのれバッカス=サン」フジキドはよろめき、立ち上がった。そしてカラテを構える。彼は青ざめた。「……何だと……?」2

2015-08-15 00:09:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

フジキドの視界は徐々にクリアになり、それと共に目の前の恐るべきニンジャの姿が薄れ始めた。「アイエエエ!」ヨコギは叫び続けている。フジキドはヨコギを見、訝しむレッドハッグを見、バッカスのいた空間……然り、もう見えなくなった……を見た。「どこだ」「殺さないで!」ヨコギは叫び続ける。3

2015-08-15 00:11:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「助けて!そんな……逃れられないのか!ヒック!」ヨコギは後ずさりを続ける。フジキドは歯噛みした。彼の視線を辿り、あてずっぽうでチョップを繰り出した。「イヤーッ!」チョップは空を切った。「イヤーッ!」ヤリめいたサイドキックもだ。フジキドはよろめく。「助けて!」ヨコギは泣き叫ぶ。4

2015-08-15 00:13:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「わかった!」レッドハッグが叫んだ。「アンタ、吐いてすっきりしただろ」「……」フジキドはレッドハッグを見た。そして頷いた。レッドハッグは得心がいき、「酔いが少し覚めちまったんだ」「何という事だ」「奴が来る!逃がしてくれないんだ!」ヨコギが泣き叫んだ。「助けてくれェ!」 5

2015-08-15 00:15:43
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」再びフジキドはあてずっぽうでチョップを繰り出した。「イヤーッ!」レッドハッグもそれに倣う。攻撃は空を切る。ナムサン。見る事もできず干渉もできぬというのか。「アイッ……アイエエエ」ヨコギは依然、不可視の存在を恐れる。「……」レッドハッグは手にした瓶をぐいと呷った。6

2015-08-15 00:19:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ウェー!なんだいこのサケは!ヨコギ=サン!」レッドハッグは咳き込み、「まるでガソリンだね!だけど、」顔をしかめ、「ンン」もう一度、瓶を呷った。「ンンーッ」彼女は目を見開き、フジキドに瓶をグイと突き返す。そして虚空にアイサツした。「ドーモ。レッドハッグです。……バッカス=サン」7

2015-08-15 00:24:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「見えただろう」フジキドは言った。レッドハッグは虚空にカラテを構えながら、フジキドを見ずに頷いた。そして虚空に向かって言った。「いいや、ヨコギ=サンはどうしようもない酔っ払いだが、知らない奴じゃないからねェ。そんな事、認められるか」「整理しよう」フジキドは呟き、瓶を呷る。 8

2015-08-15 00:28:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」レッドハッグはヨコギの目の前の何かを掴み、後ろに投げ飛ばした。フジキドはこめかみを叩きながら、もう一度瓶を呷った。「整理しよう。酩酊者の世界というものが我々のこの世界と並行に存在しているという仮の概念を当てはめると……理解しやすい。少しわかりやすい」「イヤーッ!」9

2015-08-15 00:30:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「つまり……こうして我々は、その世界と重なり合い、バッカス=サン!オヌシを」ニンジャスレイヤーは受け身を取って起き上がるバッカスを指さした。そしてよろめいた。「オヌシをだ……オヌシと相互に干渉可能な状態に、陥る」「そうだ、そう」レッドハッグが繰り返し頷いた。「絶対そうだ」 10

2015-08-15 00:33:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「当たらずとも遠からず」バッカスは笑った。「否、当たっておるのやも……どのみち俺には意味の無い問いよ。俺は影。狭間に遊び、迷い落ちた哀れな羊を食って生きる。記憶などとうの昔に摩滅し果てたわい」「ならば、フゥー」ニンジャスレイヤーは息を吐き、「オヌシが命を摩滅し果たす時が今だ」11

2015-08-15 00:38:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「御免被る」バッカスは答え、カラテを構え直した。「再び目覚めたのが今ならば、この狩り暮らしも天の采配に違いない。できるだけ多くの酩酊者を喰らうが我が定めと見た」「何をグダグダ、ヒック、言ってやがる」レッドハッグが唸った。「このうすらオバケが!」「助けて!」ヨコギが叫ぶ! 12

2015-08-15 00:44:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヨコギは前後不覚の哀れな泥酔者だ。バッカスがこうした状態の者としか関われないのならば、例えばニンジャスレイヤーとレッドハッグがこの場を離れ、酔いを醒ませば、バッカスから彼らに再度の攻撃を仕掛ける事は不可能となる。しかしそうすればヨコギの命は奪われ、今後も泥酔者の失踪は続く。13

2015-08-15 00:48:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

当然ニンジャスレイヤーはそのような決着を選択するつもりはない。レッドハッグの矜持にもそれはない。ゆえに彼らはヨコギを守るように立ちはだかり、ふらつき、またカラテを構えるのだった。「ナラク!ナラク!」ニンジャスレイヤーは大声を出した。「この者の……ハァー……なにかわかる事は」 14

2015-08-15 00:52:55
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((ブザマの極み)))ナラクの声がぼんやりと滲むニューロンに響いた。レッドハッグのような非敵対のニンジャと共に在る時、この恐るべき悪鬼が語りかける事は稀だ。フジキドが通常時以上にナラクを強く牽制し、望まぬ殺戮に駆り立てられる事を自ら未然に防止している為である。15

2015-08-15 01:06:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

しかしこの夜、彼のニューロンの抑制は乱れがちであり、ナラクもまた容易に応じた。(((敵を前にして左様な……ブザマではあるが、実際そ奴を殺すにはオヌシ自身が酩酊の渦にその身を置く必要があるのは確かだ)))ナラクは不本意そうに認めた。「こやつは何者だ」「誰と話してるんだい」16

2015-08-15 01:13:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(((あれに憑いておるのは、平安時代においても名すら知られぬニンジャのソウルよ。なぜなら泥酔者の夢に逃れた数寄者ゆえに、まず認知する者からして稀であった)))「ヌウーッ……」「誰と、ヒック、話してるんだい、こんなときに!イヤーッ!」レッドハッグがバッカスの蹴りを防ぐ! 17

2015-08-15 01:16:41
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

レッドハッグはしかし足元おぼつかず、ヨコギにつまずいて後ろに倒れた。「アイエエエ!」ヨコギが潰され、悲鳴を上げた。「なんだい!レディを受け止めなよ!」レッドハッグがヨコギの頭を押した。「シャンとしな!ヒック」バッカスはニンジャスレイヤーに向き直った。その輪郭が幽鬼じみて滲む。18

2015-08-15 01:21:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「既にソウルに呑まれておるか」ニンジャスレイヤーは言った。バッカスは前に踏み込み、素早い三連続のコンビネーションを繰り出した。「うつつは夢よ、狂え!イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは防御できず、側頭部にフックを受けてよろめいた。敵はしらふなのだ!19

2015-08-15 01:25:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」ニンジャスレイヤーは連続チョップを防ぎきれず、吹き飛ばされて配管パイプに背中から叩きつけられた。SPLASH!水蒸気が彼の頭部に降りかかる。「ヌウーッ……!」ニンジャスレイヤーは頭を振った。バッカスの姿が薄れる!20

2015-08-15 01:26:51