心理学を騙る「トンデモ」にご用心!──実例と対処法──
- kisopsy_kun
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本屋には心理学の本がいっぱい並んでいるね。でも,中には疑似科学としか思えないようなアヤシイ本もいっぱい…。そういった「トンデモ」の実例と見抜き方について解説してみたよ。>心理学を騙る「トンデモ」にご用心!──実例と対処法── togetter.com/li/862134
2015-08-18 11:11:15#学術たん夏期講習 #学術たん夏期講習2015 さーて。久しぶりの連続ツイートをしようかと思います(エイプリルフール以来かな?)。テーマは"心理学を騙る「トンデモ」にご用心!(仮)"です。
2015-08-17 19:32:55始めに断わっておきますが,今回の連続ツイートはちょっぴりはっちゃけた内容になるつもりです。あくまでも「個人の意見」としてかるーく受け止めれ貰えればと思います。
2015-08-17 19:35:56今日,書店でこんな本を見つけました。『しぐさで見抜く相手のホンネ』というタイトルの本です。帯には「レシートをクシャクシャにする人は『自覚のないストレスを抱えている』」「本音は知らずに漏れている!」と書かれています。 pic.twitter.com/8ObrprhLuk
2015-08-17 19:39:34ちょっと中身を読んでから,面白そうだったので購入することにしました。今日はこの本を題材にして連続ツイートをさせて頂きますね。
2015-08-17 19:41:14…察しの良い方はお気づきかと思いますが,この本を反面教師として取り上げます。その上で,「『トンデモ』がもたらす実害」や「『トンデモ』の見抜き方」についてのお話をしていく,というのが大まかなプロットです。
2015-08-17 19:46:01ちなみに「トンデモ」というのは,いわゆる疑似科学(デタラメ)を真実かのように主張する内容のことだと思ってください。Wikiに「トンデモ本」という項目があるのでこちらも参考までに。ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88…
2015-08-17 19:47:37この『しぐさで見抜く相手のホンネ』という本の「はじめに」には,「(前略)相手の外見、しぐさ、言葉、ふるまいからホンネを読み取ることが、いまの世の中を生き抜く術となるのです。」「本書には、人が無意識のうちに漏らしてしまうホンネを読み取るヒントが満載されています。」とあります。
2015-08-17 19:53:17良好な人間関係を築き,世の中をうまく生き抜くためのテクニックとして,人の外見やしぐさなどから本音を知る術を教授するよ,ということですね。本文は「外見」に関する第一章,「しぐさ」に関する第二章,「言葉」に関する第三章,「ふるまい」に関する第四章から構成されています。
2015-08-17 19:57:59いずれの章も,「○○な人は □□」という見出しのついた複数のセクションから構成されています。例えば,「いつも折りたたみ傘を持ち歩いている人は 小心者」「ヤセ型の人は 控えめで人間嫌いの傾向」「まばたきが多くなったときは 隠し事をごまかそうとしている」といった具合。
2015-08-17 20:00:58…さーて,これらの主張は正しいのでしょうか。「いつも折りたたみ傘を持ち歩いている人は 小心者」という言葉をあなたは信じますか?もちろんその詳しい内容を読まないことには何とも言えませんが,「そうかも」って思ってしまった人は,用心したほうがいいかもしれません(あくまでも「かも」)。
2015-08-17 20:08:27この本にはこんな感じの見出しからなる項目が80項目ありますが…その9割以上は,僕の知る限りは,「デタラメ」もしくは「根拠に乏しい」と言わざるをえません。本当は10割と言いたいところですが,もしかしたら僕の勉強不足かもしれないので控えめに9割以上と書きました。
2015-08-17 20:11:27これだけだと説得力がないので,具体的に「いつも折りたたみ傘を持ち歩いている人は 小心者」の項目を見てみます。筆者とその同僚との雨の日の体験談が語られたのち,次のように述べられます。
2015-08-17 20:17:17「このように、折りたたみ傘をつねに持ち歩く人は、何事にも何かしらのトラブルが起こりうることを想定し、その対処法をきちんと準備しておく慎重派といえます。(p. 16)」と。そしてその上で,
2015-08-17 20:19:35「ただ、このようなちょっとしたトラブルをも想定し、その対処法を考えているということは、些細なことまで心配している『小心者』といえなくもありません。(p. 18)」と,別の言い方をしています。いずれの説明も,単なる憶測ないしは「そういうこともありうる」ぐらいのものですね。
2015-08-17 20:22:19もちろん,小心者だから折りたたみ傘を常に持ち歩いているという人も中にはいるかもしれませんが,折りたたみ傘を持ち歩いている人が全員小心者なんてことは常識的にちょっと考えにくいですよね。この後筆者はもうひとつ,「いつも折りたたみ傘を持ち歩いている人は 小心者」である根拠を提示します。
2015-08-17 20:24:57曰く,「精神分析の創始者フロイトの説によると、『傘は父親の権威の象徴』で、自分を周囲の危険から守ってくれる存在なのだといいます。その傘を毎日持ち歩いているわけですから、「慎重だが小心者」という性格は、さらに浮き彫りとなります。(p. 18)」と。
2015-08-17 20:27:41フロイトって,名前ぐらいはどこかで聞いたことがあるかもしれません。有名人ですよね。そのフロイト先生が言っているんだから間違いないに決まってますね!…と,ここで注意したい点が二点あります。ひとつめは,「フロイトの説」は科学的に裏付けられたものではなく思弁に過ぎない,という点。
2015-08-17 20:31:13心理学の歴史について話し始めるとキリが無いのでかなり粗っぽく説明しちゃいますが,フロイトとかユングとかアドラーとか,その辺りの学者が研究していたことは,現代でいうところの「(科学的)心理学」とはルーツも毛色も全然違います。彼らは心理学者ではない,と主張する人までいます。
2015-08-17 20:34:29実際,彼らの学説は現代でもほとんど実証されておらず(というか実証不可能というべきか;部分的には実証の試みが全くない訳ではない),科学ではないと批判する研究者も多数います。そういう点で,フロイトの説というのは根拠としてはかなり弱いものです。
2015-08-17 20:39:45例えばですね…。僕が,「地球は飴玉だ」と言ったとします。そんでもって誰かが,「基礎心理学くんの説によれば,地球は飴玉である。このことは,地球を舐めたら甘いということを裏付けている。」と主張します。意味不明ですよね。フロイトが偉い人かどうかというのは関係ありません。
2015-08-17 20:44:58仮に,「地球は飴玉だ」という主張がそのときは広く認められたとしても,数年後に「んな訳あるかいボケ」と叩かれて,「飴玉ではない」という意見が主流になるかもしれません。学問はどんどん進歩しますから当然ですね。
2015-08-17 20:46:38ところで,S. フロイト (1856-1939;娘もいる) もユング(1875-1961)もアドラー(1870-1937)も,言ってしまえばずいぶんと昔な人な訳ですが,なぜ22世紀になってもそんな古い学説が根拠になるのでしょう。もうちょい新しい知見があってもいいはずです。
2015-08-17 20:50:10※21世紀の間違いです><
自然科学でいうならば,錬金術を根拠にするようなものですよね。もちろん,フロイトたちの主張は,思想としてはとても興味深いですし,哲学的に考察する価値は大いにあると思います。ただ,何らかの判断の根拠として科学的知見かのように扱うのは,やっぱりちょっと無理がありますね。
2015-08-17 20:51:43