『太陽の牙ダグラム』に登場したメカニクスに関する論考

囚人番号６ @F4EJ2Phantom

デロイアでは電波が眼に見える範囲くらいにしか届かず、加えて電子機器の性能が著しく低下してしまう理由といえば「Ｘネブラ」と思われているだろうけど、実はそれだけではない。というか、Ｘネブラの前に「スタフェラス恒星系は二重太陽なので、地球太陽系よりも太陽風が強い。加えてデロイアは

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ふたつのバンアレン帯に包まれている特異な惑星である。強い太陽風と二重のバンアレン帯、これらの存在は常に電離層に悪影響を及ぼしており、そのために長距離通信が不可能になっていたという状況が存在する（中継ゾンデを用いないと、視界が届く範囲以上に離れた場所とは無線交信が出来ない）。

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Ｘネブラとは強い磁気を帯びたガス星雲で、あらゆるコンピュータの性能を低下させる性質を持っている。この帯磁ガス星雲がデロイアを覆い包んだのはS.C.152…本編がスタートする直前、あるいは直後だった。これによってデロイアの劣悪な通信・電子機器環境はピークに達したとされる。

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つまりデロイアのそれらの環境の要因は、惑星自体が持っている特異性こそが主でありＸネブラは従なのである。サマリン派独立運動グループは早い段階からＸネブラの存在とその性質を掴んでおり、ゆえに地球連邦軍に先んじてダグラムをＸネブラ対応型とすることが出来たのだ。

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また、固定翼の戦闘機や攻撃機が登場しないのは作劇上の必要性からというのが本当の話だが、文芸設定的には前述したように「コンピュータの性能を低下させるため」だとされている。事実、デロイアでは大型輸送機も固定翼ではなく、ローター式という珍妙なデザインの機体が運用されている。

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つまりデロイアでは機体のあらゆる制御にコンピュータが介在する戦闘機の運用は非常に難しいのだ。高度なアビオニクスを搭載していない、初期のジェット戦闘機なら可能と思われるが、長距離レーダーは使用出来ず通信による地上管制も受けられない環境での運用は避けられない。加えてデロイアには

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反連邦ゲリラ以外に敵性勢力は存在しなかったので、高性能な航空戦力を必要とする戦闘は発生し得ないと考えられていたはずだ。それならば従来の、しかもローテクなヘリでも航空戦力としては十分だと連邦軍が考えてもおかしくないし、妥当な判断だと言えるだろう。

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前ツイートを読んで、ゲリラによる独立運動から人民解放軍と地球連邦軍による独立戦争に発展した際、地球からＣＢアーマーだけでなく固定翼機も持ち込めば良いのではないか？と考えた人もいるだろう。だがもし固定翼機をデロイアで新たに使おうというなら、運用するための諸々の設備の設置から

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始めなければならない。というのは、それまでは航空機と言ったら回転翼機ばかりだった上にCｰTOL＆SｰTOL航空機が離着陸できる航空基地は必要なかったので、デロイアには存在していない。これを一からデロイアに設営するとなると、桁外れの時間と予算、そして人員が必要になるだろう。

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しかしデロイアへの固定翼機配備に対する決定的な障害は、実はこうした金や時間などではなく、もっとプリミティブなものだった。それは、デロイア州代表として地球連邦軍デロイア第８軍を指揮統率するフォン・シュタイン大佐の、立身出世を望む高級軍人且つ政治家としての判断である。

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ドナン・カシム連邦評議会議長は度重なる第8軍の敗北を受けて、北極ポートに駐留する連邦第６軍分遣隊を先遣として、地球から連邦軍の増援を行う様に評議会に要請する様に大佐に求めた。が、そうなると大佐の面目は丸つぶれ、州代表としての権威も地に墜ちてしまう。ゆえにドナンの指示に抵抗し、

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要請をしなかったのである。大佐が面子を保つためには手持ちの駒で解放軍を破るほかなく、ゆえに地球からの支援以外にあり得ない固定翼機（および運用環境）の導入など、たとえそのオプションが提示されたとしても、彼にとっては受け入れ難く拒んだであろうことは想像に難くない。

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その後、ドナンは第６軍が投入されておらず戦局が悪化していることを知り、こんどは大佐の頭越しに増援を自ら指示する。がしかし、電話で第６軍分遣隊指揮官に命じようとしたその時、身体を蝕んでいた死病の発作がおきて意識を失ってしまう。結局大佐はドナンの指示を握りつぶし増援は行われなかった。

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こうして、少なくとも独立戦争の期間中にデロイアへ固定翼機が導入されるチャンスは失われたのである。

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デロイア独立戦争でダグラムに搭載されて威力を発揮した、ＣＢアーマー用リニアキャノンは果たして標準的な兵装になるだろうか。ヤクトダグラム（商品名。劇中では未使用である）は明らかに、当時人気だったフルアーマーガンダム（MSV）が提示したコンセプトの流れに属しており、極めて人気も

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高く、さらに劇中においてはダグラムの大きな特徴であり活躍も多かったので、誰もが当然の如く「リニアカノンはＣＢアーマーにとって不可欠な装備。少なくともダグラムの後継機には装備されるはず」と考えていることだろう。だがちょっと待って欲しい。ＣＢアーマーはMSの様に既存の兵器体系を

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覆してではなく、その中の新しい系統として登場した。つまり本編でも描かれていたように、ダグラム世界は諸兵科連合が存在するのだ。最後までダグラム以外にリニアカノン級の破壊力を持つ備砲を備えたＣＢアーマーが登場しなかったのは、ゲリラと違って連邦軍には

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砲兵部隊という中距離支援を任務とする戦力があったからなのではないだろうか？　ダグラムを建造したのはサマリン派ゲリラだ。彼らは闘争の初期においてはＣＢアーマーどころか装甲戦力さえ十分に持っていなかった。つまり連邦軍のような様々な兵科（兵器）を組み合わせての運用は不可能なのであり、

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ゆえに晴れてダグラムの生産に成功したとしても、中距離支援砲撃などの本来はＣＢアーマーに任されない様なこともこなさせなければならないと考え、ＣＢアーマー用リニアカノンを開発したのではないだろうか。そもそもターボザックはダグラムの作戦行動時間を延ばすための装備だ。劇中で描かれた様に

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ゲリラは連邦軍の様にＣＢアーマー専門の兵站部隊を持っていない。サマリンたち指導部および開発陣はダグラムの生産が計画通りに進んでも、兵站の細さがウィークポイントとして早晩露呈するだろうと分かっていたのではないか？　そう考えればデスタンの裏切りで生産計画が頓挫したにも関わらず、

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スパ市（#23）でターボザックをＪ・ロックから受領出来たことにも納得が行く。ターボザックは作戦行動時間と火力を向上させはしたが、ＣＢアーマー戦において重要な役割を持つ跳躍力を低下させてしまうというマイナスの副産物も生じさせた。劇中ではほぼヤクトダグラムの状態で戦い続けていくが、