扶桑姉さまと山城と時雨さん

思いつき次第更新します。
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赤肩 @fuyutuki67

ラノベが大好きな扶桑姉さまがオークションで競り落としたダンボール売りラノベを片付ける山城とバッサリ情け容赦のない批評を叩きつける時雨さん。

2015-08-22 02:40:49
赤肩 @fuyutuki67

山城大丈夫?富士見はその棚じゃないわよ どうせ姉さまは一回読んだら出しっ放しでそれっきりなんだから 山城、なんで異世界物はこう外から来たどこの馬の骨ともわからない奴に軍の指揮を預けるんだろうね。

2015-08-22 02:45:13
赤肩 @fuyutuki67

資源回収日の前日、山城が床に投げ捨てられたラノベを積み上げ手元のビニール紐で縛ろうとすると必死に止める扶桑姉さま。「やめて山城!まだ、まだ主人公が生徒会ごと異世界に行ったシーンなのよ⁈」「ねぇ扶桑、君は何度同じ本を買えば気が済むのかな?」「捨てます、今日こそは必ず捨てます」

2015-08-22 02:51:40
赤肩 @fuyutuki67

好きだと言っていたラノベがアニメ化決定すると急に萎える扶桑姉さま。けれども録画して作業用動画として毎夜垂れ流していた。当然録画が被れば山城が入れた予約から消され後で確認すると過去の録画予約設定が残っているだけだった。時雨さんは予約があろうが無かろうが野球中継は必ず観る。

2015-08-22 02:56:55
赤肩 @fuyutuki67

扶桑姉さまはソシャゲも大好きだ。時雨さんは言った。「あ、扶桑もこのゲーム始めたんだ。じゃあ課金するのやめるね」扶桑姉さまはカードを持っていない、だからコンビニに行くと勝手に山城が持つ買い物カゴへ課金カードを入れて怒られる。

2015-08-22 03:03:41
赤肩 @fuyutuki67

扶桑姉さまと山城は一緒のお部屋、山城は綺麗な部屋が大好きだ。部屋に帰るとまず散らかった本を棚に戻して開けっ放しのペットボトルの蓋を探す。そしてこぼれたポテチを掃除機で片付けるんだ。その間、扶桑姉さまはベッドの上でポテチ食べながら山城のDSで遊んでいた。

2015-08-22 03:10:56
赤肩 @fuyutuki67

山城の朝は早い。シャワーを浴びて素早く朝食を摂り今日も出撃した。扶桑姉さまは午後13時に目が覚めたがそのままスマホをいじり始めてベッドから出る頃には夕暮れだった。昨日時雨さんが応援しているチームが全員脱糞しているような試合をした為、今日は時雨さんに決して近づくな。

2015-08-22 03:17:16
赤肩 @fuyutuki67

扶桑姉さま、寝起きのシャワーを浴びようと部屋の扉を開けたところ時雨さんに激突し無事死亡。山城が部屋に戻ると扶桑姉さまが天井から吊るされていた。その下でかつて扶桑がソシャゲ掲示板に自作投稿したラノベもどきのポエムを朗読する時雨さんの顔は美しかった。扶桑姉さまはマジ泣きだった。

2015-08-22 03:24:23
赤肩 @fuyutuki67

今日は皆で焼肉を食べに行った。扶桑姉さまは山城が頼み山城が焼いた肉を美味しそうに食べている。あ、時雨さんユッケと生中来ましたよ。山城は帰りに寄ったコンビニでカップ麺を買っていた。

2015-08-22 03:28:49
赤肩 @fuyutuki67

扶桑姉さまは最近ノーパソを買った。起床と共に起動して就寝時にシャットダウンする生活の始まりだった。けれども時雨さんが野球を観戦なさる時は実況板をご覧になるため例えブラウザゲーの時間限定イベントでも中断しなければならなかった。二度と間違いを起こさぬとあの日心に誓ったのだ。

2015-08-22 03:35:37
赤肩 @fuyutuki67

扶桑姉さまはラノベが好きだ、それはそれは大好きだ。異世界、高校、家押しかけハーレム、主人公が軍隊に拉致られる、どんな設定でも新鮮に感じられるくらい大好きだ。山城は扶桑姉さまが買った本を表紙絵でしか覚えていないことを知っているし時雨さんはやる気のない主人公が大嫌いだった。

2015-08-22 05:07:49
赤肩 @fuyutuki67

山城は扶桑姉さまとの外出をいつも楽しみにしている。炎天下のなか激辛ラーメン屋に並ぶことも真冬にクレープ屋に並ぶことも苦にならないくらい扶桑姉さまとの外出が楽しみだった。できれば一緒に並んで欲しいと最近ちょっと思い始めているけど一緒の外出が楽しいからそんなことは気にならなかった。

2015-08-22 15:12:03
赤肩 @fuyutuki67

今日食べたスープカレーの話で盛り上がっている扶桑姉さまと山城。部屋の隅では明日の試合に備え念入りに金属バットの握りを確かめる時雨さんの姿があった。敵は神通率いる第二水雷野球軍。チーム全員で帰れるなど思ってはいない、己の身は己で守らなければと思うと自然と腕に力が篭った。

2015-08-22 15:15:37
赤肩 @fuyutuki67

扶桑姉さまと山城のいない部屋。時雨さんは松葉杖を壁に立てかけ戦友たちと撮った唯一の写真を眺めていた。「満潮、最上、仇はとったよ」敵の打球に当たれば例外なく皆死ぬ、野球とはそういうものだと思ってもやりきれない時がある。そんな時、時雨さんはこの部屋に来て彼女たちの帰りを待つ。

2015-08-22 15:19:50
赤肩 @fuyutuki67

扶桑姉さまがフォローしているイラストレイターさんがラノベの表紙絵を描いたそうだ。早速購入し表紙と挿絵だけ眺めて若干満足してしまった扶桑姉さま。しかし、時雨さんはこのラノベの内容に驚愕していた。ジャンルはまさかの異世界野球物、しかも戦っている選手が往年の名投手や名野手だったのだ。

2015-08-22 15:23:56
赤肩 @fuyutuki67

各部族が大陸の覇権を争う中、エルフ族の高位僧たちは万能の願望器、聖なるグローブを構築しこれを起動しようとした。この動きを察知した赤色ゴブリン軍や鳥人族に襲撃され起動は失敗したかに思われたその時、聖なるグローブが煌々と輝き光の中からモノと名乗る英雄が現れたのだ。

2015-08-22 15:29:41
赤肩 @fuyutuki67

モノは言った、野球で決着をつけよう。こうして大陸争奪野球リーグが開催される運びとなった。各チームは聖なるグローブの力により英雄助っ人を一人だけ呼び出すことができる、このシステムにより開戦当初最弱だった鳥人軍は英知の王を呼び出し情報野球を取り入れ善戦していた。

2015-08-22 15:33:57
赤肩 @fuyutuki67

目下最大の敵はサテュロス族が凶戦士位で呼び出したエナツ、12回を投げきりいまだ失点無し、これに立ち向かうため巨人族が英雄を呼び出すところで話は終わっていた。本を閉じると時雨さんは震える腕でファンレターを書き出した。扶桑姉さまは山城の膝ですやすやと寝息を立てていた。

2015-08-22 15:38:29
赤肩 @fuyutuki67

山城、そのダンボールは捨ててはダメよ。あとそれとその紙袋……ああっ!ポスター剥がさないで!それじゃんけん頑張ったのよ!山城もしかして怒ってるの?!私が年末の大掃除もおせち作りも全部貴女に任せて年明けは初詣も行かずにずっと寝ていたから怒っているのね?!

2016-01-13 07:22:43
赤肩 @fuyutuki67

私ね、貴女のことが大好きよ。だからそんな悲しい事はしないで少し散歩行きましょう?ね?あ、ああああ!ダメ!そこは開けちゃダメよ山城!出ちゃうから、貴女の姉様の恥ずかしいところ全部雪崩てくるからやめ、やめでえぇぇぇ!

2016-01-13 07:29:09
赤肩 @fuyutuki67

「扶桑、君は一体何をしたんだい?」大量のコスプレ衣装がビニール袋にまとめられ、コスROMは無残にも叩きわ割れ、薄い本はビニール紐で縛られ、皆資源回収の日を待つばかりの姿になっていた。部屋の中心にただ泣き崩れ許しを請う扶桑と、机に貼られたキャラシールを血眼になって剥がす山城がいた。

2016-01-13 07:39:44
赤肩 @fuyutuki67

どこかで見たような構図のキャラ下敷き、ロゴマークが印刷されただけボールペン、それら全て彼女の前ではただのゴミでしかない。ひっくり返された引き出しから崩れ落ちる大量のラバストと共に一枚の板が落ちた。二重底、扶桑が漫画で学んだ絶対のセキュリティーが破られた瞬間だった。

2016-01-13 07:47:09
赤肩 @fuyutuki67

「見ないで、見ないでぇぇ……」哀れ、余りに哀れで消えそうな叫びだった。落ち葉のように散らばったルーズリーフに書かれた小説や漫画の数々、どれ1つとして完結せず自らの設定語りにのみ注力され封印されていた大作たちは日の目を見る事なく可燃ごみになった。

2016-01-13 07:51:29