アンドレア・パラオロ『Medeas』について

2013年、アメリカ・イタリア合作、出演カタリーナ・サンディノ・モレノ他
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ロラン @malgre_nuit

アンドレア・パラオロ『Medeas』人里離れた牧草地に暮らす家族の生活を、多くが固定のショットに切り取っただけの映画だが、長回しも審美の誇張/排除もせず、ショットの厳格性と静寂/微音からなる無時間性だけで完璧に調和の取れた世界を構築する。永遠に見続けたいと願ってしまう奇跡の映画。

2015-08-23 09:05:55
ロラン @malgre_nuit

『Medeas』家族全員が映るショットの少なさに加え、母親が聾唖者であるという設定が台詞を最小限まで抑制する。その静寂ゆえに洗濯物やカーテンが揺らめくだけで感動する。子供の呼びかけに気付かない妻に夫が声を上げ、それに対して長男が抗議する一触即発の瞬間には途轍もない緊張感が走った。

2015-08-23 09:08:26
ロラン @malgre_nuit

『Medeas』それぞれの人物に鏡を見る瞬間が用意されていることも特徴。この鏡が寡黙な人物たちに自身と対面させる役割を担う。恋人に会いに行く際には、口紅を塗って鏡に口づけていた長女が、家族全員で出掛ける時は、父親から化粧を洗えと言われて鏡越しに目に涙を浮かべるという落差が切ない。

2015-08-23 09:39:22
ロラン @malgre_nuit

『Medeas』身体の絶妙なデクパージュが、寝そべる母や長女を艶かしく、子供たちの表情には倦怠を宿す。妻に愛されていないことを悟った夫が座り込み、その隣に妻が座る下半身だけのショットの絶望感。家族全員が出掛けて玄関に取り残された妻を上階から俯瞰したショットにはため息が洩れた。

2015-08-23 09:10:24
ロラン @malgre_nuit

『Medeas』フィックスを多用する本作には例外的なショットだが、4人の子供たちが画面左から無言で歩く横移動での彼らのフレームインが素晴らしい。無人の家に独り帰って行く母の後ろ髪に射す逆光も奇跡的な美しさ。雨の中を独り歩く彼女にラストショットを託した幕切れの呆気なさにも感嘆する。

2015-08-23 09:13:39
ロラン @malgre_nuit

Medeas (2013 / United States, Italy) directed by Andrea Pallaoro. pic.twitter.com/cUyTA34C9Y

2015-08-23 09:17:04
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