『スエズ鎮守府VSラブホテル鎮守府合同演習～変態の夏、パンツの夏～』その３

アフリカの星逆 @Hoshisaka_RevSt

翌日。ラブホ鎮守府の一室。朝日を遮断するように、カーテンを閉めた薄暗い室内。 望月と一緒にあてがわれた寝室のベッドに腰掛けたまま、俺は眠れなかった一晩の疲れを拭うようにパンツに顔をうずめた。 #スエズ鎮守府

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「今回の演習、勝てるのか……」 目を閉じれば、昨晩の激闘が影となって焼き付いている。ふざけた種目にふざけた展開。しかし、あそこで行われていたのは紛れも無い殺し合いだった。 以前に相手した、擬似リングなどではない。本物の指輪を持った艦娘との戦闘だった。 #スエズ鎮守府

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長門は、間違いなく俺の部下の中では最強だ。 それが、あそこまで苦戦を強いられた。それを目の当たりにして、俺の胸中にはどうしても掻き消すことのできない不安が生まれてしまう。 彼女達を信じていないわけじゃない。俺が信じられないのは、自分自身。 #スエズ鎮守府

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これまでやってきた根回しは万全だったのか、あの場での指示は正しかったのか、もっとしてやれることはあったんじゃないか。 そんなことばかりが頭のなかを駆け巡り、気付けば存在しない“もしも”のシナリオを空想している。 #スエズ鎮守府

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だが、 「ん……あー、おはよ……しれーかん」 「おはよう、望月」 それを、部下に……特に、こいつに悟られたくはない。 寝ぼけた顔で目元をこする秘書艦に眼鏡を手渡してやりながら、俺は先程までの表情を気の抜けた笑顔で上書きするのだった。 #スエズ鎮守府

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「おはようございます神代大佐。おや、どうやらお疲れのご様子ですね。昨晩は秘書艦の望月さんとお楽しみでしたか」 「流れるようにセクハラしてくるなよ……」 やけに豪勢な食堂で朝食を摂っていると、歩み寄ってきたのはラブホの不知火。ウチのぬいぬいはこんなこと言わない。 #スエズ鎮守府

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望月は二度寝したので、一人での朝食だ。 不知火は「向かいの席、空いていますね」と確認もせずにトレイを置くと、俺の目の前の椅子に腰を下ろす。 「なにか悩みがあるようですが」 「そう見えるか」 「ええ。まるで精神由来のED患者のような面持ちです」 「またそういう……」 #スエズ鎮守府

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息を吸うように下ネタを入れてくる不知火に肩をすくめ、俺は食事を再開する。しかし、朝からすっぽんと鰻は少し重いなぁ。 そんなことを考えながら箸を進めていると、正面から感じる視線。 「ふむ……昨日の長門さんが原因……というわけではなさそうですね」 #スエズ鎮守府

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「それはあくまできっかけ、大本は更に根幹……」 「プロファイルの真似事なら他所でやってくれよ。落ち着かん」 「自分がやってきたことが正しいのか、十分なのか。そういったことに自信が持てない。けれど、そんな自分を誰かに知られたくもない。……特に、秘書艦の望月さんには」 #スエズ鎮守府

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突然突かれた核心に、思わずうな重を食べる手が止まる。手にしていた器を置いて視線を向ければ、口の端に米粒をつけた不知火は「当たったようですね」と無表情でこちらを見返していた。 「……たぶん、そうなんだろうな」 「はい、そういう感じのED患者顔をしていらしたので」 #スエズ鎮守府

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事も無げに食事を再開する、ラブホの不知火。言葉を交わしたのは数回だが、何とも洞察が鋭いらしい。全部お見通しらしい。 「あなたは、何故弱さを見せたくないのですか」 「それは……」 「提督だからですか。戦いに赴く部下に、希望だけを見せたいからですか」 #スエズ鎮守府

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畳み掛ける不知火の問いに、俺は答えられない。 全部その通りだ。俺は提督として、部下に現実を見せることを恐れている。全て大丈夫だと、それだけを言い聞かせて信じさせようとしている。彼女達が海に駆け出した後、取り残された俺の背後にあるものを見せないようにするために。 #スエズ鎮守府

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「あなたは、周りの人々が思うほど強い人ではありません」 食事を終えた不知火が、トレイを手にそんなことを言う。 そうだ、俺は強くない。それらしく振る舞おうと、ただ必死になっているだけの凡人だ。常に自分を信じず、誰かを疑うことで生き延びてきた人間だ。 #スエズ鎮守府

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「ですが……あなたが思うほど、あなたの周りにいる人々は弱くないと、不知火は思います」 顔を上げる。立ち上がった不知火は、米粒をつけたままの顔で俺に微笑んでいた。 #スエズ鎮守府

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「艦娘と提督は一蓮托生です。希望も、そして絶望も分け合う関係です。……それに、弱さを共に背負うことで得られる強さもあります。特に、そちらの補佐艦の不知火はそう思っているはず」 「……参考になったよ。他所の鎮守府の人間だからか、少しは素直に話せてよかった」 #スエズ鎮守府

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「いえいえ。それでは、不知火はもう行きます。今日の夜、ご健闘をお祈りしていますね」 ぺこりと会釈して、ラブホの不知火がトレイを出口のカウンターへ持っていく。その後姿を見送りながら、俺は湯飲みに入った緑茶を啜って―― #スエズ鎮守府

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「司令、やはりまだ溜まっていらっしゃるのでは。二日連続の精力料理ですし、朝食の前に不知火とトイレで一発」 「だからしないってば……」 氷室提督と共に入ってきた不知火を目にした瞬間、俺は口から緑茶を噴き出した。 #スエズ鎮守府

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「あら、おはようございます神代大佐。いかがしましたか、不知火の顔を見るなり顔面から潮吹きとは。セルフ咥内ファックでほぼイきかけましたか」 「お、お前、ここの不知火、か？」 咳き込みながら尋ねると、不知火は氷室提督と顔を見合わせて、小さく首を傾げてみせる。 #スエズ鎮守府

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「はい、不知火はこのラブホテル鎮守府所属にして非処女、司令の下半身を絶頂させることにかけては右に出る者はないと自負している不知火ですが」 「えほっ、ゲホッ」 背中をさすってくれる氷室提督に礼を言いつつ、俺はなんとか呼吸を取り戻す。 #スエズ鎮守府

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そんな俺達の様子を、遠くのほうでラブホの大淀が目を輝かすような気配があったが……なんだろう、またホモにされるのかな。もう抜か七だけで勘弁してくれ。 「どうしました、神代大佐。そんな狐につままれたような顔をして」 「いや、不知火がもう一人いたもんだから驚いちゃって」 #スエズ鎮守府

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「はぁ……そりゃ、ここに不知火は二人いますけど」 「そうなのか？」 こんな下ネタを連呼するのがもう一人いるのか。俺がそう尋ねると、何言ってんだこいつ、というような顔をして氷室提督が頬を掻く。 #スエズ鎮守府

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「うちのと、おたくの。不知火は二人いるじゃないですか」 「…………………………は？」 #スエズ鎮守府

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「次の会場は確か……にっしし、偵察だぴょん。お邪魔しまぁ――」 「浜風」 「はい加賀さん。どうやら、ネズミが紛れ込んだようです。いえ、兎と言ったほうが適当でしょうか」 「ひっ」 「すばしっこいようだけれど、気配の絶ち方がまだまだ未熟ね」 #スエズ鎮守府

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「今回の合同演習は、公平を期するために種目の一切を知られてはならない。申し訳ありませんが、あなたの身柄はこちらで拘束します」 「いやぁ……あはは、うーちゃん迷っちゃってぇ……ここに来たのも、うーちゃん的にわざとじゃないっていうかぁ……」 「だそうですが、加賀さん」 #スエズ鎮守府

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「慈悲はありません。事情ではなく、見られたという事実が重要ですから」 「というわけで」 「なっ、なにするぴょん！ 触んなぴょん！」 「……待ちなさい、浜風」 「はい？」 #スエズ鎮守府