高嶌さん:デモ・スピーチに対するフェミニズム論争 あまり意識されない論点と現行法状況についての誤解

高嶌さんの連ツイをまとめました。
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まとめ 「家に帰ったらご飯を作って待っているお母さん」なんてものを平和の象徴にあげてはなりません ~ SEALDs「安倍政権.. 自由と民主主義のための学生緊急行動SEALDsが7.24に行ったデモ「安倍政権NO!首相官邸包囲」 安部総理への手紙の形態を取ってなされたその最終スピーチにて、 平和の象徴として挙げた「家に帰ったらご飯を作って待っているお母さんがいる幸せ」に対し、 本デモに参加したシェイクスピア研究者のフェミニスト@Cristoforou先生が、 「家庭を守る母とその子どもというイメージに依拠しており、むしろ首相らが推進しているものに近い」 と批判したことに始まる論争 87527 pv 533 36 users 229
まとめ 法曹家 高嶌先生による「民法からみたセクシャルハラスメント」〜社会運動におけるジェンダー等の法的解説 つぶやきをまとめさせていただきました、問題ございましたら対応させていただきますのでお手数ですがご連絡いただけますようお願い申し上げます。 タイトル思案中、変更の予定です。 SEALDs芝田万奈さん「家に帰ったらご飯を作って待っているお母さんがいる幸せ」に対する反応 #本当に止める - Togetterまとめ http://togetter.com/li/852918 批判の非対称性とは - Togetterまとめ http://togetter.com/li/854171 人の人権を侵害している事に関して議論の余地とは、また、社会運動という公の場で個人の感想を言う必然性とは 2346 pv 17 2
まとめ 「謝罪」とは何か?〜「寄生虫ツイート」をめぐる北村紗衣さんの謝罪について あまりに驚いたので保存用にまとめました。 参考用に 「国会前抗議に行ってきた」 http://d.hatena.ne.jp/saebou/20150725/p1 サエボウ(北村紗衣)さんが、SEALDsの大学生の安倍政権批判のスピーチを批判したブログ vanacoralの日記 「ご飯をつくって待ってくれているお母さん」の何が悪いのか http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20150727 その反響がまとめられているブログ 49298 pv 209 18 users 4
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

学生さんが行ったスピーチに対するフェミニズム論者からの批判を契機として、フェミニズムと公の場におけるスピーチの関係が議論されており、現在なお議論は続いているようです。

2015-09-03 19:46:15
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

この問題に対する私の立場はすでにツイートしたとおりですがtwitter.com/TAKASHIMA724/s…  twitter.com/TAKASHIMA724/s… 今回の議論ではあまり意識されていない論点が1点、現在の法状況の誤解が1点あると思われますので、少し追加コメントしておきます。

2015-09-03 19:47:36
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

従って、表現が名誉毀損等の何らかの理由で違法と評価されない限り、どのような事項をどのように表現しても全く問題はありません。同様に、他者の言明に対して批判を行うことも表現の自由に含まれますから、違法でない限り、他者の言明をどのように批判しようと、法律上は全く問題はありません。

2015-07-29 18:00:09
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

むしろ、そのような相互の意見・相互の表現のぶつかり合いの中からこそ、新たな社会規範が生まれてくるのが通常ですし、私が今回の議論に関心を持ったのも、まさにこの点にあります

2015-07-29 18:00:54
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

まず、今回の議論ではほとんど触れられていない論点とは、この事案が、複数の基本的価値が衝突する事案であるという点です。

2015-09-03 19:48:45
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

道徳、条例、法令などの社会規範は、その趣旨をたどれば、かならず一つあるいは複数の価値原理に基づいています。そして、個々の事案において、しばしばこれら複数の価値が抵触する状況が生じます。

2015-09-03 19:49:26
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

たとえば、安楽死やエホバの証人の輸血拒否の許容性を考えるうえでは、本人の自律原理(自己決定の尊重)と生命至上原理(生命の尊重)が抵触します。

2015-09-03 19:49:46
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

同様に、堕胎の許容性を考えるうえでは、女性が自分の体をどのように扱うかについての自律原理と胎児の生命保護が対立関係にあります。

2015-09-03 19:50:04
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

さらに、代理母の許容性を考えるうえでは、人的尊厳の配慮(女性の体や生まれた子供の商品化ないし物化、経済格差による代理母の事実的強制など)、代理母や依頼者の自己決定の尊重等の様々な価値判断が複雑に関連します。

2015-09-03 19:50:22
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

ニュージャージー州最高裁判所が代理母契約を公序良俗に反すると判断したのに対し(ベビーM事件)、カリフォルニア州最高裁判所はこれを公序良俗に反しないと判断したのは(アナジョンソン事件)、価値抵触が生じる事案における判断の困難さを端的に示しています。

2015-09-03 19:50:48
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

一見すると争いの余地がないような生命至上原理ですら、現実の社会との関係では、死刑制度,戦争による殺人,一定の要件を満たした安楽死,強姦による妊娠の場合の人工妊娠中絶などの例外が多数あり、その場合には必ずこれを正当化する別の価値原則があるのです。

2015-09-03 19:51:06
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

このような価値原理の例としては、すでに触れた自律原理、生命至上原理、人的尊厳の保護原理のほかにも、平等原理、無危害原理、功利主義(最大多数の人々の利益の最大量を産み出す行為に価値を置く)、弱者保護等があります。

2015-09-03 19:51:24
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

生命倫理学においては、このように複数の基本的価値が存在し、これらが相互に衝突する場合のあることは当然の前提なのですが、フェミニズムに関する今回の議論では、この点が意識されていないように思われます。

2015-09-03 19:51:48
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

すなわち、フェミニズムに立つスピーチ批判は、当然に、両性の平等や人的尊厳等の価値原理に基づいており、このような観点からの批判が不当な現状を変えていく上で非常に重要であることはいうまでもありません。

2015-09-03 19:52:09
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

しかし同時に、政治の場における個人スピーチという行為にもまた、表現の自由及び自律原理という基本的価値があるのです。

2015-09-03 19:52:26
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

今回の議論では、私的には何を話すのも自由だが公の場ではスピーチ内容に配慮しなければならないとの見解があったと記憶しています。しかしこの見解は、表現の自由の意義を誤解しています。というのは、表現の自由がおもに念頭に置いているのは、まさに公の場における発言だからです。

2015-09-03 19:52:49
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

政治的な場でこそ、表現の自由、言論の自由は最大限尊重されなければなりません。違法と評価されない限り、様々な個人の意見や個人の体験した個々の事実を表明する自由は、民主主義社会における議論の前提として必要不可欠です。

2015-09-03 19:53:08
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

政治の場で自分の意思や事実の陳述が制限されることの怖さは、公の場における被曝被害の訴えに対し、正当な批判による対応ではなく様々な圧力やいやがらせが加えられてきたこと、そして場合によっては意見自体が削除されてしまうという現状に照らせば、すぐにおわかりいただけると思います。

2015-09-03 19:53:34
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

注意すべきは、表現の自由も、自律原理も、表現の内容や自己決定の内容に価値があるとするのではなく、表現できるという状況、自由意思に基づいているという状況自体に価値を置いていることです。

2015-09-03 19:54:12
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

言い換えれば、表現や自己決定の内容については、何らかの理由で違法と評価されない限り、原則としてその妥当性は問われないのが原則です。

2015-09-03 19:54:28
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

表現の自由は多様な意見に基づく民主主義を成り立たせるために必要不可欠であり、フェミニズムに基づく主張もこの自由の上に成り立つことからすれば、その重要性は他の価値原理との抵触が生じる際にも、当然に考慮されるべきです。

2015-09-03 19:55:11
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

従って、表現の自由及びスピーチする人の自律という価値を踏まえた上でなお、フェミニズムの立場からステレオタイプな家族観の危険性を指摘することにはもちろん意味があるのですが、今回の議論では、対立する基本的価値にほとんど言及のないまま、発言の不適切さだけが批判の対象にされています。

2015-09-03 19:57:21
TAKASHIMA Hidehiro @TAKASHIMA724

基本的価値の抵触という最も重要な問題を意識しないまま批判のみがなされた場合、意識的ではないにせよ、アプリオリに自己の正当性を前提にした議論になりがちであり、本来、批判によって達成されるべき社会意識の変化にはむしろつながりにくくなるのではないかと危惧しています。

2015-09-03 19:58:21
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