Appleを「ストーリーとしての競争戦略」で読解してみた

スマートフォン市場(iPhone事業)におけるAppleが採る施策の是非について、大前研一氏と小飼弾氏とが論じていました。それらに触発され、「ストーリーとしての競争戦略」で提示された思考様式でAppleの戦略ストーリーを読解し、是非を考えてみました。 「ストーリーとしての競争戦略」の思考様式自体に関心をもたれたかたは、以下の書籍をどうぞ。 楠木 建 (著) 『ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件』 http://amzn.to/eVTyTp
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HASHIMOTO Fumio @bunzo78

http://exci.to/i4DviQ ←この記事を読んで、大前研一氏に対して、 http://bit.ly/dNmyn2 ←この記事冒頭で小飼弾氏が書いたのと同様の印象を直感的に抱いた。その直感が「ストーリーとしての競争戦略」を読んで腑に落ちた。

2011-01-07 17:41:45
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

「ストーリーとしての競争戦略」で提示される重要な概念の一つが「クリティカル・コア」。起承転結の「転」。傍から見ると不合理なのに、あえて組み込まれている戦略の構成要素。

2011-01-07 17:52:17
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

http://exci.to/i4DviQ ←で大前氏は、「OSを他の企業には売らず、ハードとワンセットで自分で売ろうとしたこと」を「失敗」、iPhone / iPadでジョブズがそれを繰り返そうとしているのを愚行と捉えている。IT産業に通じる人なら大抵「水平分化」は当然とみる。

2011-01-07 17:55:30
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

「ストーリーとしての競争戦略」の観点を借りれば、「OSとハードとをワンセットで自分で作って売る」こと、これこそが「クリティカル・コア」。傍からみると不合理だから、競合他社は模倣しない・模倣を忌避する。けれど、Appleの戦略上では「キラーパス」。結果として競合他社は模倣しきれない

2011-01-07 17:59:34
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

傍からみる・単体で捉えると不合理な要素が「キラーパス」たりえるのは、コンセプト→ゴールに至るストーリーの文脈におくと、むしろ合理的でゴールの成功確率を飛躍的に高める機能を発揮するから。逆にいえば、「キラーパス」たる「クリティカル・コア」がないとゴールへの線が細く・弱くなる。

2011-01-07 18:05:09
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

競争戦略における「ゴール」は、「長期的に持続可能な利益の獲得」。取り得る「シュート」は、低コスト化/顧客が支払ってくれる価格の引き上げ/ニッチにこもり無競争に徹する、の三択。

2011-01-07 18:56:42
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

「ストーリーとしての競争戦略」において、「蹴りだし」・起承転結の「起」にあたるのはコンセプト。「誰」に「何」を価値として提供するか。「シュート」「ゴール」は内(社内)向けの論理だけど、「蹴りだし」は外(顧客)向けの論理、事業のレゾンデトール。

2011-01-07 19:03:15
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

Appleが「シュート」で採ってるのは、顧客が支払う価格を引き上げる=製品の価値を高めること。「コンセプト」は"Ease of Doing". ユーザーがコンピュータを使うことではなくて、ユーザーがしたいことをAppleの製品・サービス(=コンピューティング)で容易にすること。

2011-01-07 19:11:14
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

「OSとハードとをワンセットで自分で作って売る」ことは、"Ease of Doing"というコンセプトの実現、製品・サービスの価値向上に決定的に機能する。OS⇔ハードとを密接に連携させ、一貫して機能する製品・UXを提供しやすい。USBやWi-FiをMacにいち早く採用したのが一例

2011-01-07 19:33:10
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

OSを外販せずに自社ハード内蔵に限定してれば、OS×ハードの組み合わせを限定し、それを自社で把握できる。OS×ハードの組み合わせが無数な競合他社よりも、「相性」問題でユーザーを惑わせるリスクをコントロールしやすい。

2011-01-07 19:39:18
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

OSとハードとを丸抱えしているからこそ、直営の路面店で対面持ち込みサポートするサービスまで提供できる。OSベンダー/OSを外部調達してるハードメーカーでは、自社が提供していない領域まで深くサポートサービス(=責任を持つこと)はできない。

2011-01-07 19:44:55
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

つまり「OSとハードとをワンセットで自分で作って売る」施策は"Ease of Doing"⇒「製品・サービスの価値向上」というAppleの戦略ストーリーにおいて、ことごとく他の施策の基盤として機能してる。OSを外販/外部調達したら、ストーリーの一貫性が崩れる。

2011-01-07 19:49:07
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

自社工場を持っていたかつてなら、稼働率を気にしたり、生産能力がボトルネックになった。ジョブズ復帰後、Appleは自社生産を止めて、EMSへの外部委託に切換えた。これにより、ハードを自社で手がけるリスク・障壁を低減させた(もちろんゼロではない)。

2011-01-07 19:53:38
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

市場において競合他社との完全競争を避け、他社がしてないことをする=差別化することで超過利潤を得ることが、競争戦略の狙い。ならば、IT機器の市場で「OSとハードとをワンセットで自分で作って売る」のは、格好の差別化手段。今やApple以外はやってない(やりたがらない)のだから。

2011-01-07 20:10:19
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

普通の人に"Ease of Doing"を実現する「完成品」を届けるのがジョブズのやりたいこと。専門家相手ではないから、「部品」ではない。だから、ジョブズは明確に「OSを外販しない」と決めてる。「正解だから」、ではなく、「やりたいことではないから」。この意思こそが重要。

2011-01-07 20:37:14
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

IT産業・スマートフォン市場「全般」での正解は分からない。IT産業の「常識」どおりに「水平分化」するほうが成功確率が高いかも。ただ少なくとも、ジョブズが描いているだろうAppleの戦略ストーリーにおいては、ハードを他人任せにするよりも自分達で手がけるほうが論理的な蓋然性が高い。

2011-01-07 20:49:32
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

「Macが「失敗」した15年前とは「ルール」が変わったのだから、「OSとハードとをワンセットで売る」のが有効」という小飼弾の論にも同意は出来ない。「ルール」なんてそう簡単に変わるものじゃない。氏の示す「利益>売上」「長期>短期」にしても、15年前は逆だと「信仰」されただけかも。

2011-01-07 20:57:30
HASHIMOTO Fumio @bunzo78

繰り返すと、Appleにおいて「OSとハードとをワンセットで自分で作って売る」ことが重要なのは、「IT産業で普遍的に正解」だからでも、「ルールが変わった」からでもない。Appleの戦略ストーリーという文脈で、すべての施策を矛盾・無理なく完遂させるのに不可欠な・前提となる施策だから

2011-01-07 21:05:54