校正にかける著者の執念——活版印刷時代の升味準之輔・松下圭一氏による赤字入れを中心に

東京大学出版会を退かれた竹中英俊氏が紹介されていた挿話が興味深かったため、備忘としてまとめました。
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竹中編集企画室(ホモ エーデンス) @Takeridon

40年以上本作りをしていて、いつも呆れつつ感心するのは著者の執念。再校で真っ赤に直した著者に、三校を「一両日中に見て返してほしい」と言って送ったら、その通り返してくれたのだが、また真っ赤。これじゃ責了にできないと泣きたくなったが、それにしてもこの直しの執念はハンパじゃない。感心!

2015-09-06 00:38:42
竹中編集企画室(ホモ エーデンス) @Takeridon

色々な著者がいるが、時に、初校の赤字より再校の赤字が多い人がいる。必然的に三校を著者に見せるか、著者が印刷所に出張校正するかして対処する。なぜそうなるか訊いたことがある。「東大出版会から出すと思うと、変なものは出せないという思いが募り、赤字を入れてしまう」と。騙されてしまうなあ。

2015-09-06 00:48:33
竹中編集企画室(ホモ エーデンス) @Takeridon

本作りの過程で一定以上の赤字が入ると、印刷所から「赤字代」の請求が来る。売れる見込みがある時は出版社が負担し、著者には請求しないが、昨今のように重版を期待できない時は、著者に請求せざるをえない。著者に支払う印税がある時は、赤字代を印税から引く。問題は印税ゼロの時。さてどうするか。

2015-09-06 00:56:54
竹中編集企画室(ホモ エーデンス) @Takeridon

著者で赤字が多い筆頭は升味準之輔、松下圭一先生。史料の差し替えや叙述改善の赤字型が升味先生(赤字がない代表は京極純一先生)。思考増進深化と語彙創造の赤字型が松下先生。このような型を持つ著者には、それに理解を持つ固定した印刷所に発注した。升味=三陽社。松下=理想社。いい時代でした、

2015-09-06 01:10:13

【参考】株式会社理想社

竹中編集企画室(ホモ エーデンス) @Takeridon

松下圭一先生は、学生時代に東大新聞の編集長を務め、また最初期の東大出版会に関わっていたため、活版印刷については深い理解を持っていた。あるスタイルの持ち主であるだけに、時には四校まで本人がチェックした。私も1992年刊行の『政策型思考と政治』ではご一緒に出張校正した。いい思い出。

2015-09-06 01:25:50
竹中編集企画室(ホモ エーデンス) @Takeridon

升味準之輔先生の校正の型は、松下圭一型と異なり、自分が書いた文章の推敲によるのではなく、引用史料の差し替えに起因する記述の変更だった。今日のコンピューター印刷なら楽だが、活版印刷時代は大変。印刷所への謝礼として、当時の特急酒2本を升味先生は贈っていたが、赤時代の請求書は来た。l

2015-09-06 01:35:27