2015年9月6日

戦前戦中の日本の電線は紙で巻いただけだった?そんなことはなかった話

経年劣化で天然ゴムの部分がなくなってたというお話だったようです
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TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

天然ゴムは鋼に馴染まない。この両者は接着性が悪い組み合わせなので、昔ゴムタイヤのカーカス(ベルト?)として鋼線を使おうとしたメーカーは苦心した。銅は天然ゴムとの接着性が良い。そこで鋼線に銅メッキすることで、スチールベルトを用いたタイヤが実現した。

2015-09-02 17:49:10
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

さて、電線業界では従来から逆の悩みがあった。銅線にゴム被覆を施すと、しっかりと接着してしまっていろいろと困るのだ。そこで、セパレーターとして(絶縁強化を兼ねて)銅線に紙を巻いてからゴム被覆を施した。ビニール被覆電線が登場するまではこれが普通だった。

2015-09-02 17:51:39
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

よりによって職場で「昔の日本軍の飛行機の電線は銅線に紙を巻いただけだった」と言う言葉を聞いてしまったので、思わず呟いてしまった。大戦当時に日本で製造された電子機器がオークションなどに出てくるとき、経年劣化によってゴム被覆が失われセパレーターしか残ってないことがある。

2015-09-02 17:53:19
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

そんな場合でも仔細に観察すると端子部あたりにゴム被覆の痕跡が残っていたりする。また、スミソニアン博物館で保存されているいくつかの日本製軍用無線機だとゴム被覆が残っているものがある。

2015-09-02 17:54:22
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

また、大戦末期の窮乏した状況では出荷時からセパレーターを巻いただけのものがあったかもしれない。あるいは出荷時はゴム被覆されていても、戦地に到着したときにはセパレーターしか残ってない、なんて話もあったかもしれない。

2015-09-02 17:56:37
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

だがそれらの可能性を文献や証言から調べようとす試みは「日本の電線は銅線に紙を巻いただけ」伝説で上書きされてしまい、一向に進まない。正直、この説を広めた何人かの戦記漫画家と戦史家に文句を言いたいところだ。

2015-09-02 17:58:03
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

あと、特に若い人が多いはずの「艦隊これくしょん」系のサイトなどで「日本の電線は銅線に紙を巻いただけ」と言う人を見かけるとなんとも言いがたい気分になる。今日は仕事が早く終わったので文句を呟く気力もあるが、普段は諦めている。

2015-09-02 18:01:23
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

なお、エンジンのスパークプラグケーブルの場合は油の付着する可能性が高いので天然ゴム被覆の上にチオナイトゴム被覆がなされた。そしてさらにその上に銅の平編み線によるシールドがなされた。

2015-09-02 18:07:03
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

同じ頃、連合国ではすでに被覆用のビニールが大量生産されて使われていた。銅線に紙を巻く必要もなく、耐熱性に難があるチオナイトで保護しなくてもビニール自身が優れた耐油性を持つ。

2015-09-02 18:10:07
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

といったい具合に日本の電線産業は連合国に対して劣っていた。レーダーやVHF無線機に至っては「曲げてはいけない同軸ケーブル」が使われていたりもしたくらいだ。

2015-09-02 18:11:07
鷹見一幸 @takamikazuyuki

@TFR_BIGMOSA 私の父は、大正生まれで、戦時中に海軍工廠におりましたが、大戦末期の昭和19年頃受領した電線は、ゴムの欠乏で被覆は銅線に紙を巻いた上からエナメルを塗ったものを使用していたそうです。曲げると剥落するため、配線した後にエナメルを塗り直したそうです。

2015-09-02 18:06:13
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

@takamikazuyuki 証言紹介ありがとうございます。そして質問があります。エナメル線に紙を巻くのでなく、紙の上からエナメルですか?

2015-09-02 18:17:44
鷹見一幸 @takamikazuyuki

@TFR_BIGMOSA 銅線にエナメルを塗った上から和紙を巻き、その上からさらに厚めに、ぼったりとエナメル塗料が塗ってあったそうです。曲げると塗膜にヒビが入って剥落するので、塗り直しの手間が大変だった。と聞いております。

2015-09-02 18:24:30
足柄矢矧@転職活動中 @ashigara_yahagi

@TFR_BIGMOSA 日本は開戦時にマレー半島を抑えていて天然ゴムは輸送が途絶えるまで在庫が潤沢にあり贅沢に使える状況にあった、ということを完全に忘れている人が多い、という点に尽きるのではないかと思います。仮に自分が指摘しても詮無きことではありますが……

2015-09-02 18:14:29
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

@ashigara_yahagi ご指摘感謝します。対日戦争開始後、アメリカではマレーの天然ゴムが入手できなくなったことからデュポン等に合成ゴムの研究を開始させています。短い期間ですが、日本がアメリカに対して資源量の優位を得た数少ない品目ですね。

2015-09-02 18:22:57
Msg. Merwin J. Toome @bco_100bn

@TFR_BIGMOSA 具体的に何年頃からビニールで覆われた物になるのでしょうか? レストアや考証に役立ちますのでご教示ください。

2015-09-02 18:22:07
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

@bco_100bn 1926年にグッドリッジが生産開始していることは掴めましたが、米軍での制式採用年度はまだ掴めていません。フィリピンで鹵獲された米軍無線機はセパレーター配線だったりビニールだったりしたようです。

2015-09-02 18:31:20
TFR_BIGMOSA(可愛いクジン人、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA

普段は諦めているが、今日はwebで何かを書くことで見返り(つまり新たな知見)が得られた。良い水曜日だった。

2015-09-02 18:19:59

コメント

ロバート(ヴァイオレット・エヴァーガーデンは良いぞ @asurokku 2015年9月7日
二式大艇物語で、搭乗員だった人の証言に二式大艇とカタリナ飛行艇の違いについて述べてて、その中で電線の被覆が「二式大艇は銅線に油紙だけ」、カタリナは「全てビニール被覆」と書いてたんだけど、そのとき飛ばした大艇がS18年製だったからなのかな?
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ロバート(ヴァイオレット・エヴァーガーデンは良いぞ @asurokku 2015年9月7日
此処の記述があったから旧日本軍の電線被覆は紙だけかと思ってたけど決してそうではなかったんだな。確かに、紙を巻いてゴム?で被覆した電線を見たことあるし、開戦前はゴムが豊富にあるならちゃんと被覆するよな
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nekosencho @Neko_Sencho 2015年9月7日
紙を巻く加工の、そこそこまっとうな電線があったのはわかるけど、これで現場でどういう電線が使われてたかを即断するのは危険だね
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SAKURA87🌸多摩停督💉4 @Sakura87_net 2015年9月7日
ただの導線一本でも色々なドラマがあるんだなぁ。
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nekosencho @Neko_Sencho 2015年9月7日
TFR_BIGMOSA あと、そういった比較的ちゃんとしたコードの耐久性とかもね。紙だと伸び縮みしないから曲げ伸ばしがあると比較的短時間で劣化してしまいそうだし、湿気とかにも弱いような気もするしさ
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COSY8SD @COSY8SD 2015年9月7日
遣独潜水艦作戦の輸送品目に生ゴムが入ってる程度には入手可能だったんでしょうね ビニール(PVC=ポリ塩化ビニル)は日本でも1941年に製品化(おそらく硬質)されてた ようですが、おそらく可塑剤の研究が進んでいなくて被覆(軟質)には使えなかったのかな
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COSY8SD @COSY8SD 2015年9月7日
塩化ビニル被覆が古河電気工業によって国産化されたのは1949年とありますね http://www.chemistry.or.jp/know/doc/isan015_article.pdf 戦後の塩ビ生産で水俣病を思い出してしまったが 1941年に製品化した日本窒素肥料って戦後のチッソか
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九十九 @hakqq 2015年9月8日
米が唯一不足した物資が生ゴムで、これの消費抑制策が自家用車のガソリン配給制(ガソリンは湧いているので消費抑制には至らないが)だった、という話をどっかで見た気がする
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南家宇塞斎 a.k.a. かん @kan143 2015年9月8日
ゴムタイヤの消耗を抑制したかったのかな、ガソリン配給制
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Sひろし @1970er 2015年9月8日
「セパレーターとして(絶縁強化を兼ねて)銅線に紙を巻いてからゴム被覆を施した」この製法では、ゴム被覆のほうが高価になるから、必要性がなければゴム被覆でなく油紙のみの被覆が選ばれていたのではないだろうか。
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オブジェクト@図書館はいいぞ @oixi_soredeiino 2015年9月9日
電線を主題にした記事、コメントも興味深くタメになりたした。やっぱり持てる国と戦争はするもんじゃないね
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TFR_BIGMOSA(可愛い大きな猫、地球暮らしを楽しむ長期滞在者) @TFR_BIGMOSA 2015年9月19日
この呟きをツィッターに投稿したころ、「戦後に初めて米軍のケーブルを分解して驚いた」「今の人はゴム被覆電線を見たことがないのかもしれない」といった返信を頂いたことを思い出しました。いつか機会があったら、その返信をくださった方々に何かお役に立つような書き込みをしたいと思います。
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三十郎 @sanjuro2 2015年9月24日
紙巻いてニクロム塗った物ばかりだと思っていた...
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