強くなれなかったおじさんが、強くなりたい君へ。
- Koji200000
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『オールラウンダー廻』格闘技を扱った漫画としては白眉の面白さ。作者さんの画力が素晴らしいので試合の動きがわかりやすく下手な技術書より参考になるし、格闘技・MMA・修斗への造詣も深い。MMA漫画ではハナカクや鉄風もあるけど『廻』は作者さんの基本的な格闘技知識の点でズバ抜けてる。
2015-09-06 12:07:01『廻』は試合だけじゃなく、道場やジムの雰囲気・生徒や選手達の会話・指導員や先生・ジムの経営者の考えやスタンスまでもがリアルに描かれている。よほど綿密な取材と打ち合わせをしたであろうことは想像に難くない。リアルなだけでなく漫画的面白さも加味されている。面白くないはずがない。
2015-09-06 12:07:58思春期にこんな素晴らしい漫画を読める若い子達が、おじさんは羨ましくて仕方ない。練習の参考になるし、『強くなる』という事に必要な練習・考え方などのディテールが理解できる。『強くなりたい』と思った少年が廻に影響を受けて格闘技を始めれば間違いなく強くなれる。
2015-09-06 12:08:3025年前、学校と家庭で虐められていた15歳のモヤシな元少年だったおじさん。常日頃から『強くなりたい』と思っていて、漠然としたイメージで『強くなるには空手だ!』と空手道場に入門した。そこで出会ったのが現在でも某地方都市に糞伝説を残すインチキ空手師範・バカ条(仮名)だった。
2015-09-06 12:09:30初めて空手衣に袖を通した時『これで僕は強くなれる、うじうじメソメソ泣いてる自分と決別するんだ!』と喜びと希望に満ち溢れたのを今でも覚えてる。そして、その後の失望も。
2015-09-06 12:10:05『うちは柔道と空手をミックスした総合格闘技の流派だ』と言う、とろろ昆布みたいなボロボロの黒帯を締めたバカ条を無条件に信頼し、尊敬した15歳の私。まさか、こいつが空手と柔道をかじっただけのただのプロレスオタクだなんて思ってもみなかった。
2015-09-06 12:10:27格闘技・武道の世界は実はとてもいい加減で、武道具屋で黒帯を買い『バカ条流空手師範・バカ条』と刺繍して、ビラ貼り(犯罪)・ビラ配りして生徒募集すれば流派なんて誰でも作れる、なんて当時15歳のおじさんは知らなかった。教える場所も市立武道館とかなら家賃もかからない。お手軽。
2015-09-06 12:13:181988年、前田日明の第2次UWF旗揚げに感化されたプロレスオタクのバカ条は『よーし、俺も団体を旗揚げするぞ!』と、人に教える技術も知識も指導ノウハウも何にもねーくせに流派を作ってしまったのだ。その当時としては斬新なコンセプトだった『空手と柔道をミックスした総合格闘技』に(続
2015-09-06 12:17:16続)私と同じように何も知らない子供達が100人ぐらい集まったが、皆、すぐにバカ条の正体を看破して来なくなった。そりゃそうだ、練習といえば走り込みとスクワット1000回とかしかやらないんだから。プロレスの新弟子検査か。付き合ってられないと小休止中に帰った子もいたという。
2015-09-06 12:20:25『技術は盗むものだ!』『自主トレが大事だ!』と何も教えない、そもそも立ち話ばかりでロクに練習しない、『おりゃー!おりゃー!』と大声ばかり出すプロレスごっこレベルのスパーリング。 私もバカ条に見切りをつければ良かったのに『この人は空手と柔道を極めた人だ!』と盲目的に信じていた。
2015-09-06 12:22:02私は3ヶ月経とうが半年経とうが、一切強くなれなかった。イジメられてる人間は自罰的なので『強くなれないのは自分のせい』『師範から技術を盗めないのは自分が悪い』といつも自分を責めていた。盗むも何も『うおー!うおー!』と叫びながらひたすら胸パンチしてくる奴から何を盗むというのか(笑)
2015-09-06 12:23:41この頃を思い出すと、つくづく悲惨だと思う。学校でイジメられ、家庭でもイジメられ、自分を強くしてくれるはずの道場でもイジメられていたんだから。耐えて乗り越えれば強くなれるわけでもない、ただただ屈辱感・敗北感・劣等感にまみれるだけのイジメ。
2015-09-06 12:24:22少しでもバカ条の文句を言えば市立武道館の畳に正座させられ、他流派の人達が見てる前で怒鳴りまくられた。生徒がどんどん減り、最終的に私1人になって、月謝が入らなくてイライラしていたのだろう。説教の〆はいつも『偉そうなことばかり言いやがって!お前は俺に勝てるのか!』と私に凄んで終わる。
2015-09-06 12:25:35私は今40歳だが、30過ぎたオッサンがヒョロヒョロに痩せた高校生相手に凄むとか、信じられない。女・子供・自分より弱いと認識した相手にはとことん強いバカ条は、私が今まで会ってきた人間の中でもつくづく最低なキング・オブ・クズだった。
2015-09-06 12:26:17私が強くなれなかった理由はもう1つあった。当時、週刊少年サンデーで連載されていた『拳児』に影響を受けてしまったのだ。内容は、少年が中国拳法を習って強くなる話なんだけど一貫した主張があって、それは『腕力や体の大きさなど、優れた技の前には無力』『型と空気椅子が何より大事』というもの。
2015-09-06 12:27:27『拳児』に影響を受けて、夜の公園に通い、何時間も中段突きや中段肘打ち、空気椅子をやると非常に有意義な気がして充実した・・・が、それで強くなれたかというと、全くその実感はなかった。が、ただでさえ漫画と現実を混同し易いオタク少年に『拳児』のリアリティを否定することなどできなかった。
2015-09-06 12:29:02数年後、月刊フルコンタクトKARATE元編集長の山田英司氏(『拳児』の作中に田英海という悪役で登場した)が大槻ケンヂのインタビューに答えてこう言っていたのを聞いて、リアルにorzした。
2015-09-06 12:33:26『中国拳法の世界でも強い人はいますよ。八極拳の李英、翻子拳の馬賢健、形意拳の蘇東成、あのへんは強いでしょ。でもね、強い人は皆体がデカいし、ウェイトトレーニングをしてるし、スパーリングもガンガンやってます。なんのことはない、極真空手が他の空手より強いのと同じ理由で強いんです』
2015-09-06 12:38:07人と人が闘う以上、基礎体力とスパーリングは不可欠だということさえ、当時の私はわからなかった。一応、強くなるための努力はしてるはずなのにまったく強くなれない。『俺はなんてダメな人間だろう・・・』とどんどん自己否定の念が強くなっていき、最終的には自○することばかり考えいた。
2015-09-06 12:39:12今考えると完全におかしくなってた。歩いていたら急に悲しくなって、自動販売機に額をくっつけてしくしく泣いたり。自分がおかしいことを自己診断して精神病院(当時は心療内科とかなかった)に行き、薬をもらって飲んだ。すると、ふと思い立った。『拳児』の逆をやればいんじゃね?ということを。
2015-09-06 12:39:46『拳児』の言う通りに空気椅子やってても強くなれない。なら、その逆をやれば強くなれるんじゃね?すぐさま極真空手に入門して、プロテインを買い、ウェイトトレーニングを開始した。結果、驚くほどあっさり強くなった(過去の自分と比較して相対的に)。
2015-09-06 12:41:13体重は15キロ増え、サンドバッグをたたいた時の音がポスポスからズドン!ズドン!に変わった。気持ちは安定して前向きになり、精神病院にも行く必要がなくなった。『強くなりたい』と願った時から6年もの歳月が経っていた。ずいぶん回り道したものだ。
2015-09-06 12:43:56そして、その頃『アルティメット大会』の情報が日本に入ってきた。松田隆智原作で『拳児』を描いていた藤原芳秀先生は『コンデ・コマ』の連載を開始した。が、それはまた別のお話。まぁとにかく、おじさんが何を言いたいかといいうと『強くなりたければオールラウンダー廻を読め!』ということだ。
2015-09-06 12:49:16