10周年のSPコンテンツ!
210
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
被害が出ている中では不謹慎かもしれないが、東京近郊の川が河川敷まで増水しても堤防を越えないのを見ると、河川は自然ではなく土木工学的にアーティファクトな存在なんだということを再確認する。ああなるように河川は設計されている。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
河川は、陸地にある水を海へ運ぶ装置。大雨のときは大量の水を運ばなければならない。河川が最も多くの水を輸送できるのは、堤防ギリギリまで水位が上がったとき。ところが少しでも超えると溢れてしまう。最大効率点と危険域が隣接してるのが河川の特徴。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
つまり工学的には、河川の水位を溢れる寸前に維持することが、最も多くの水を陸地から排除することに繋がる。そこで河川管理事務所は、河川に流れ込む水量を全て測定し、合計が河川の容量を超えないよう制御する。そのときに使われるのが、ダム。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
市街地や田畑から川に流入する水の量は変えられない。しかしダムが放流する水の量は変えられる。そこで、河川の水位に余裕があるときは放流してダムを空け、水位が上がりそうになると放流を絞る。こうして水位を保っているから、台風通過中は「溢れそうで溢れない」になる。溢れなければ制御成功。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
ところが、ダムが放流した水が下流に到達するには時間を要するから、到達のタイミングと下流の降雨が一致してしまうと取り返しがつかない。そこでダムの放流は、下流の降雨を予測して先回りしなければならない。大雨のときに多くの人が利用するアメッシュを運用しているのが東京都庁なのは、そのため。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
河川を運用する人の立場で考えると、洪水を防ぐには河川そのものの容量を増加することと、ダムの調整容量を増加することで制御の破綻を回避できるので、治水の基本はこの2つになる。脱ダムで話題になった「緑のダム」は、雨水の流入ピークの方を下げる効果がある。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
洪水調整用のダムがあるのに破綻するのは、ダムが満水になったとき。こうなると、ダムは流入してきたのと同量の水を放流しなければならない。増やしているわけではないので、ダムが洪水を起こしたのではない。ダムがないのと同じ状態になっただけ。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
河川が容量を少しでも超えると危険なのは、堤防は越流すると急速に破壊されるから。越流する前は水の流れは堤防と平行だが、越流すると直交する流れになるので、堤防を削り取ってしまう。削れて低くなると最大容量が減り、その分がさらに溢れるという悪循環になる。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
逆に言えば、溢れても壊れず、河川が最大の流下能力を維持し続けるなら、洪水は最小限に抑えられる。これを日本でやった有名な例が、武田信玄の信玄堤。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
現代ではスーパー堤防がこれに相当する。スーパー堤防は、堤防の斜面を非常に緩やかにしてその部分まで街にしてしまうことで、越流しても堤防が崩壊しないことを狙っている。洪水を起こさないためではなく、起きたときに悪化させないことが目的。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
河川が溢れそうなときに消防団が土嚢を積むのは焼石に水な感じがするかもしれないが、あれは「ついに堤防を越えた」という瞬間に水を溢れさせないため。溢れると堤防が崩壊してしまうから、何とかしてピークを乗り切ろうとしているわけ。堤防をあらかじめ高くするのは、裾野から広げる必要があり大変。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
河川の運用者は河川の容量に対して一定の余裕を見込んで流量を調整しているが、雨の量が多いとダムの運用に余裕がなくなり、満水になる危険性が出てくる。そこで、河川容量の余裕を減らし、流下量を増やす。こうすると瞬間的に容量を超えて溢れるリスクが出てくるので、消防団を動員するわけ。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
このように、よく整備された河川の水量というのはたまたまああなっているのではなく、人間の手でよく制御されたものと言える。しかし自然の力は今も人間を上回っているので、今使えるリソースを駆使して大雨を乗り切る努力をしているというわけ。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
そういえば、日産スタジアム大丈夫だったかな。新横浜公園は、鶴見川が増水したときはわざと溢れさせて、横浜市中心部での洪水を防ぐ役割を持っている。このように、河川容量が破綻する場所をあらかじめ決めておき、他の場所での洪水を防ぐ施設を、遊水池と言う。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
日産スタジアムは遊水池の有効利用として建設されているので、駐車場などは水没を前提としている。実際に過去、水没したことがあり、これで横浜市中心部を守っている。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
東京の環七地下河川や常総の首都圏外郭放水路も遊水池の一種で、ダムが抑えきれなかった流量を一時的に受け入れることでピークを下げ、堤防の越流を防ぐ。だから、こういった施設があっても河川が堤防ギリギリまで増水するのは予定通りで、ギリギリを越えなかったら成功。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
あ、環七地下河川の上流にはダムはないか。都市河川はダムがないから、流量の増減が激しく、洪水を起こしやすい。環七地下河川ができてから、神田川と妙正寺川の洪水は激減した。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
横浜や東京の河川が何とか持ちこたえていて、栃木などが大変なことになっているのは、まさにこの治水のための投資の水準が違うからで、人口密度の低い地域での治水は大きな課題。金に糸目をつけない「国土強靭化」は、現実には永遠の未完事業になってしまう。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
たとえば、水田地帯は遊水池として使いやすいのだが、農家にとっては補償問題だし、水田地帯に家を建ててしまったりしているので難しい。しかし「数十年に一度の豪雨」への対策としては最も現実的で経済的な方法のひとつではある。そういうことを議論していけるのか。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
鬼怒川の堤防に100メートルの亀裂 NHKニュース nhk.jp/N4LA4I04 「堤防は蟻の一穴から崩れる」という慣用句があるけど、堤防に亀裂や小穴が空くと内部に水が浸透し、強度が低下して崩壊する危険がある。こうなったらもう、祈ることしかできない。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
近くの集落が心配だが、おそらく島のような緩やかな台地になっているのだろう。古くから水田として使いにくく、住めば水浸しになりにくいから集落になる。川が穏やかに溢れれば、水田は洪水になっても集落は残る。堤防が頑張ってから力尽きると厳しい。輪中堤はひとつの解決策。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
ん、事実誤認がありそうなのでTweetをひとつ削除。いま危険な状態にある鬼怒川の辺りは、水田ではなく畑のようだ。ただ、こういった河川沿いの低地が、川の成り立ちからすると川の一部そのものだということは間違いない。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
洪水になると当然、被害に遭っている場所が注目されるけど、上流ではたくさんのダム達が人知れずふんばっているんだぜ…踏みとどまれなくなったら下流の命が失われるという猛烈な責任と、上流からの猛烈な流入の間で。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
川が溢れそうなんじゃない。川が溢れる寸前のところで、ダム達が頑張っているんだ。頑張れダム。負けるなダム。川を守ってくれ。
大貫剛 @ohnuki_tsuyoshi
我々は下水管の中に住んでいる微生物のようなものだ。我々の寿命より長い間隔で、我々よりはるかに大きな何かが、風呂の栓を抜く。我々はいま目の前に流れている水の量ではなく、管の太さからそれを想像しなければならないのだ。
残りを読む(4)

コメント

七七四未満六四以上 @zy773 2015年9月10日
香川県に住んでる者としては 大変興味深いです。◇逆?に言えば、だからこそ より正確な気象予報が必要になるんでしょうね。大雨が降ることが事前に正確に予測出来るのなら予めダムを放水しておく事も出来るでしょうから
neologcutter @neologcuter 2015年9月10日
スーパー堤防は越流しても崩壊しない仕組みになってるのか…。堤防の要諦は「水を漏らさず、遮断せず」だと思ってたんだが…。
myasu1959 @myasu1959 2015年9月10日
アメッシュの運用は東京都下水道局。初期は下水道の流量を使用していた記憶が...
さとうのぶよ @0168_dainobu69 2015年9月10日
隅田川の橋を船から見学するイベントで、東京都職員の方が、付近の地下にどれだけの治水整備をしているのか認識してほしいと言っていた。
椋木京一 @mukunokik1 2015年9月11日
スーパー堤防について工学的に誤解していた。
kartis56 @kartis56 2015年9月11日
集中豪雨的な降り方が連続したため、春日部-越谷付近で洪水した。せんげん台駅前などの側溝が集まる交差点であふれていて、川自体はほとんど氾濫しなかった。せんげん台もせんげん堀自体は昨年あたりに改修拡幅済み。
Cook⚡ @CookDrake 2015年9月11日
河は本来の姿に帰ろうとする。それを曲げて人が住む。治水は自然との戦いだが暴れ龍を完封することは難しい。
endersgame @endersgame3 2015年9月11日
neologcuter そりゃそうだけどシステム許容量からオーバーフローしてしまったらどうしようもないでしょ。 崩壊しないっていうか川沿いの土地全体を堤防天端の高さまで引き上げることで、崩れる原因である天端や裏法面が実質的に存在しないようにする仕組みらしいが。だから川が巨大で幅広な都内のドブ川みたいになるというか。
三十郎 @sanjuro2 2015年9月11日
スーパー堤防は必要な土量が何10倍にもなるから施工が難しいんだよなぁ。
なげなわぐも @anhebonia 2015年9月11日
明治神宮の森は、「治水」の象徴でもある。
おらおら@ @oraora1966 2015年9月11日
これは日本に住む者が避けて通れない命題として皆で共有したい。ツイ主さんに感謝。
undo(フリーソーメンリー) @tolucky774 2015年9月12日
土木偉大。「絶対に被害がでない」ことばかりでなく、「被害が出ても最小限」に抑える方法も正しいことを多くの人に理解してほしいなと
Flying Zebra @f_zebra 2015年9月14日
越流した後、堤体が崩壊(決壊)するメカニズムについて少し補足。土でできた堤体は水圧に対して十分な強度を持って設計されているので水圧で壊れることはまずないけど、水の流れに洗われて削られる(洗掘、という)ことで構造が保てなくなり、最後は水圧で壊れる。では洗掘はどこで起きるか。
Flying Zebra @f_zebra 2015年9月14日
堤防の河川側(河川の内側だけど、堤「外」側という)の法面(のりめん)や降雨を受ける天端(てんば)はコンクリートを貼ったりして洗掘が起きにくいようにしている。越流しても天端面が削られることはないけど、堤内側(堤防で守られている側)の法面、とくにその根元(法尻:のりじり)のところが洗掘を受けやすい。水圧に耐えている堤体の、背面側が根元から削られるような形になる。
Flying Zebra @f_zebra 2015年9月14日
そうすると堤内側から洗掘された空隙に崩れ落ちていき、いずれ堤体幅が水圧に耐えられないところまで痩せていく。堤体がコンクリート製であれば堤体自体は崩れないが、根元が洗掘されれば堤内側に転倒してしまう。これを防ぐには堤内側の法尻から一定の幅の平場部分を補強して洗掘されないようにするのが有効だが、そこまでは用地買収していない場合が多く実際には難しい。
Flying Zebra @f_zebra 2015年9月14日
なお、干拓地の締切堤防や天井川の堤防の場合は常時水圧が掛かっているので、浸透流による洗掘というメカニズムもある。つまり、最初はごく僅かな浸透水の流れが少しずつ周囲の土を流し去って流路が拡がり、やがて決壊に至るというものだ。この場合、初期のチョロチョロした漏水を見逃さないことが重要となる。
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする