◇◇◇デイ・オブ・ザ・ロブスター／アウト・オブ・ザ・スペース◇◇◇

双海亜美･双海真美 @xenochara

◇◇◇デイ・オブ・ザ・ロブスター／アウト・オブ・ザ・スペース◇◇◇ #忍殺二次創作

双海亜美･双海真美 @xenochara

燃え上がる偽装マグロ倉庫。ナンシー・リーは同じ光景を見たような気がした。ただし、その記憶にはあのピンクのニンジャはいなかった。 何度となく見たのはあの巨大なエビ…否、ニンジャだ！ ナンシーは自分の足元が不安定な１と０の世界のような気がして空を見上げる。 黄金の立方体は無い。 1

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ニンジャスレイヤーのUNIX端末に再び『ロブスター』の文字が浮かび上がる。 ナンシーが長い眠りについてから何時頃からか、『ロブスター』の文字がナンシーから送られてくるようになった。 最初はとあるヨロシサンとオムラの共同研究施設を襲撃した後だ。 2

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「ロブスターシステム・・・アレは一体何だったのだ・・・？」 ニンジャスレイヤーは横たわるナンシーに向けて問いかける。だが返答は無い。隣に座るシルバーキーも今は眠っている・・・あるいは彼女に語りかけているのだろうか？ その答えも、未だ聞けずにいる。 3

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ニンジャスレイヤーもそっと目を閉じる。 思い出す赤い点滅灯。鳴り響くサイレン音。巨大な画面に映る『ロブスターシステム稼働』の文字。走るニンジャスレイヤー。それを追いかけるガンドー。施設のあちこちから響く爆発音。扉を開け、赤黒のニンジャとコートに火の付いた探偵は海へ・・・。 4

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あの日から数日置きに『ロブスター』の文字を目にするようになった。恐らく、あの事件の時にもナンシーは何らかの形で手を貸してくれたのだろう。 その後遺症がこの『ロブスター』。 だが、ニンジャスレイヤーはそれがどういった物なのか、ナンシーに何が起こり、今後どうなるのかを知らない。 5

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ナンシーはロブスターを見ていた。ロブスターの踊りを真似していた。ロブスター幼稚園の赤い園児服を着ていた。ロブスター組のバッジを付けていた。彼女の豊満なバストに小さな上着が引き上げられ、下乳すら見えるようだった。だが彼女はそれに違和感を感じなかった。 6

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園児達に囲まれていた。間違えながらも一緒に踊っていた。園児達はナンシーの腰ほどの背も無かった。豊満な胸も、体に合わず下乳が見えそうになっている服も、彼女だけだった。だが彼女はそれに違和感を感じなかった。 7

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空にはロブスターツェッペリンが飛行していた。新作映画『ロブステッドマンション』の宣伝をしていた。「魚介類の恐怖があなたを襲う！」のマイコ音声に、一部の園児が恐怖した。だが彼女はそれに違和感を感じなかった。 8

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違和感を持たない自分に気づく。ふと空を見る。黄金の立方体は無い。 自分が異常なのか世界が異常なのかわからないまま流されるままにここに居る。 大きく腕を振る。下乳が顕になる。だが誰も気にしない。周りも園児として接しているからだ。 9

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流されている自分に気づく。そしてもう一度注意深く空を見る。ロブスターツェッペリンが動いていない！ （もしかしてあそこには…） そこまで頭に浮かび、その先は霧がかかったように自分の思考が分からなくなっていく。 再び何も考えずにロブスターの動きに合わせて手を大きく振る。 10

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ニンジャスレイヤーは大きく息を吐き出す。再びの『ロブスター』。 最初は十数日間隔だったものが、数日、1日置き、そして今や数時間置きとなっている。これでは今日か明日には30分間隔を切るだろう。 ふとナンシーの横を見る。 頼みのシルバーキーは眠ったままだ。 11

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シルバーキーの鼻から一筋の血が流れだした。 そっと目を開けるシルバーキー。 シルバーキーは苦笑いしながらニンジャスレイヤーを見る。 「このお姉ちゃんはコスプレの趣味でも有るのかい？」 「・・・」 否定も肯定もしないニンジャスレイヤー。 12

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「まぁいいや。 これから話す事は冗談みたいな話だが、俺の見たままのビジョンを話す。」 とぼけたような表情だが、その目からは真剣味が伺えた。 「巨大なエビ・・・まさにロブスターって感じの着ぐるみだ。」 ニンジャスレイヤーはその目を大きく開き、シルバーキーを見た。 13

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「だから、冗談じゃないんだって！ エビの着ぐるみが踊って、それを真似て子供達が踊って・・・その、言いづらいんだが、そこのお姉ちゃんが園児服で踊ってたんだ。」 親指で後ろのナンシーを差す。 「右を見てもロブスター、左を見てもロブスター。赤、赤、赤。嫌になるよ、実際。」 14

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「その、俺自身も多分ヤバかった。街中にロブスターを称える言葉や歌、それと時々ヨロシサンのCM曲。本当に010100ロブスタリティ010011だった。」 「ロブスタリティ？」 その不可解な単語にニンジャスレイヤーは聞き返す。 「ヤバいな・・・俺も奴らに・・・手伝ってくれ！」 15

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「ナンシー＝サンを助ける！ニンジャスレイヤー＝サン、今回はアンタが鍵だ！」 シルバーキーの顔に真剣味が増す。 「分かった。」 ニンジャスレイヤーが頷く。 「普通は俺がダイブするんだが、0101ロブスティック0011なあの街の洗脳にはアンタの方が適任なんだ。」 16

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「手短に説明すると、彼女の頭の中でサイバーゴスなんかのファイヤーウォールめいた物を見つけた。そいつはアンタの姿をしていた。あの01011ロブスティチュード01101な奴らの攻撃から、彼女自身を守る為に無意識に作り上げたプログラムなんだろうな。」 17

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「00110ロブズィ11011な奴らの目を掻い潜るには、今の状態の俺よりアンタの意識をそのファイヤーウォールに入れる方が良い！後はアンタが他人の頭の中でどれだけのワザマエになるかって事だが・・・」 18

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「入った直後はあんまり自分を過信するなよ。他人の頭の中だ。慣れないうちは全力が出せる訳が無いんだ。とにかく最初は頭の中のナンシー＝サンを探せ！それで、ショックを与えろ。頬を抓ったり、キスしたり、とにかく一瞬でも覚醒させろ！それでとにかく強そうなエビにカラテだ！」 19

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「本当にそれで救えるのか？」 「俺も分からねぇ。だけどやらなきゃ彼女がアブナイ。違うか？」 ニンジャスレイヤーをじっと見る。 「どうすれば良い？」 シルバーキーはベッド横のナンシーの頭の側を指差す。 ニンジャスレイヤーはそこへと移動する。 20

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「額を合わせて・・・。」 催眠術師めいて優しくもどこか強引な手つきでニンジャスレイヤーとナンシーの頭に手を置き、近づける。 「心を無にして、ただ一点、自分を彼女の中から自分によく似た形を探すんだ。ニンジャの、アンタをね。」 21

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ニンジャスレイヤーは目を閉じ、ただぼんやりと自分の姿を想像する。何かが近づいてくる感覚。その何かが自分の姿だと理解できるようになる頃には、それが近づいているのでは無いことに気づく。 ニンジャスレイヤーの方がそれに近づいていたのだ！ 22

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目を覚ますとニンジャスレイヤーは体を縛り付けられていた。 周りは暗く、あまり見えない。 かつて、イグゾーションによってセキバハラの荒野に磔にされた事を思い出す。 「ガンドーは無事だろうか・・・」 ふと思いが口を出る。 23

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「・・・見えない？」 光はある。だが見えない。通常であればニンジャ視力により周辺がみえるはずだ。 ニンジャスレイヤーは目を閉じ、違和感を理解した。 自分では無い。だが同時にこの世界に対する物理以外の攻撃法をほんの少し、感じた。 24