大禍災 ~共に歩む混沌核~

大禍災まとめ
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やかん @ryuto_yakan

@GCtg_TL @orikadoyuki 混沌が集約する。 それは投影体に似た、しかし投影体ではない混沌核そのものの形の発露。 本来ならばあり得ざる『そこに在る混沌』の現出。 しばらくし、やがてその混沌は、少女の姿を象った。 年の頃は15、6歳だろうか。 #共に歩む混沌核

2015-09-11 12:11:13
やかん @ryuto_yakan

@GCtg_TL 遠見の水晶。 祭壇に祀られた絶望にして希望。 今から『10年後』の世界で、ジニアと呼ばれるその少女は『予感』を覚え、その宝珠を覗き見た。 自身の力をその宝石に注ぎ込み、その『遠隔視』の魔力を『過去視』に用いた。(続) #共に歩む混沌核

2015-09-11 12:17:16
やかん @ryuto_yakan

@GCtg_TL 果たしてそこに映し出されたのは母の最愛なる人物の、(いつも悪態をつきつつも)敬愛する父の、無惨なるひとつの末路の姿だった。 「……おかしい。こんなことあり得ないハズなのに。クソオヤジが死ぬルートは全部潰したのに、これは一体……?」(続) #共に歩む混沌核

2015-09-11 12:24:16
やかん @ryuto_yakan

@GCtg_TL ともかくこうしてはいられないと、ジニアは家を飛び出す。 そしてひとり、まだ自分を知りもしない父の元へと時空を跳躍する。 直接介入により運命を覆す最後の機会となる時空点。 その日その場所は皮肉にも、父と母が婚約をかわした、あの日の夜だった。 #共に歩む混沌

2015-09-11 12:29:42
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「……っし、こんなとこか」 布巾で手を拭きながら、ハーレーはバーカウンターに寄りかかった。 一夜限りの特別なディナーのために模様替えしていた店内は、すっかり元の姿に戻っている。何度も乾杯したカクテルグラスも、今や棚の中でお休み中だ。 けれど―――

2015-09-11 19:35:42
シキ @orikadoyuki

「楽しい時間はまだ胸のなかに、ってな」 言ってから、勝手にひとりで照れ臭くなった。こんな、らしくないことを口走ってしまうくらいには、気持ちが浮わついていた。 なにしろ、とびきりのイイ女と最高のひとときを過ごしたのだ。気持ちを落ち着けろというほうが、土台無理な話なのである。

2015-09-11 19:41:15
シキ @orikadoyuki

10年したら、彼女はどんな女性になっているだろう。自分は彼女になにを感じるだろう。 例えば、大人の色気に溢れた姿を想像してみたりして。くう!っと唸って壁をがしがし殴りつける。 今度は、浜辺を歩くふたりを思い浮かべてみたり。なんだか気恥ずかしくなって、ニヤニヤしてしまう。

2015-09-11 20:04:00
シキ @orikadoyuki

「あー!気になる!未来が気になってしょうがねえ!早くあっちに帰りたくなっちまうなあ、ちくしょう!」 別離の痛みより、未来への期待が遥かに勝る。あらゆる不安が希望に塗り潰されている。 そんな、呆れるほど幸せな男のいる店に、不意に。 からん、と。 カウベルを鳴らす誰かが現れた。

2015-09-11 20:07:40
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki 「お母さんは……帰った後か」 扉を開けて店内を見回し、誰にでもなくひとりごちる。 現れたのは、酒場には似つかわしくない年若い少女。 彼女はハーレーの姿を見定めると、ビシリと指を突きつける。 「不本意だけど協力してあげるわ、このクソオヤジ!」

2015-09-14 11:26:55
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「おっ……、おう?」 指差されているのは自分だから、クソオヤジというのは、自分のことを指しているのだろう。 「オヤジ……、オヤジかあ」 アヤメと結婚して子供ができたら、そう呼ばれる日もくるのか。そんなことを思って、頬が緩む。 が、それはそれとして。

2015-09-14 12:27:06
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「お嬢ちゃん、悪いがもう店じまいしちまってんだ。ミルクが飲みたければお家に帰ってママにねだってくれ」 ほれほれ、と、出口に向かって手を振ってみせる。徹夜で呑んでそのまま片付けをこなしたから、眠たくって仕方ないのだ。不思議な少女の相手をする余力はない。

2015-09-14 12:31:15
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki ひらひらと振られた手をバシリと打ち据える。 「用があるのはこの店でもケータリングでもないの! アンタよ、アンタ! このままオッサンが思うままに事件に首つっこんだら死ぬほど困ることになるっていうか死ぬことになるから助けにきてやったのよ、未来から!」(続)

2015-09-14 14:51:15
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki 目の前にいるハーレー・ストーンだって、未来から来た投影体だ。 本来なら荒唐無稽な話でも、他人よりは信じやすいだろう。 酔ったハーレーに複雑な話をしても仕方ないだろうと考えた少女は、まずは簡潔にぶっちゃけることにしたのだった。

2015-09-14 14:56:07
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「死ぬ?おれが?」 自分を指差して、両目をぱちくり。 「ふ……ふざけるな!未来へ帰る前に死ぬなんて御免だぞおれは!!」 彼女と再び会う前に死ぬなんて、断固拒否だ。少女の言葉を疑うこともせず、ずずい、と詰め寄る。 「嬢ちゃん、その話詳しく聞かせろ!」

2015-09-14 15:21:02
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki 「少し落ち着いてよ。こっちだって詳しいことは分かってないの」 やれやれとため息をつきながら。 「そもそもオッサンは投影体。本来ならオッサンが消えても本体、オッサン・オブ・オリジナルには影響がないはずなの。その時点でこれはかなりイレギュラーなの」(続)

2015-09-14 16:27:30
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki 「とにかく分かってるのは、これからオッサンは否応なく事件に巻き込まれるか首をつっこむ。その結果やばいことになるってこと。それを少しでもマシにするためにアタシはここにきたんだ。嫌な予感も覚えたからね」

2015-09-14 16:28:42
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「嫌な予感って……おれが死ぬとかいうふざけた話とは別にか?」 尋ねてはみたものの、自分の先行きが不安で、そちらにはあまり注意が向かなかった。 「……オーケー、わかった。よくわからんが、おまえさんはおれの味方……どころか、救いの女神様ってわけだ」

2015-09-14 20:24:11
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 酒のせいか思考はイマイチ不明瞭だが、そういうことなら、まずやるべきことはハッキリした。 「おれはハーレーだ。ハーレー・ストーン。よければ、救いの女神様の名前を教えてもらえねえかな?」 そう言って、見知らぬ少女に手を差し出した。

2015-09-14 20:27:01
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki まずはその手を取らずにはたく。 さて、どう答えたものか悩ましい。 確かこの場でお母さんはもう、アタシのことはオヤジに伝えていたはずだ。 かと言って見ず知らずの人物を装っても仕方がない。 ……まあいい。最後にアタシの記憶を消して変えればいいだけだ。(続)

2015-09-14 20:37:34
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki 「その、女を見たら声色変えるのからやめるべき、というかやめて」 ハァとため息をひとつついて。 「ジニア。ジニア・ストーン。娘にどつかれて、奥さんとそれなりに仲良くする未来を失いたくなかったら、死ぬ気で死なないように頑張ってよね、クソオヤジ」

2015-09-14 20:44:07
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「ばあか、おまえさんくらいの歳はおれの好みを外れて……、ん?」 いま、この娘は、なんと言った? どこか耳馴染みのあるファーストネームに、なんだか他人とは思えないファミリーネームを添えて―――。 「ジニア……ジニア……、はあ!?ジニアぁ!?」

2015-09-14 22:39:14
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「なんでおまえさん急にそんなにデカく!ああっ、《it》だからか!それで急にそんなに大きく!」 いや、まて。違うそうではない。 「オヤジって……奥さんって……!それにストーンって……!!だけど十年経たねえとアヤメとは答えが出ねえはずじゃ……!!」

2015-09-14 22:56:16
やかん @ryuto_yakan

@orikadoyuki ただじっとその顔を見つめる。 すでに答えは伝えているのだから。 「酔いがさめるまで待った方がいいの?」

2015-09-14 23:29:38
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「あー…いや、ちょっと待て。冗談でもドッキリでもねえのか。オーケー、オーケー。…ちょっと水飲んでいいか?」 許可を待たずに、瓶の中身をグラスに注いで飲み干す。 「ッ!やべ、これウォッカじゃねえか…」 プルプル頭を振って、バシバシ頬を叩いて、目を覚ます。

2015-09-14 23:34:37
シキ @orikadoyuki

@ryuto_yakan 「……とりあえず、なんとなく、わかった。おまえさんもおれと同じか。未来からやってきた。それも、おれとアヤメの結ばれたサイコーにハッピーな未来から」

2015-09-14 23:36:20