朝の連続ツイッター小説『東欧の街』ここまでのまとめ

毎朝がんばって書く
0
しょのずぁ @sonezawa

朝のツイッター連続小説『東欧の思い出』

2015-09-11 07:31:55
しょのずぁ @sonezawa

①仕事の関係で、東欧のよく名前も思い出せない国に来ていた。僕一人が来ることだけに意味のあるような仕事だったので、暇を持て余し、昨日は市街の繁華街を散策したが、ぼんやりとした街にぼんやりとした店が並ぶだけで、すぐにホテルに引き返してしまった。

2015-09-11 07:32:40
しょのずぁ @sonezawa

②今日はホテルの前を流れる川を眺めるために土手に上がった。毎日のように空はどんよりと曇っていた。日も暮れかけていたせいか、この国ではもうコートが必要だと思った。

2015-09-11 07:35:10
しょのずぁ @sonezawa

③昔は運河として栄えていたであろうその川は、灰色の川面にそこだけうっすらと霧がかかっていて、日暮れというよりは早朝を思わせた。

2015-09-11 07:36:29
しょのずぁ @sonezawa

④土手の枯れ草の上にはぽつぽつと羊がいるのが分かったが、排気ガスや泥で汚れて黒ずんだそれは、羊というよりは部屋に溜まったほこりのように見えた。 僕は川を眺めながら土手を右手に向かって歩いてみることにした。

2015-09-11 07:43:54
しょのずぁ @sonezawa

⑤人間が近寄っても警戒する様子のない羊たちを見ながら、奈良公園の鹿のようなものなのだろうか、などと考えていると、後ろから通訳の女性が追いかけてきた。 ここにいたんですね、というようなことを言って、なんやかやと言葉を交わした後、彼女も僕と一緒に土手を歩くことになった。

2015-09-11 07:45:50
しょのずぁ @sonezawa

⑥彼女は二十代後半くらいで母国語と英語と、それから日本語が話せた。そのとき歩きながら話して分かったことだが、彼女は日本のアニメ文化が好きなのだそうだ。 垢抜けない外見をしていたが、それなりの格好をすれば見違えるほど美しくなるのだろうと、その国の女性は誰を見てもそう思わせた。

2015-09-11 07:46:53
しょのずぁ @sonezawa

⑦昨日も街を案内してくれた彼女は、どうやら僕に好意を抱いているらしかった。彼女は川辺という場所がそうさせるのか、昨日よりもよそよそしさが無くなっているようだった。

2015-09-11 07:48:07
しょのずぁ @sonezawa

朝の連続ツイッター小説『東欧の街』(タイトル変更)二日目

2015-09-12 07:54:37
しょのずぁ @sonezawa

⑧しばらく二人で日本語と英語を混ぜこぜにしながら歩いていると、対岸の方からけたたましい、ひび割れたサイレンのような音が聞こえてきた。そのときはじめて僕は川の対岸の存在に気づいた。

2015-09-12 07:56:17
しょのずぁ @sonezawa

⑨霧でぼんやりとしか見えないそこは、家屋なのか工場なのか、とにかく板で均等に押しつぶされたように背の低い建物が並んでいることだけが分かった。

2015-09-12 07:57:13
しょのずぁ @sonezawa

⑩低い建物の中で、そこだけ突き出たやぐらの先に取り付けられた拡声器から流れるそれは、初めはサイレンかと思ったが、すぐに音楽であると気づいた。それは一昔前の、90年代くらいの日本の流行歌だった。

2015-09-12 07:59:18
しょのずぁ @sonezawa

⑪僕は稲垣潤一のあのクリスマスソングかと思ったが、どうやらそれに似た別人の別の曲らしかった。対岸の街では一日中ああいった日本の歌謡曲が放送されているのだと彼女は教えてくれた。

2015-09-12 08:00:59
しょのずぁ @sonezawa

⑫こちらからでもなかなかの大音量で聞こえるそれは、向こう側ではさぞや喧しく鳴っているのだろうと想像したが、そういうこともあるのだろうと不思議には思わなかった。

2015-09-12 08:03:18
しょのずぁ @sonezawa

⑬わずかに途切れた霧の合間から見えた背の低い建物たちの正体、影のように色を失ったそれは、家屋か工場かと思ったが、どうやらその両方らしかった。

2015-09-12 08:09:17
しょのずぁ @sonezawa

朝の連続ツイッター小説『東欧の街』三日目

2015-09-13 09:42:04
しょのずぁ @sonezawa

⑭川を見ながらだったはずが、僕たちはいつの間にかサイレンのような音楽を聞きながら歩くことになっていた。僕は知っている曲が流れると彼女にそれを教えた。逆に僕が知らなくて、彼女だけが知っている曲のときは彼女がそれを僕に教えた。

2015-09-13 09:42:41
しょのずぁ @sonezawa

⑮知らぬ間にけっこうな距離を歩いていたようで、辺りは暗くなりはじめ、土手の道はちょっとした商店街の入り口に差しかかった。その商店街にはゲームセンターがある、と彼女は大げさに眉間にしわを寄せ、わざと皮肉っぽい笑顔を作って教えてくれた。

2015-09-13 09:43:20
しょのずぁ @sonezawa

⑯それはゲームセンターではあるが、僕のイメージするゲームセンターとは違うという意味だろう。商店街の入り口、つまり商店街からしたら最も外れに「それ」はあった。

2015-09-13 09:44:01
しょのずぁ @sonezawa

⑰トタン板でできた小さな平屋。バラックと呼びたくなるそれは、この国で見て来た石造りの建物とは正反対で、まったく国籍を感じさせなかった。赤錆に覆われた小屋の入り口の戸はガラスのはめ込まれた引き戸だったが、曇っていて中の様子は分からない。#朝説

2015-09-13 09:44:46
しょのずぁ @sonezawa

⑱彼女がわざわざその存在を伝えたということは、この中に入ってみようということだろう。僕は木でできた戸に手をかけ、横に引いた。はめこまれたガラスがガラガラと振動する聞き覚えのある音をたてて、見た目からは想像もできないほどそれはスムーズに開いた。#朝説

2015-09-13 09:46:16
しょのずぁ @sonezawa

本日の朝の連続ツイッター小説は作者音信不通のため休載させていただきます

2015-09-14 09:29:56
しょのずぁ @sonezawa

@togaTw 福井県の東尋坊で作者を無事保護しました。ご迷惑をおかけしました

2015-09-14 09:56:53
しょのずぁ @sonezawa

朝の連続ツイッター小説『東欧の街』四日目 #朝説

2015-09-15 10:03:21
しょのずぁ @sonezawa

⑲わずか十畳そこらの広さに対していささか数が多すぎる蛍光灯に照らされた室内は、外観から想像するよりも明るかった。型落ちのものであろうか、古いビデオゲームの筐体が十数台、部屋の中央に四台、あとは四方の壁に沿って置かれていた。#朝説

2015-09-15 10:04:31