「シューティングスター・ヴァーサス・ブリザード」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

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◇K@R@TE Entertainment◇ ◇協賛：COLL@BO Entertainment◇

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「シューティングスター・ヴァーサス・ブリザード」

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「はい、終わりましたよ」声を受け、彼女は目を開く。まず見えたのは巨大な円の中に7つの電球が備えられた手術用ライト。次に、自分を上から覗き込む桃色の髪の女性だ。「ドーモ、明石＝サン」「ドーモ。起きれるかな？」明石は彼女に問う。彼女は、己が横たわっていた手術台から起き上がる。 1

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「艤装との神経接続点検、特に問題なし」明石は手元のフリップボードに何事かを記入しながら言った。「じゃあ、実際に装備して見ようか」「はい」彼女は答え、手術台近くの金属テーブルの上に鎮座する艤装に近づく。船体を模した単装砲付きリュックサック。手持ち式飛行甲板。給油タンク。 2

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彼女はまず給油タンクを手に取り、背負う。給油タンクには『改風見型・速吸』と彫り込まれていた。速吸。それが彼女の名だ。次に、船体型リュックサックの手持ち紐を左肩に。手持ち式飛行甲板の手持ち紐を右肩に。速吸は目を閉じ、そして目を開く。「調子は？」明石が問う。「問題ありません」 3

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速吸は感慨無く答える。特に変わった様子は無い。補給艦として妥当な力のみしか感じない。内心の落胆を隠し、速吸は明石に向き直る。「じゃあ、装備の方付けようか」「はい」明石は小さな艦載機を手渡す。それは翼に日の丸が描かれた深緑の艦上攻撃機。「新型の流星ですか！」速吸は目を輝かせる。 4

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「そうそう！載せれるように調節したんだから」明石はウィンクをし、微笑む。速吸は喜び勇んで流星を飛行甲板のカタパルトに装着した。ドクン…「あれ？」速吸は奇妙な違和感を感じた。「どうしたの？」「今何か」ドクン…ドクン…ドクン！その時！流星が青き光を放つ！FLAAAAAAASH！ 5

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「ンアーッ！？」光と共に放たれたエネルギーを受け、明石は吹き飛び、壁に叩き付けられる！一方の速吸は、明石を気にする余裕すらなかった。流星から膨大な力が流れ込む！「何…コレ！」速吸はその力を恐れなかった。むしろ、心地よさすら感じていた。「これが…私の本当の力！イヤーッ！」 6

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KRAAAASH！おお、見よ！速吸が天に向け拳を突き上げると、天井に大穴が開いた！一体如何なることか！「これ！これ凄い！凄い！ハハハハハハハハ！」速吸は力が齎す高揚感に身を任せ、哄笑する。そして、「イヤーッ！」出口へ向け一目散に駆けていった！ 7

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「これなら…これなら！」速吸は疾走しながら笑う。流星が彼女に齎した力は、彼女のコンプレックスを吹き飛ばした。他の艦娘と比べ、脆弱な己の艤装性能に対するコンプレックスを。吹き飛ばされたコンプレックスはやがて、力の披露の場を、開放の場を求めた。「そうだ」速吸は獣めいて笑う。 8

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彼女の脳裏には、昨日読んだ『鎮守府広報特別総集編』に掲載されていた一人の男が過っていた。『カラテ鍛えるべし』の煽り文と共に、今の速吸のような獣めいた笑みを浮かべた褐色肌にサングラスの男の姿が。「まずは、リカルド！」速吸は疾走するスピードを上げた。「私のカラテ伝説の礎にする！」 9

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「スゥーッ…」昼下がりの鹿屋基地内ドージョー。その中心部にて、一人の男がジュー・ウェアに身を包み、深く呼吸していた。「ハァーッ…」ジュー・ウェアから覗く屈強な筋肉と、褐色肌。髪は古希めいた白髪交じりの黒髪。この鹿屋基地のカラテ嚮導官にして提督の一人、リカルド・ベレンゲル。 11

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窓から入る太陽光のみがドージョー内を照らす。「スゥーッ…ハァーッ…」リカルドは呼吸を続ける。ドージョー内には珍しく人がいない。偶然ではあったが、リカルドには有り難かった。先日の西方海域での一件は、リカルドに更なる精進の必要性を求めていた。戦い続けるにはカラテが足りない。 12

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今一度ベーシック・カラテを磨き直すべし。カラテに乗せるエゴを研ぎ澄ますべし。リカルドは己にそう課した。リカルドはやがて呼吸を止め、カラテを構えた。その時。「たのもーッ！」ドージョー入り口から、威勢のいい声が響く。リカルドは構えを解き、入り口を見た。そこには知らぬ艦娘が居た。 13

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白いジャージと黒いスカートに、艤装を纏った艦娘が、靴を脱ぎリカルドへと歩み寄る。「リカルド提督、ですね」「そうだが？」リカルドは訝しげに、この自信に満ち溢れた少女を見た。やがて艦娘がリカルドの前に立つ。そして両手を合わせ、アイサツした。「ドーモ。改風早型1番艦・速吸です」 14

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「ドーモ。リカルド・ベレンゲルです」リカルドもまたアイサツを返した。だが、その内心ではいまだに疑問が渦巻く。「何の用だ？」リカルドの問いに、速吸は嗤い、堂々と答えた。「ドージョー・ヤブリです！」「何？」リカルドは眉を顰めた。確かに、今このドージョーの看板を預かるのは自分だ。 15

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だが、ドージョー・ヤブリとは如何なることか。このドージョーは権威あるドージョーではなく、只の艦娘のカラテ修練場である。故に本来この世界の住人でないリカルドが看板を任されたのだ。「意味が分からんぞ」「問答無用！」速吸の右腕に、青い光の放流が迸る！「！？」「貴方を、倒します！」 16

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「イヤーッ！」速吸は踏み込み、リカルドに向け光る拳を繰り出す！リカルドは事態が呑み込めぬまま腕を交差させ、防御の構えを取った！KRAAASH！「グワーッ！」おお、見よ！何たることか！3倍以上の体躯差はあろう速吸の拳が、リカルドをドージョーの壁へと吹き飛ばす！ 17

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CRAAASH！速吸の拳の衝撃は、リカルドを壁まで吹き飛ばすだけに飽き足らず、壁を粉砕しリカルドをドージョーの外へと吹き飛ばす！「グワーッ！」「ちょ！？」「何事ですか！」砕かれた壁の外、男女の悲鳴が上がる。リカルドはどうにか空中でウケミを取り、着地する。「何だ、こりゃ」 18

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「いやいや！何だこりゃってこっちの台詞だよ！」砕かれた壁の傍に居た男がリカルドに向け叫ぶ。リカルドは男を見た。額にキョンシーめいた札を貼り付けた奇怪な男だ。リカルドの同僚である。名を葛葵冷士と言う。「何があったのさ！」「ドージョー・ヤブリだとさ」「はい？」葛葵は首を傾げた。 19

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「このドージョーを破るメリットなんてあるの？」葛葵は己と共にいた女性・神通に問いかける。神通は頭を振った。「いいえ、全く」「俺も無いと思ってたんだが、どうやら奴さんは違うらしい」リカルドはカラテを構えた。「イヤーッ！」壁の穴から速吸が飛び出す！その足には靴が履かれていた。 20

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「おや、神通教官もいらっしゃいましたか」速吸は獰猛にカラテを構える。神通は僅かに眉を上げる。「速吸＝サン…？一体何を」「何を、ですか」くつくつと速吸は嗤う。「私は力を手に入れました。最強の力を」速吸の右拳に再び青い光が迸る。神通はカラテを構えた。「最強…？」 21

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「そう、最強です！現に今、そこのリカルド提督を吹き飛ばして見せました！」速吸は獰猛な目で神通を見た。「私は証明します…私の力を！カラテを！貴女達カラテ強者を倒すことで！」「成程」「！？」速吸は瞬時に5連続右側転回避！そして、己の背後に居た闖入者を見た。「面白い戯言です」 22