韓国での甲状腺癌診断増加は検診による過剰診断(のみ)なのか?

韓国での甲状腺癌診断増加は検診による過剰診断(のみ)なのか? Cyborg001さんによるNATROM先生への異議
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cyborg001 @cyborg0012

NATROM氏が私を3回もブログで論敵として取り上げて下さっている。光栄である。しかし、彼の異常ともいえる執着心の原因を考えると、少し深刻である。彼は議論の弱点を突かれていることが分かっていながら、それを素直に直視できない。正直乗り気ではないが、少しまとめて反論したいと思う。

2015-09-22 16:16:13
cyborg001 @cyborg0012

まず、NATROM氏の主張を見てみよう。表面的には分かりやすい主張である。①韓国では検診で甲状腺癌が急増した。②しかし、死亡率に変化がない。③よって増加した癌の大半は過剰診断に違いない。④エコー検査は益よりも害が大きい。止めるべきだ。 pic.twitter.com/e57o18DeUL

2015-09-22 16:17:03
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cyborg001 @cyborg0012

ある点まではNATROM氏に賛成である。韓国の癌急増の一部は過剰診断が原因であろう。他方で、検診の成果である「早期発見による予後改善ベネフィット」を示唆する報告も多数ある。彼はこのベネフィットをほぼ全面否定する。この論点が「論争的であること」さえも拒絶する。極めて独断的である。

2015-09-22 16:18:08
cyborg001 @cyborg0012

NATROM氏@NATROMは自分の見解には「一流誌の論文」のお墨つきを得ていると「自信たっぷり」である。ランセット、NEJMである。まずはこれらの議論を確認したい。 pic.twitter.com/qtiw3Vqt5v

2015-09-22 16:19:57
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cyborg001 @cyborg0012

『ランセット』ペーパーは「韓国では近年甲状腺癌が増加したが、死亡率に変化がない」とし、その原因を「過剰診断」に求める。しかし、強い口調で「甲状腺エコー検査の害」をアピールするものの、死亡率データの記載はなく、分析の跡すらない。 pic.twitter.com/X5eMS2nPzn

2015-09-22 16:21:16
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cyborg001 @cyborg0012

NEJMペーパも同様である。『ランセット』と同様に、「死亡率は安定している」とし、過剰診断論を展開している。しかし、同じく死亡率データの詳細な記載はなく、死亡率に関する分析をほぼ全面的にネグレクトしている。 pic.twitter.com/0l8BaJckvI

2015-09-22 16:23:13
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cyborg001 @cyborg0012

このように、ナトロム氏@NATROM が誇る「一流誌の論文」は、死亡率の分析をほぼ全面的にネグリながらも、きわめて独断的に「死亡率は一定=過剰診断」との結論を導いている。

2015-09-22 16:25:22
cyborg001 @cyborg0012

さらに、NATROM氏は『ランセット』ペーパーを「論文」と呼んでいるが、実際の発表形式はcorrespondenceであり、「論文」(article)ではない。実践的提言だけのページ1枚のレターである。彼一流の細かいミスリードである。 pic.twitter.com/Jp7zwwe8pB

2015-09-22 16:30:10
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cyborg001 @cyborg0012

それでは、「韓国では検診で甲状腺癌が増えたが、死亡率に変化なし」という命題は本当に正しいのだろうか?この点の考察には、死亡率に焦点をあてた論文をレヴューするのが不可欠である。『ランセット』等が役不足であることは繰り返すまでもない。

2015-09-22 16:32:30
cyborg001 @cyborg0012

2014年11月に『内分泌代謝雑誌』に掲載されたY. M. Choi et al. 2014は、「初めて韓国甲状腺癌の死亡率に焦点を当てた論文」であり、韓国統計局、WHO、ISS人口統計を使用して1985年から2010年までの年齢調整死亡率を分析したものである。

2015-09-22 16:35:06
cyborg001 @cyborg0012

この論文(Choi et al. 2014)は、①甲状腺検診が始まるまでの15年間死亡率が3倍増加していた、②しかし、2000年代以降は減少に転じている、このように分析、結論付けている。以下図のグラフが分かりやすい。 pic.twitter.com/YdXlDPymq8

2015-09-22 16:36:59
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cyborg001 @cyborg0012

こうした分析から、Choiらは過剰診断論を退け、「韓国の甲状腺癌増加は、何らかの暴露要因等によって発生した本物の増加の可能性」を指摘している。 pic.twitter.com/tpMtqWAmPL

2015-09-22 16:39:25
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cyborg001 @cyborg0012

また、Choi らは「現在のところ厳密な原因は不明」と断りながらも、「エコー検査による早期発見が2000年代以降の死亡率低下に寄与した可能性」を指摘している。これはNATROM氏の議論を本質的な点で破綻させる「不都合な可能性」である。 pic.twitter.com/6JXrZsc2tZ

2015-09-22 16:41:29
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cyborg001 @cyborg0012

NATROM氏はこの論文に対して、「5年間隔のデータ」で分析しており「信用できない」と無視し続けている。それでも、5年相対生存率も一貫して改善傾向にあり、さらに男女ともに同傾向を示している点は無視できるだろうか? pic.twitter.com/Qr2K1YcvVS

2015-09-22 16:45:05
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このChoi et al 2014論文をNATROM氏はご存じなかったのだろう。@Sivadさんらがこれを取り上げたことで、彼は自分の議論の本質的部分が攻撃されたと感じ、急いで死亡率の具体的データを探し始めたようである。

2015-09-22 16:46:04
cyborg001 @cyborg0012

NATRON氏が探してきたのが以下図である(ちなみに、出典は死亡率を分析した論文ではない)。しかし、この図、本質的にはChoi論文と変わらない。2000年代以降、男女ともに観察死亡率が期待死亡率を下回っているからである。 pic.twitter.com/3zvlB1mKLR

2015-09-22 16:47:41
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cyborg001 @cyborg0012

さらに、ソウル国立大学医学部の臨床論文でも「エコー検査が生命予後や再発予後の改善」に寄与した可能性を指摘する具体的な報告がある(1962年から2009年までの臨床例)。たしかに、近年になるほど劇的な予後改善が見て取れる。 pic.twitter.com/O7aN3sxOar

2015-09-22 16:49:37
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cyborg001 @cyborg0012

また、同論文は、「検査能力の向上で微小癌が急増しながら、リンパ転移や浸潤の割合が予想されたほど低下していない点」を指摘する。筆者たちは慎重であるが、過剰診断論では説明がつかない重要論点であろう。 pic.twitter.com/jHJCZBvouU

2015-09-22 16:51:31
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cyborg001 @cyborg0012

最後に、ナトルム氏@NATROM の議論を根本から覆す論文を挙げておきたい。彼が無視し続けている論文の一つ、G.H.Chung et al. 2014である。 synapse.koreamed.org/Synapse/Data/P…

2015-09-22 16:52:48
cyborg001 @cyborg0012

G.H.Chungらは、 ①「多くの専門家」は韓国の癌増加について「過剰診断論」を採用してはいない ② 過剰診断論は説明不足であり、他の原因を探すべきである この二点を強く主張している。 pic.twitter.com/fOWB6R1R1p

2015-09-22 16:56:32
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cyborg001 @cyborg0012

G. H. Chungらの根拠の一つは、「韓国では成人だけでなく子どもでも甲状腺癌が急増している」というcrucialな事実である。小児患者は直近10年で2.5倍に増加している。その大半は検診を受けていない。NATROM氏が無視し続ける極めて重要な論点である。

2015-09-22 16:59:51
cyborg001 @cyborg0012

韓国で近年甲状腺癌が急増した主要理由として、Chungらは、①遺伝的要因(とくにBRAF変異)、②過剰なヨウ素摂取、③医療被曝の増加、④肥満の増加、を挙げている。おそらく、過剰診断論一本やりの方々はこうした複合要因を「些細なもの」として無視するだろう。

2015-09-22 17:01:16
cyborg001 @cyborg0012

さらに、Chungらは「エコー検査は害が多く、止めるべきだ」との乱暴な提言に警鐘を鳴らしている。当然であろう。韓国甲状腺学会やNECAは「エコー検査を推奨すべきか、反対すべきかを判断する十分なエビデンスは存在しない」としているからだ。 pic.twitter.com/KtPIdj6anc

2015-09-22 17:04:50
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cyborg001 @cyborg0012

言い換えると、韓国の有力な研究機関は「過剰診断の害も、検診のベネフィットも、ともにエビデンスでは証明されていない」という立場に立ち、テーマの「論争性」を積極的に認めているのである。NATROM氏はこれにどう答えるつもりだろうか?

2015-09-22 17:06:00
cyborg001 @cyborg0012

ちなみに、私はChoi et al 2014を検診のベネフィットを示唆するエビデンスの一つとして見ているが、これが否定されるとしても困らない。テーマの「論争性」を受け入れること、この慎重な態度こそが、議論をする上でも、人の健康に配慮する上でも何よりも重要だと考えるからだ。

2015-09-22 17:09:56