意識の神経相関(NCC: Neural Correlates of Consciousness)研究の現状
- HirokiMori
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@kanair 「個性のわかる脳科学」 読了しました。「意識の探求」から少し時間が経ちましたが、現在NCCはどういうものだと結論づけられているのでしょうか。また「メタ認知」と「主観的感覚」にはどの程度の相関があるのでしょうか。
2011-01-09 16:14:29@dhtanaka 感想と質問ありがとう。NCCがどう行き詰ったのかについて、もっと説明があった方がよかったかもしれませんね。後で時間のある時に、NCCとメタ認知についてツイートします。
2011-01-09 20:59:10いまから、NCCについてまとめて書こうと思う。全部一回で書けるかわからないけど、終わらなかったら次回に続くということで。
2011-01-10 01:19:54まず、NCCについて考えるときに、state of consciousnessとcontents of consciousnessを分けて考えた方がいい。stateっていうのは、寝てるときとか昏睡状態では意識がないけど、起きているときには意識がある。
2011-01-10 01:21:21その意識がある状態を作り出すのに重要な脳活動と脳部位は何なのか。化学物質の状態はどうなのか。覚醒状態というのは、意識を持つ上で必要な状態だから、その面から意識と脳の関係を考えるというアプローチがある。
2011-01-10 01:23:18Steve Laureysの研究とか、TononiのIITとかはこの問題に言及している。「意識の探求」ではNCCeと呼んでenabling factorであって、NCCそのものではないという扱いにもなっている。
2011-01-10 01:24:44contents of consciousnessというのは、主に視覚刺激とかの感覚情報が処理されて、意識に上って、顔や赤い車だと意識できるという意味での意識。主にNCCの研究は、この知覚として意識に上ったときにどのような脳活動がおきるのかを調べることに従事してきた。
2011-01-10 01:26:57ただし、個人的にはstate of consciousnessとcontents of consciousnessが完全に区別できるのかは難しい問題だと思う。概念的には区別できるけど、double dissociationが起きるかどうかは不明。
2011-01-10 01:28:08contents of consciousnessのNCCを探す方法として、入力刺激を一定にしたまま、主観的な知覚内容が変化する状況で、脳活動をみるというやり方が王道と考えられていた。そのためにbinocular rivalryなどが盛んに用いられた。
2011-01-10 01:31:19NCC研究の初期の仮説は、行動の計画に情報が使われることが大事だということから、prefrontalに投射のある部位が意識にのぼるという、V1仮説というのがあった。http://bit.ly/g28y2Z
2011-01-10 01:33:33そのあとのbinocular rivalry中の電気整理で、低次の視覚野はあまり主観的知覚と対応せずに、高次に行くほどより対応しているというデータがでてきた。http://bit.ly/hItlr7
2011-01-10 01:35:41他にも、psychophysicsで意識に上らない刺激でも、orientationの処理をしていている状況などが発見されて、ますますV1は意識に必要ないという考えは強まった。http://bit.ly/fiqwBE
2011-01-10 01:38:39一方で、イメージングではV1の活動が対応しているというデータがでてきた。それどころか、その前のLGNですら意識に相関した活動を示している。http://bit.ly/fIOWN0 http://bit.ly/fziUuS http://bit.ly/h4t6Fg
2011-01-10 01:41:29この辺は、スパイクとBOLDで見ているものが違うからという問題もあるし、これはイメージング全般の問題でもある。http://bit.ly/dSjsSf http://bit.ly/e2I6r3 http://bit.ly/gLOHk6
2011-01-10 01:46:26V1の電気整理だと、Lammeの研究でV1のlate activityが意識に相関してそうだというデータがでた。これでもやっぱり、かなり初期の部位でもNCCになっている。http://bit.ly/h9XLBP
2011-01-10 01:50:29リンクをつけた分は代表的なものだけで、とても網羅はしてないけど、それぞれについて同じ結論の論文も、メソッド的な反論もある。
2011-01-10 01:52:17ここまでの話は、どれだけ初期段階で意識の内容と脳活動が相関し始めるのかという話。逆のアプローチは、どれまで高次な部位が無意識の刺激に対して活動するかを調べる方法がある。
2011-01-10 01:54:11Hakwanの研究で、見えない刺激でタスクのインストラクションを与えても、prefrontalまでたどりついてるというデータがある。http://bit.ly/fEWO27
2011-01-10 01:57:43この手のNCCを場所として探した研究例は大量にあるが、結論としては単純に脳のどこかの部位が活動したから意識に上ったといえるようなものではないとうことがわかってきた。
2011-01-10 02:01:13ちなみに、rivalryとかを使ったNCCの研究はattentionとawarenessを分けていないことがほとんど。でも、実験的に分離できるようになったのはまだつい最近。http://bit.ly/i3fCnU http://bit.ly/eT4pE6
2011-01-10 02:04:30部位という単純な考えから進んで、feedbackとか情報の統合global workspaceなんかの考えもできて、特定の場所というよりも部位間のダイナミクスがNCCだろうという仮説がでてきた。http://bit.ly/eLCMNC http://bit.ly/hdOoFl
2011-01-10 02:09:30感覚情報をもっている視覚野などが、prefrontalとコミュニケーションしている状態がNCCだと示唆するデータも若干でてきている。http://bit.ly/iaCvIe
2011-01-10 02:12:11