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NJSLYR / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
【マスカレイド・オブ・ニンジャ】#4
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夏の日、彼は小高い丘の上に座ってハナビめいた火花を眺めていた。それは空に咲く極彩色のハナビではなく、巨大装甲ブルドーザーによって踏みつぶされた家屋や放置UNIXがしばしば上げる火花であった。誰も抵抗する者はなく、それは静かに、淡々と進行していった。 1
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幼いヤマガタの隣には父親が、周囲には町の住民がいた。オムラ社の強引な敷地買収により、彼らはカネを渡され、立ち退くことになったのだ。一帯はレジャーランドとして生まれ変わる。その夜が、ストリートとのお別れの日だった。ヤマガタはまだ幼く、何故引っ越さねばならぬのか理解できなかった。 2
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TV番組で見ていたヒーローは助けに来なかったどころか、レジャーランドのマスコットのひとつとして、敷地の回りを覆う高い鋼鉄フェンスに大きく印刷され「期待重点!」の台詞とともにガッツポーズを作っていた。横にはヤマガタの見覚えのあるマークがあった。番組の提供はオムラ社だったからだ。 3
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「悪者をカラテで殴って解決する問題じゃねえのさ」父親は安ブランデーをあおりながら静かに言った。「ヒーローはよ、株券とか持ってねえんだ」「……」ヤマガタは何故か涙ぐんでいた。地上げの意味も株券の意味も解っていない。ただ、彼の好きなヒーローをバカにされた気がしたからだ。それだけだ。4
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「ヤマガタ=サン?ヤマガタ=サン?お客様みたいドスエ」ゲイシャの声。「アイエッ!?」古い夢から引き戻されたアクションスターは、椅子の上で体を震わせ、無意識のうちにカンフー・カラテを構えた。「アイエエエエエエ!」出番に備えマッサージをしていた美容師ゲイシャが驚き、腰を抜かした。 6
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「フウーッ、夢か」ヤマガタは息をつき、苦笑し合いながら美容師ゲイシャを助け起こした。目の前の鏡には、完璧にメイクされた見慣れない顔があった。華やかなステージに立つ時はメイクが濃い。それはあまり好きではないが、仕事は仕事だ。「控え室まで客だって?」「ヤサキ=サンという方ドスエ」 7
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「ちょっと外してくれるか?」「有名な方ドスエ?」「ああ」ヤマガタは椅子を立ち、出迎えの姿勢を取った。ゲイシャと入れ違いに、使いこまれた茶色の革ブルゾンを着込んだ歳上の男が入ってきた。ヤマガタとヤサキは笑顔で握手を交わした。「ドーモ」「ドーモ」ヤサキの髪には白髪が増えている。 8
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「引退する事になってな。お前のおかげで廃業さ」ヤサキは笑った。彼は新人時代の目標にしてライバルだった男だ。成功したリメイク映画『タケシコップ・マッポリヴェンジ』の印象深い悪役、暗殺者トウゼンはヤサキ=サンの最大の当たり役だったが、その後はジェット・ヤマガタが一気に追い抜いた。 9
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「本当に?」ヤマガタは息を吐いた。過酷な世界だ。成功の椅子は限られている。だが当事者たちの間には奇妙なユウジョウが存在するものだ。ヤサキは相手の背中を叩いた。「俺を追い抜いた男が、景気の悪い顔を作るな。いつもの憎まれ口はどうした?リウ=ベイみたいに挑発的に手招きしてみろよ」 10
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「よし」ヤマガタは無慈悲なるリウ・ベイの顔を作り、体を回すように大きく振ってから、手招きの姿勢を取った。「口程にもない、暗殺者トウゼンのカラテも地に落ちたか?」「言ったな」ヤサキは不敵に笑み、カラテを構えステップを刻んだ。ヤマガタは察した。「おい、本気で?」「ああ、やろうぜ」11
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「ハイヤーッ!」「イヤーッ!」たちまち映画のワンシーンめいたやり取り!控え室は広く、他の出演者は誰も残っていない。ほんのお遊びと思っていたが、ヤサキの鋭い回し蹴りはヤマガタの頬をかすめた。「おい、俺は次の出演だぞ?」「アザができたら、その女みたいな化粧を厚くしてもらえよ!」 12
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「ハッ!ハッ!ハイヤーッ!」椅子を飛び越え、花輪を倒し、ワン・インチ距離での攻防。肘の一撃を互いに繰り出し、防ぎ合う。「イヤーッ!」ヤサキの膝蹴りが鳩尾に決まった。「グワーッ!?」目を剥き後ずさるヤマガタ。「イイイヤアアアーーッ!」そこへヒサツ・ワザじみたヤサキの回し蹴り! 13
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「ハッ!ハッ!ハイヤーッ!」椅子を飛び越え、花輪を倒し、ワン・インチ距離での攻防。肘の一撃を互いに繰り出し、防ぎ合う。「イヤーッ!」ヤサキの膝蹴りが鳩尾に決まった。「グワーッ!?」目を剥き後ずさるヤマガタ。「イイイヤアアアーーッ!」そこへヒサツ・ワザじみたヤサキの回し蹴り! 13
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むろん、ここまでヤマガタは手心を加え続けていた。人間の振りを続けていた。だが膝蹴りを受けた彼の目が一瞬、内なるニンジャソウルを反映するように、鋭くなった。「ハイヤーッ!」彼はヤサキの蹴りをブロック。抱え込んで一本足立ちにすると、即座に鉄槌めいた裏拳を敵の顔面へ振り降ろした。 14
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「グワーッ!」ヤサキは苦悶の表情を浮かべ、目を閉じる。そして再び目を開けると……裏拳は彼の鼻先で寸止めされていた。「俺はリウ・ベイじゃないから、命までは取らないぞ」ヤマガタは笑った。だがヤサキは苦痛に顔を歪め、首を振る。「カット!カット!」打撃は加えられていないのに何故か? 15
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ヤマガタはすぐに察し、ホールドした片足を離してやった。彼がニンジャの怪力で押さえたわけではない。ヤサキが、老いたのだ。彼はばつの悪そうな顔を作って、腰をたたいて笑った。「アイテテテ…この通り、情けねえもんさ。俺の引退は、お前の仕事とは実際無関係。足腰にガタがきちまったんだ」 16
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「去年、サッキョー・ラインの屋根の上で撮影中に事故を起こしたと聞いてたが……そんなに深刻だったのか?」ヤマガタは思いがけぬショックに打たれていた。アクション俳優の寿命は突然やってくる。誰もが知っている、無慈悲な現実だ。人間である限り、誰も逃れられはしない。人間である限りは。 17
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ヤサキは苦笑いを浮かべながら、体をひねって腰骨を鳴らし椅子に座った。「……映画なら、こんなシーンは上映されないよな。監督がメガホンでこう叫ぶ。『カット!』そこで終わり。美女を抱き抱え、仲間たちに祝福され、華々しいエンディング。だが実は人生はまだ途中。そこでカットしただけだ」 18
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ヤマガタは問うた。「引退した後はどうする?」「俺からアクションを取ったら、何も残らんさ。過去の栄光も霞んだ。駐車場の警備員でもやるか、中国地方にでも引っ越すか……まあ何か考える。家族を食わせにゃならんからな」彼には子供が2人いる。「多少は蓄えもある。だが、そんな事よりもだ」 19
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「……そんな事よりも?」ヤマガタは身構えるような、複雑な表情を作った。ヤサキは彼の不安げな目を見て、吹き出すように哄笑した。「そんな事よりなあ、景気のいい話をしようぜって事さ!いいか、こんちくしょうめ、お前は俺を追い抜いた男だ!そしてアクションスターになろうとしてる!」 20
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「いいか、お前のアクション!」ヤサキは指差し、続けた。「お前のアクトにはアクションの神が宿ってる!ジーザス最新作を試写で見た時、俺はそう確信した!いや、正直に言うと……もっと何年も前からだ!ああ、こいつは俺を越えて、とんでもないアクターになるぞ!俺の生存本能が警告してた!」 21
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2015年10月3日
マスカレイド・オブ・ニンジャ #1 http://togetter.com/li/865542 マスカレイド・オブ・ニンジャ #5 http://togetter.com/li/881742
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