黄昏町(柊)五十五日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【五十五日目】 【魂15/力13/探索5】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、触角(探索+2) #hollytk

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[ハンドアウト]時刻を告げるチャイムが廊下に響き、君は意識を浮上させる。時計はいつまでも、午後6時6分を示したままだ。《開始地点[学校]shindanmaker.com/541542》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541552 #hollytk

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キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。 どこか懐かしいチャイムの音が、授業の終わりを告げている。 私は顔を上げる。教室の最前列で堂々と寝ていても、ここには叱る教師も茶化す友人もいない。 ……まあ、町の外にも友人なんていないのだが。 01 #hollytk

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「そう考えると、寂しい人生ですよねえ」 ユキがいた頃は、特になんとも思わなかったのだが。 ふと壁にかけられた時計を見ると、六時五分過ぎで長針が止まっている。 止まった時計。止まった時間。 私は教室を出て、町へ帰ることにした。 02 #hollytk

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町へ帰る、という響きに一人でクスリと含み笑う。 あの黄昏に染まった町は、すっかり私にとっての帰る場所なのだ。 「帰りましょう、帰りましょう。あの町に帰りましょう」 ぼんやりと思いついた自作の歌を歌いながら、草ぼうぼうの校庭に出る。 03 #hollytk

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草が風に揺れる音、何かの羽ばたく音、校舎の木張りの廊下を誰かが走る足音。 なぜだか、普段よりもよく聞こえる。 私は目にかかった前髪を払おうとして、その感触に思わず手を引っ込める。 そっと手に取った前髪は、一房だけが黄色い触角に変わっていた。 04 #hollytk

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蛾のように枝別れしたそれは、柔らかくてフワフワしている。どうやらこれが、周囲の音を感じ取っているようだ。 「これはまた、変わり種だ」 神経が通っているからには、千切れたら痛いのだろう。大切にしよう。 さて、と校門へ向き直った私の背中を、猛烈な衝撃が襲う。 05 #hollytk

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「ゲ………ッホ…………!?」 フェンスに叩きつけられた私は、崩れ落ちながら後ろを振り返る。 目に飛び込んできたのは、裾の破れた浴衣。鮮やかなアイヌ風の紋様が土埃に汚れている。 そして風に逆らって蠢く白い髪と、私を見つめる縦長の瞳。 「巳穂……？」 06 #hollytk

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「ぼやぼやしていると死にますよ…………って、貴方様は!?」 「ああ、やっぱり巳穂でしたか！久しぶりですね！」 「ええ、本当に。本当に……お久しぶりです」 巳穂は瞳を僅かに潤ませ、喜びを滲ませる。 「でも巳穂、君は縁日に…」 私の言葉を、突然の咆哮が遮る。 07 #hollytk

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「貴方様、お怪我はありませんか」 「ああ、問題ない。私を吹き飛ばしたのは」 「私です。アレが突撃するのが見えたので咄嗟に…貴方様とは気付かず、ごめんなさい」 「いや、助かったよ。さて」 私と巳穂は眼前の、少し大きな竜に向き直る。 「解剖の時間だ」 08 #hollytk

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竜が吼え、体をくねらせながらこちらに迫る。 私は足元の小石を拾い上げ、左腕の全力で投げる。 「グァアアァァア！」 竜の右目へ飛んだ小石は角から放たれた雷に砕かれ、竜は私一人を目標に定める。 「貴方様!?」 「大丈夫だ！しばらく時間を稼ぐ！」 09 #hollytk

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巳穂に叫んだ私は、全力の逃走を開始した。 錆びたジャングルジムをくぐり抜ける。 ついでに鉄の棒を数本もぎ取り、振り向きざまに投げつけた。 しかし竜は角の一振りで全てを防ぎ、返す刀でジャングルジムを吹き飛ばした。 今度は私が、飛んでくる破片を尾で叩き落とす。 10 #hollytk

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私は校庭を横切り、渡り廊下の下を駆け抜けながら考える。 あの竜は成体だ。いままで私が戦っていたのは幼体、子供だったのだ。 いや、それはどうでもいい。まだ想像の範囲内だ。 なぜここに、縁日で占いをしているはずの巳穂がいる？ 全くもって想定外だ。 11 #hollytk

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しかしまあいい。これだけ時間を稼げば、彼女もどうにか逃げおおせるだろう。 後は竜が死ぬか私が死ぬか、二つに一つ。 私は少しだけ、走る速度を緩める。ごうごうという竜の吐息が近づく。 引き付け、引き付け、十分に引き付けたところで……私は振り返り、立ち止まる。 12 #hollytk

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そして振り返った勢いそのままに、竜の鼻っ面に左の拳を叩き込んだ。 竜の力と鬼の力が拮抗し、周囲の校舎がビリビリと震える。 「ぬおおおおお…」 「グルルルルル…」 足元が陥没する。竜の鼻に拳がめり込み、竜が呻き声を上げる。 13 #hollytk

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このままでは膠着状態だ。竜も突進の勢いを保つのに必死で尾を使った攻撃を繰り出してくる気配はないが、私も拳を引いたり右腕で追撃する余裕はない。 さて、次の一手だ。私の竜尾が伸びる。 最大限に伸びきった尾が掴んだのは、屋上に設置された貯水槽。 14 #hollytk

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私は穴を開けてしまわないように細心の注意を払いながら、貯水槽を傾けていく。 支える鉄骨を少しずつ、慎重に歪ませる。 その間も左腕は竜と力比べを続けている。強度で竜に劣る私の体が、各所で軋みを上げる。 15 #hollytk

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「グオォォォォォオオ……」 「もう少しだけ、待ってくれませんかねえ」 私の体の限界を知ってか知らずか、竜が勢いを増す。 そして数秒後、竜の脳天に巨大な貯水槽が直撃した。 16 #hollytk

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悲鳴を上げることも出来ずに崩れ落ちた竜の脳天に、左拳を叩き込んで止めを刺した私は手近な校舎の壁にもたれかかる。 長い長い溜息を吐き出した私は、ふと顔を上げる。 「……何故、私を置き去りにしたのですか」 顔を顰めた巳穂が、私の前に立っていた。 17 #hollytk

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「巳穂、逃げていなかったのですね」 ずっと縁日にいた彼女に、ここは危険だ。 「逃げませんよ、私は」 巳穂は浴衣の土埃を払って、私の隣に立った。裂けた浴衣の裾から覗く、優美な尾が揺れる。 「私は貴方様についていくと、そう決めたのですから」 18 #hollytk

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「しかし……私と行動を共にするのも、危険だ」 「その程度は覚悟していますわ」 「バケモノからは守れるが、人間相手に巳穂を守り切れる自信は」「いい加減にしてください」 私の言葉を遮って、竜尾が私を壁に押し付ける。 「私を、あの小娘と一緒にしないで下さいませ」 19 #hollytk

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彼女の額から二本の角が飛び出す。日本刀に似た輝きを放つそれは額から上へ湾曲し、その後斜め前へと方向を変え伸びている。 しゃらん、と涼しげな音を立てて伸びたそれを私の首筋に当てながら、巳穂は鋭い牙を剥き出しにして言う。 「これでもまだ、私にお守りが必要と？」 20 #hollytk

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私はもう一度、大きな溜息をつく。 「仕方ない。いいですよ」 断る理由もない。巳穂がそうしたいというのなら、好きにさせてやろう。 「ありがとうございます。それでは」 巳穂は角を縮めると、私に抱きつく。 「これからよろしくお願いしますね、貴方様！」 21 #hollytk

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──────── 【五十五日目】 【生存】 【魂±0】 【魂15/力13/探索5】 【異形】複口(力+2、探索+1)、長指(力+1、探索+2)、鬼腕(力+5)、竜尾(力+5)、触角(探索+2) 22 #hollytk

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[学校]振り返る間も与えず、巨大な尾が君をフェンスへ叩きつける。《力6以上で竜に勝利【異形『竜尾(力+5)』を入手し[町/説明文参照]へ移動(診断は翌日から)】、力5以下は死亡【魂-2】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541542 #hollytk