宮廷歌手小森輝彦さんのツイートまとめ第13回「東京二期会オペラ劇場「ダナエの愛」稽古所感」

日本人初ドイツ宮廷歌手、小森輝彦さんのツイートまとめです。
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小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

昨日は、オペラ「ダナエの愛」のオケ合わせでした。すごいオーケストレーション、すごいマエストロ。すごい稽古でした。 しかしこの美しさ、ちょっと不謹慎なのではないだろうか、という感じです。準・メルクルさんの稽古の仕方がまたすごくて。こんなに楽しくて良いのだろうか。

2015-09-26 10:50:01
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

「ダナエの愛」やはり指輪との関連をあらためて感じる。学術的分析はしてい(出来)ないのですが。2幕の幕切れは、もうブリュンヒルデを追いかけるヴォータンそのものと思います。あっち(ヴォータン)が追いかけるのに対しユピテルが「遠くに留まる」と宣言するのは好対照。意識されてる感じがする。

2015-09-26 11:01:37
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

メルクルさんも3幕5場をヴォータン、ジークリンデとおっしゃっていたことは既に書いた通りですが、ここがまた泣けるのです。弦からのモチーフでダナエがユピテルに勧める「貧しいロバ追いの差し出す水」の箇所。深作さんのおっしゃる「小さな愛」に満ちている。美しい。

2015-09-26 11:04:20
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

ヴォータンの悩み、ユピテルの悩み、これは結局同じ事なんですね。二人ともとんでもない頻度で浮気をしてあちこちで子供を作っているわけなんだけど。神としての成熟、人間(下界)への愛。この乖離を受け容れられず、引き裂かれそうになる。でも彼は主神なので引き裂かれない。心だけが引き裂かれる。

2015-09-26 11:06:10
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

ユピテルがしかし神としての自尊心を捨てきれないからこそミダスを蔑もうとする部分がある。そこを心の中からとかしていくのがダナエの愛。小さな愛。 大きければ良いってもんじゃない。大は小を兼ねない事がある。タイトルロールは「ダナエ」ではなく、この小さな「ダナエの愛」。みんなを振り回す。

2015-09-26 11:08:36
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

昨日のオケ合わせで色々とまた気付いたことも多かった。東京フィルハーモニー交響楽団の皆さんの素晴らしい演奏でこのオペラを届けることが出来るのは本当に嬉しい。 黄金に言及されるときのチェレスタの効果的なこと! しかし・・・もうさんざん言ってますけど、本当に転調が多いです。

2015-09-26 11:10:52
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

メルクルさん、僕は汗を殆どかかないタイプの指揮者では、と思っていたが大間違い。流麗で的確、冷静な棒は予想通りだったけど、すごく汗をかかれて、体の芯から音を引っ張り出している感じでした。でもあの軽快さが6時間(休憩はありますが)の稽古の中で全く失せないのは一体どういうわけだろう。

2015-09-26 11:13:09
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

長いオペラだし、内容も濃い。オーケストレーションも複雑。普通に考えたらあの何倍も稽古時間がいりそうなのだが、メルクルさんの指示は極めて的確で無駄がなく、でもリラックスした語感から繰り出されるので演奏者は緊張せずに音楽と接することが出来る。すごい方だと思う。

2015-09-26 11:14:46
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

時々、「次の音、ビブラーティッシモ!」なって仰って、それで即座に反応する東フィルの皆さん。途端にそのフレーズの存在感が3倍以上に膨れ上がる。目の前でマジックの連続で唖然。 日本語も織り交ぜて、殆どの方とは英語で、僕とはドイツ語で、ダナエの林正子さんとはフランス語。かっちょいいなぁ

2015-09-26 11:17:24
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

メルクルさんの指示で、特に印象的だったのは「R.シュトラウスはフレーズの重心に向かってクレッシェンドは書くけれどディミヌエンドは書かない。これは僕らでやらないとね」と。なるほど。 R.シュトラウスの作品を沢山やってると仰ってましたが、積もった経験からしか出来ないアドバイスですね。

2015-09-26 11:19:42
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

今気がついたのですが、この深作さんのいう「大きな愛」と「小さな愛」。ダナエが選択したのは小さな愛。 この対比は、僕が大好きなR.シュトラウスの歌曲「Einerlei(変わらぬ事)」に、そのまんまの形で示されている対比。Einerleiはポジティブに使われることが少ない言葉ですが。

2015-09-26 11:22:14
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

「Einerlei」変わらないはずの彼女の唇、口づけ、眼差しの中に、どんなに多彩なものが含まれているか。それがこの歌曲の要旨…いや実はもっと色々あるが140字ではちょっと…ダナエも貧しいシンプルな、しかし愛に満ちた生活の中に深さを見た訳ですね。言葉にすると安いですが。

2015-09-26 11:25:21
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

人のことばっかり書いちゃいますが、ユピテル、非常に楽しんでいます。ハードルは高かったですが、その分喜びも大きい。オケ合わせで本当に至福の極致に達してしまった。こんなに楽しいことが世の中にあって良いのだろうか。

2015-09-26 11:27:35
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

自分が歌う事に関して言うと、いまタイミングが「オケ時間」になって、旋律をストレッチする余地が多くなった。メルクルさんもそうなるよと仰ってましたが、他のオペラよりその余地の価値が高い。ここぞというところでAussingen。もうこれ、たまりません。美の極致の転調の波の上で波乗り。

2015-09-26 11:29:44
小森輝彦 Teruhiko Komori @TeruhikoKomori

時間性の中では3+2が4の中に収まったり、2+2なのに6くらいになっちゃったりとか、こういうのが音楽の面白い部分の一つ。もちろん便宜上の拍節はあるし、音楽の枠は守られるべき。シュトラウスのメロディーが「もっと引っ張って下さい、私を」と言う時は、引っ張らない訳には行かないです。はい

2015-09-26 11:32:35