夏目漱石が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したという伝説について

まとめました。
人文 デマ アイ・ラブ・ユー 夏目漱石 都市伝説 I LOVE YOU
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INOHARA Tohru @tukinoha2
漱石が「I Love You」を「月が綺麗ですね」と訳したという話、ほぼ確実にデマなのだけど、だれがそんなことを言い出したのかというのが気になる。どうも1970年代にはすでに言われていたらしい。
INOHARA Tohru @tukinoha2
口伝だけで100年前の発言は残らないだろう。漱石が言ったというなら、近い時代に誰かが書き留めていないといけない。
INOHARA Tohru @tukinoha2
漱石が本当に「月が綺麗ですね」と言った可能性については、英語教師としての漱石を論じた諸著作にも出てこないあたり、否定してもよいだろう。crd.ndl.go.jp/reference/modu…
INOHARA Tohru @tukinoha2
こちらのサイトによるとniguruta.web.fc2.com/kensyo_kirei.h…、1970年代から80年代にはすでに「漱石がI Love Youを翻訳した」という話が確認される。しかもそれは「有名な話」だというのだから、この話の成立はさらに前、ということになるのだろう。
INOHARA Tohru @tukinoha2
ただし、この時点では「漱石はI Love Youを『月がとっても青いから(or青いなぁ)』と訳した」となっていて、現在伝わっている訳文とは異なっている。これと関係があるかは不明だが、「月がとっても青いから」は1950年代のヒットソングである。
INOHARA Tohru @tukinoha2
この歌は「月がとっても青いから 遠廻りして帰ろう」という恋愛の機微を歌ったもので、I Love Youを「月がとっても青いから」と訳すのは、むしろこの歌を背景にしているのではないだろうか。
INOHARA Tohru @tukinoha2
「月がとっても青いから」についてはwikipediaの記載にもあるように、50年代に100万枚売上げ、同名の映画も作られている。
INOHARA Tohru @tukinoha2
「月がとっても青いから」はいつのまにか(80年代以降?)「月が綺麗ですね」に変化する。歌の存在が忘れられて、それでも意味が通じるように形が変わった、ということなのかもしれない。
INOHARA Tohru @tukinoha2
一方、漱石自身は何を言っていたのか。『漱石全集』のどこにも「I Love Youを~と訳した」という話は出てこない。ただし、「「漱石文庫」に残された漱石のメモ書きの中に、ジョージ・メレディスというイギリスの小説家の作品を取り上げて、(続
INOHARA Tohru @tukinoha2
承前)「"I love you,Signora Laura."―Vittoria p.113.此I love you ハ日本ニナキformulaナリ」と記した一節 がある」という。iscb.net/index.cgi?mode…
INOHARA Tohru @tukinoha2
要するに漱石は「I Love Youに相当する日本語はない」とは言っている。それが漱石独自の見解というわけではない(柳父章『翻訳語成立事情』などにも「Love」の翻訳をめぐる多くの試行錯誤が描かれている)が、漱石の知名度の高さも関連して、
INOHARA Tohru @tukinoha2
「I Love You」の翻訳問題において「そういえば漱石も~」という形で触れられた可能性がある。
INOHARA Tohru @tukinoha2
戦後においても伊藤整など多くの文芸評論家・文学者がこの問題に触れており、そのなかで誰かが(たとえば大学の講義で)こう言ったのではないだろうか。「I Love You」を「愛している」と訳すのは安直だ。「愛」という観念はキリスト教に由来するもので、日本にはもともと存在しない。
INOHARA Tohru @tukinoha2
このことは夏目漱石も指摘している。では何と訳すべきか。最近の流行歌に「月がとっても青いから」というのがあるが、これなんて良いのではないだろうか、と。
INOHARA Tohru @tukinoha2
「漱石もI Love Youに相当する概念は日本語にないと言っている」と「I Love Youは「月がとっても青いから」と訳してはどうか」という二つの主張が、ある時点で混同され、「漱石はI Love Youを「月がとっても青いから」と訳した」ということになり、
INOHARA Tohru @tukinoha2
それがさらに変化して「漱石はI Love Youを「月が綺麗ですね」と訳した」ということになった。
INOHARA Tohru @tukinoha2
という仮説が、一応成り立つのではないかと思われる。
Fujii Ryoichi @ffi
あった。この論文の5枚目に、 I love you に関する記述がある。:漱石文庫のメレディス(二):慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA) koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/module…
Fujii Ryoichi @ffi
どうやらこの本に問題の書き込みがあるようだが、ウェブには画像などなしかな。 : InfoLib 漱石文庫データベース dbr.library.tohoku.ac.jp/infolib/meta_p…
Fujii Ryoichi @ffi
あとは東北大学にアクセスできる方にお願いします。
INOHARA Tohru @tukinoha2
すっかり忘れていたが、『三四郎』に「Pity's akin to love」を「可哀想だた惚れたって事よ」(可哀想だとは惚れたという事よ)と訳す話が出てくる。訳した与次郎は「句の趣が俗謡だもの」といい、野々宮先生は「なるほど旨い訳だ」と褒めている。
INOHARA Tohru @tukinoha2
あるいはこの「俗っぽく」が独り歩きした可能性もあるか?

コメント

watyu @watyuking 2015年9月29日
誤りから生まれたとしても、後世に伝えられる名言ではある。とは言え、真実が別にあるなら、それも明らかにされるべきか。
江頭キチジロー @yanagomi 2015年9月29日
じゃあ「You love me.」は「遠まわりして帰ろう」でいいな。わかるかな? わかんねえだろうなあ…。
うらい @u_rairai 2015年9月29日
てっきり何か書物で残ってるのかと思ってた!「あなたともっとお話ししたいです」的なニュアンスなのかな。
双馬 凜 @rin_souma 2015年9月29日
マジか今年一番の衝撃
カイセー @Ksyzr 2015年9月29日
弟子の誰かの捏造かと思ったらその程度の記録でさえない 【
張三李四 @tyousanrisi 2015年9月29日
カエサルだって「ブルータスお前もか」とは言ってないけど有名な台詞だし、その類だともともと思ってた
ながぐつ @high_boots 2015年9月29日
香日ゆら先生の漫画でも、この話触れていた気がする
まる @yas_mal 2015年9月29日
high_boots 香日ゆら「漱石とはずがたり」2巻ですね。表紙に載っているので買わずに読めるという新機軸。 http://www.amazon.co.jp/dp/4040672038
INOHARA Tohru @tukinoha2 2015年9月29日
まとめを更新しました。
なおと(codeslinger) @naocodeslinger 2015年9月29日
有名な話だが、真実ではなかったとは驚き。
未知神明(みちがみ・あきら) @ontheroadx 2015年9月29日
ヒッチコックの名言「俳優は家畜だ」に関しても、当人の弁として「俺はそんなこと言ってない。『俳優は家畜のように扱われるべきだ』とは言ったけどね」だそうです。
三十郎 @sanjuro2 2015年9月29日
残念ではあるが、グッと来る訳なのでこれはこれでいいや。
ゆゆ @yuyu_news 2015年9月29日
どの逸話も有名かつ「本当はそんなこと言ってない」っていう点でも割と有名だけど、小説とか文学作品の翻訳であれば良い訳だよね。
Ikunao Sugiyama @Dursan 2015年9月29日
前のシーズンの相棒でそのネタをやってた訳だが
眠る羊 @sleep_sheep2010 2015年9月29日
漱石の場合、教え子がかなりいろいろ書いているのだけど、その中でもこの逸話は全く出てこないので、後世のでっち上げ(または別人の逸話の混在など)なのは、ほぼ間違いないでしょうね…。
巫俊(ふしゅん) @fushunia 2015年9月30日
全然関係ないですが、ギリシア人都市のアイハヌム遺跡のアイはトルコ(ウズベク)語のay(月)ですね。
Ando @ando_nandhi 2015年9月30日
ontheroadx ヒッチコックは鬼畜ですね。
goya4 @goya4 2015年10月1日
表現者のキャラクターを、尊敬の念ゆえに、周囲がアイドル化(偶像化)していった好例。
Kawai_Yusuke @fiddler_K 2015年10月3日
てっきりそうなんだろうと思い込んでたなぁ
二条肝兼 @IamNotUs 2015年10月4日
こんなに月も青いから本気でハメるわよ
ウミドリくん @umidori_kun 2015年10月4日
欧米でも歴史上の有名人の逸話はこういうの多い。うまくできた話はだいたいデマ。
amtrs @prkyh 2015年10月5日
相棒でネタになってたやつか。
森の熊さん @ktto9ws0 2015年10月5日
マリーアントワネットの「パン(略)」やガリレオの「それでも(略)」と同じかー。にしてもショックというか衝撃というか
水縹(あお) @Turkis_Mond 2015年10月5日
1978年の書籍小田島雄志 『珈琲店のシェイクスピア』(晶文社、1978年9月)の中の 小田島雄志氏とつかこうへいの対談「平戸間から見たシェイクスピア」で、つかへいが言ったらしい。 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14112496789 つかへいに訊くか…w
gryphon(まとめ用RT多) @gryphonjapan 2015年10月5日
この「月の翻訳話は有名だけど、出典が不明」という話は、漱石とその門下生の関係性を描いた「香日ゆら」氏の漫画に出ていたと思って探したがどれだけ頁をめくっても無い…と思ったら表紙だったよ(笑、「盗まれた手紙」かいな)/ならばamazon書影で見せられるな。http://www.amazon.co.jp/dp/B00Q4K0FSC (拡大してみてください)
atlan @atlan1701 2018年11月5日
国会図書館に問い合わせても出典不明だからなぁ・・・ http://iss.ndl.go.jp/books/R000000006-I000149970-00
atlan @atlan1701 2018年11月5日
おっと、問い合わせ先は国会じゃなく岐阜県だった atlan1701
伊藤 正彦 @itohkun55 2020年1月9日
別にデマだっていいよ、この言葉を使った泣けるラブシーン、何度も見てきた。
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