twitter小説大賞に応募するついのべ10作品。

第2回 Twitter小説大賞 募集のお知らせ http://www.d21.co.jp/contents/campaign/twnovel/
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「ねぇ、あなた。あの子、高校で夕焼け部を作ったらしいわよ。川の土手とか学校の屋上から、ひたすら夕焼けを鑑賞するんですって」「そうか。さすが君の娘だね。学生の頃、日が暮れるまでずっと飽きもせずに夕日を眺めていた君の後ろ姿を思い出すよ」「なに言ってるの。元部長さん」 #twnovel

2010-06-07 22:28:15
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僕が死んだらHDDを破壊して欲しいんです。若者は淡々と語った。別段珍しい依頼ではない。部屋に入ると若者は穏やかな顔で横たわっていた。俺は金槌を振り上げ彼の頭を叩き潰した。火花が飛び散り微かに煙が上がる。誰にだって見られたくない記憶はある。俺は静かに手を合わせた。 #twnovel

2010-10-31 19:13:48
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「雲ばっかだね」「だね」「これじゃ流星群見れないね」「見れないね」「晴れると思う?」「晴れないと思う」「眠い?」「眠い」「クルマに戻る?」「戻る」そんな会話のあと眠気混じりで彼女と交わった時に俺の放った流星群のうちの一発がHitしてお前が生まれたんだ。分かるか? #twnovel

2010-11-17 21:31:56
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ドドドドドと地響きがする。遅刻や遅刻やーという甲高い叫び。信号待ちの群衆が割れる。心斎橋筋商店街を大男が駆け抜けてくる。戎橋中央で踏み切った大男は夜空に身を翻し、背中からビルの壁面に吸い込まれた。瞬時にネオンが点灯する。道頓堀の夜の幕開けにどっと歓声が上がった。 #twnovel

2010-11-27 21:34:55
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窓際の席の結城君は今日も単語帳になにかを書き込んでいる。なんの勉強だろう。訊いてみたかったけど自分から話かけるなんてとてもできない。「なぁ三崎、お前本好きだろ。これ俺が書いたんだ。読んでみてよ」私の手のひらに小さな小説。なんてね。私は読みかけの本に意識を戻した。 #twnovel

2010-12-22 20:29:17
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ノーネクタイが普及して、やっと襟元がすっきりしたかと思えば今度は猫も杓子も首から社員証をぶら下げているのだから世話はない。つくづく首輪の好きな連中だ。さて。今日のランチはどこでいただくかな。歩くたび、チリンと鈴が鳴っていたあの頃を、クロは少しだけ思い出した。 #twnovel

2010-12-24 19:37:28
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ガラスびんに閉じ込めておいたおたまじゃくしを譜面の中に放流する。おのおのが楽しげに五線譜の川を泳ぎ跳ね、めいめいがやがて好きなばしょにたどり着く。ぼくはそれを見て、ぽつぽつとピアノを弾き始める。きょうは明るい曲でよかった。なぜならきのうは少し悲しい曲だったから。 #twnovel

2011-01-04 23:31:15
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あたしだけ子供の頃の写真が少ないって母に文句を言うと必ず横っちょから兄たちがお前は橋の下で拾われたからだよー。へっへー。などと言ってからかってくる。そんなことないよね? 母は笑う。そう言えば、あなたが生まれた時は病院の窓からきれいな虹の橋が見えたわねぇ。 #twnovel

2011-01-11 17:38:29
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改行の全くない本を読んでいた。と、虫の字が突然もぞりと蠢いた。あまりにも密度の高い本を読み続けた為に目が疲れたのだ。そう思った。あっ。再び虫の字が動いた。虫は文字列を離れ、行間を一気に駈け抜けてゆく。頁から飛び出した虫は、古畳の隙間にするりと潜り込んでしまった。 #twnovel

2011-01-11 17:52:29
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「じゃ面接に行ってくるよ」「はい。頑張ってきてね」私は笑顔で息子を送り出す。引きこもり生活から抜け出そうと奮闘する姿を見ていると思わず目頭が熱くなる。さぁ電話しなきゃ。「今から息子が伺いますのでよろしくお願いします。ええ。不採用で」私は絶対にあの子を手放さない。 #twnovel

2011-01-12 18:41:30