#お好み焼き屋浜風 まとめ４【艦これSS】

紅吏珠名 @chrishna_c2

「なぁ、浜やん浜やん」 「なんですか？　龍驤さん」 「今つくっとるそのお好み焼き、誰からの注文なん？」 鉄板の上でじゅうじゅうと香ばしく焼かれているお好み焼きが３つ。それはまだ店内に来られていない特別なお客さん達の分でした。 #お好み焼き屋浜風

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昼夜を問わない24時間体制を敷く鎮守府で、艦娘達のシフト交代が始まる頃でした。 さりげなく置かれた前払いの代金と、「ニイタカヤマノボレ級、三人前」とだけ書かれた一枚のメモ。 それが彼女達からの合図（オーダー）です。 #お好み焼き屋浜風

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指定されたテーブルの上に、新たに捺印済みのスタンプカードと、お持ち帰り用の容器に詰めたお好み焼きを置きます。 かねてからのお得意様なので、具材を気持ち多めに入れておきました。 これで彼女達からの注文内容は完了です。 #お好み焼き屋浜風

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ほぼ指定された時間ちょうど。 声も音もなく、気配さえ感じさせず、一瞬のうちにお好み焼きは影も形もかき消えてしまいます。 「あいえええ！？　なんで、お好み焼きなんで！？」 まさに神出鬼没。一般人のお客さん達に姿を見せることなく受取りを完了させる見事な御手前。 #お好み焼き屋浜風

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彼女の正体こそ、川内型軽巡一番艦・川内さん。 「うち浪花の女やけど『かわち』やなくて『せんだい』ってちゃんと読めるんやで！？」 この板……龍驤さんが驚くのも無理はありません。 私も初めてオーダーを受けた時はそうでしたけれど、いまではすっかり慣れました。 #お好み焼き屋浜風

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それもこれも、ニンジャマジックであれば全部説明がつきますし、なにひとつ不自然ではないのだと。 暁の水平線の向こう側で、ほのかに洩れる照明弾の光。 艦娘である私たちだからこそわかる夜戦の合図。 それが、夜のプロフェッショナルである彼女たちの流儀なのです。 #お好み焼き屋浜風

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サラリーマン達が寝静まる夜。 彼らが夜討ち朝駆けを気にすることなく日常を謳歌できるのも、彼女たちの暗躍があってのこと。 今夜もまた、どこかの海域で深海棲艦たちとの戦いを繰り広げていらっしゃるのでしょう。彼女たちがいる限り鎮守府は、私たちの国の夜は安泰です。 #お好み焼き屋浜風

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さて……そろそろお店もカンバン時ですね。 谷風がお腹を出したまま眠っていないか心配です。 風邪をひかないようにお布団をかけ直しに行ってあげないと。 #お好み焼き屋浜風

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「食事が終わったらすぐに抜錨するわ。みんなはりきっていくわよ」 「了解です姉さん。今夜もみんなの力でがんばりましょう」 「これキャベツ多すぎぃ！　食べきれないぃ！」 #お好み焼き屋浜風

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「龍驤さん。新商品を開発してみましたので、ご意見をお願いします」 「よっしゃ任せとき！　本場関西の目ぇでキッチリ見定めたるわ！」 #お好み焼き屋浜風

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「ワールドチャンピオン級、略してお好み焼きワ級です。具材全部のせ仕様です。総重量が2.5kgあります」 「まーた、どえらいモン作りよったなぁ……」 「ちなみに完食なさった方がすでにいらっしゃいますね」 「いるんかい！」 「赤城さんです」 「しかも身内！？」 #お好み焼き屋浜風

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「よーし。パパこっちの三食玉にしちゃうぞー」 「パパー。ぼくこの一番高いやつがいい！」 「わかった。パパがへそくりでここに来ていることはママには内緒だぞ？」 「うん！　男と男の約束だね！」 家族ですか。いいものですね。 #お好み焼き屋浜風

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私達、艦娘には血のつながった家族がいません。中には実の姉妹同士で艦娘になった方々もいらっしゃいますが。 強いて言えば。 艦船を開発・建造に携わった方々。平賀技術中将閣下をはじめとする、クルーのみなさんがそれに該当するのでしょうか。 #お好み焼き屋浜風

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ですが、いまはもう遠い昔。 あの頃の戦友たち。再び逢えるときがやってくるのでしょうか。 家族や仲間が恋しいです……と、どうしてここで提督の顔が浮かんでくるんですかね。 ぶんぶんとかぶりを振って、頭に浮かんだ提督の顔を振り払います。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「家族だったら、あたしがいるぞ。ねーちん」 私ったらどうかしています。提督は私を海域の水底から引き揚げてくださった恩人ですが、それ以上でもそれ以下でもありません。 ただ私の身近にいる中でただ一人の男性だというだけのこと。 そう、ただ、それだけのことなんです。 #お好み焼き屋浜風

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「おーい。ねーちーん？　起きてるかー？　いきてるかー？」 私がこうしてお好み焼きを作るようになったきっかけは、提督にも誰にもまだ秘密です。 #お好み焼き屋浜風

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「くぁー。仕方ないな。ここはおっぱい揉んで気合いをいれてやるしかないな」 みんなそれをフラグだと言うけれど――それが私とあの子との約束だから。 だから私はこのお好み焼き屋で、あの子の帰りを待ち続けています。 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「くっくっくっ、どうや浜やん。このバルジ（胸部装甲）を装備したウチのおっぱい！　もう板やなんて呼ばせへんで」 「あ、お客さんいらっしゃいませ。カウンター席へどうぞ」 「ウチの話聞いてや！？」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

「ねーちんはお好み焼き食わせてくれるし、海よりも深く愛してるぞ」 「そうですね。私も谷風のことを愛していますよ。あんな海の底よりはずっと」 「そうか。じゃあさっきのことは許してくれるな？」 「ダメです。デザートのミルクプリンを勝手に食べたこととは別の話です」 #お好み焼き屋浜風

紅吏珠名 @chrishna_c2

某海域深部―― ……夢。そう、夢を見ていた。 巡洋戦艦として生み出された彼女が、かけがえのない仲間たちと共に大海原を駆けめぐる夢。 だが夢の景色は、いつもそこで終わり。 #お好み焼き屋浜風