幽霊屋敷の仮定決闘#2

盗賊のシェルヒと、幽霊屋敷で出会った幽霊ルーミ。二人は魔法仕掛けの残酷な運命に必死で抗います #1はこちら http://togetter.com/li/884905 #3はこちら http://togetter.com/li/885931 #4はこちら http://togetter.com/li/886400 @decay_world はツイッター小説アカウントです。 実況・感想タグは #減衰世界 が利用できます
減衰世界
rikumo 397view 0コメント
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  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 13:59:29
    (前回までのあらすじ:古びた屋敷に不法侵入した盗賊のシェルヒ。くだらない仕事に後悔する毎日。そこで彼は壁のしみ、ルーミと出会う。この館は殺人鬼に魔法をかけられているという。ルーミは殺されたらしい。そして、殺人鬼の残した魔法がシェルヒの前に現れる)
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:01:28
    シェルヒは片膝をついた。顔には風で切り裂かれた大きな切り傷。まだ浅く、血がにじむだけだ。致命的な傷ではない。それが、実力の差を思い知らせる。もっと踏み込めばさらに大きな傷を負わせることも可能だろう。もう一人のシェルヒ、騎士のシェルヒは弄んでいるのだ。 35
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:04:51
    「ふざけるな……僕だって」  シェルヒはもう一度踏み込む。騎士は再び剣を振るった。襲いかかる烈風。嵐の日に強風にあおられるように、そこから先へは進めない。踏み出した一歩さえ、元の場所に戻す他なかった。今度は両膝を突き、埃の吹き飛んだ大理石のフロアに手を突くシェルヒ。 36
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:07:48
    「近寄ることもできないだろう。これが経験の差だ。お前の腐った経験では打ち破れない壁だ」  騎士は静かに言い放った。 「お前に僕の何が分かる……僕だって……精一杯生きてきたんだ」  シェルヒは気力を振り絞って立ち上がった。再び襲い掛かる烈風。全身の力が抜け、とうとう床に伏す。 37
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:11:11
    「俺はお前の捨てた可能性だ。俺はお前が幼いころから、ブレることなく努力した結果だ。漫然と生きてきたお前とは違う」  騎士はゆっくりとシェルヒに歩み寄る。シェルヒは動けない。 「悔しいか? 俺はそれ以上に惨めな気分だ。俺の本当の姿が、こんなゴミのような大人だなんてな」 38
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:14:00
    「仕方ないんだよ……そんなにうまく行くかよ」  シェルヒはゆっくりと身を起こす。それを黙って見るだけの騎士。舐められているのだ。 「仕方ない? 嘘だろ。お前にはできたはずだ。可能性はいくらでも……チャンスはいくらでもあった。それら全てをお前は無視した」 39
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:16:29
    言い返せなかった。後ろめたいものがない人間はいない。どうしてあそこで頑張らなかったのか。どうしてあの時全力を出さなかったのか。それらの後悔が無い人間はいない。 「お前は今まで何をしていたんだ?」  騎士が剣の切っ先を向けて挑発する。シェルヒは奥歯を噛みしめた。 40
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:19:28
    「うあああああ!」  シェルヒは叫び声をあげる。叫びは全身の筋肉に力を与えた。萎縮し、怖気づいていた筋肉が僅かでも奮い立つ。シェルヒは短剣を構え、突進した。言い訳は全て無意味だ。ならば、実力でねじ伏せるしかない。それだけが、彼に残された唯一の人生の証明だった。 41
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:23:05
    騎士が初めて踏み込んだ。衝撃。不愉快な金属音。シェルヒは、自分が弾き飛ばされて階段の手すりに叩きつけられたことを知った。呆然と短剣を見る。それは根元から両断されていた。短剣は騎士に傷一つ負わせることなく、ガラクタと化した。失望の表情でシェルヒを見る騎士。 42
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:25:18
    「もしかしたら……と思ったのはお前だけではない。俺だって、もう少し、意地を見せてくれると思ったんだがな……こんなものか」  武器も失い、プライドも砕かれて、シェルヒは戦意を失っていた。そこで彼は気付く。騎士の足元、大理石の床に奇妙なしみが……ルーミがいる。 43
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:27:44
    シェルヒはルーミが笑ったように思えた。ルーミは騎士の足に手を伸ばす。そして、それを弾き飛ばす! 足を滑らせ、騎士が転倒した。騎士が剣を落とす。いまがチャンスだ。なのに、どうして身体が動かない? シェルヒの心は焦る。だが、怯えた両足はすぐには動こうとしなかった。 44
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:31:51
    目の前で転倒した騎士が、ゆっくりと立ち上がろうとしている。自分は何をしている? ルーミがせっかく手を貸してくれたというのに。自分自身を激しく奮い立たせる。ようやく足が動く。勢いをつける。タックルだ。そして格闘に持ち込もう。いま、相手には剣が無い! 45
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:34:22
    タックル! 騎士に重い衝撃。そのまま相手を組み伏せる。どうやったら相手を倒せる? 殴る? 首を絞める? 魔法の存在を倒す方法は知らなかったが、何でもやってみるしかない。がむしゃらに殴りつける。5回ほど殴った後、殴る腕が掴まれた。騎士の笑み。全く堪えていない。 46
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:36:58
    「終わりかよ」  組み伏せられた騎士が笑う。痣もない。綺麗な顔。 「それで、終わりかよ」  掴まれた手が全く動かせない。シェルヒは全身の力を込めているのに、額から汗が噴き出しているというのに、掴まれたままの手が全く動かせないのだ。騎士は涼しい顔で、逆に組み伏せようとする。 47
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:40:53
    「そうはいかないよ」  身体を起こそうとする騎士の身体が止まる。ルーミだ。騎士の背中、大理石の床にルーミがいた。彼女は騎士を床にはりつけにした。死霊であるルーミの力はかなり強いようだ。騎士は困った顔をした。 「で、どうするよ」  シェルヒに問いかける。 48
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:43:01
    騎士は掴んだ手を離した。シェルヒは屈辱に顔を歪ませて、何度も騎士に拳を振り下ろす。そのたびに、拳は騎士に受け止められる。やはり5回目で、手首を掴まれて全く動かせなくなる。 「いつまでも試したっていいんだぜ。諦めない心ってやつでよ」  そして手首を離す。 49
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:46:14
    シェルヒはもう殴ることができなかった。一瞬の隙。騎士は凄まじい肘打ちを大理石の床に打ちつける。大きくひびが入り、砂埃が舞う! たまらずルーミは逃げ出す。瓦礫にまで粉砕されたら、壁伝いに移動できるルーミが脱出不可能になる。騎士は素早く身を翻し、逆にシェルヒの腕を固める。 50
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:48:52
    そしてそのままシェルヒを組み伏せる。余りにも呆気ない逆転劇。いや、その差は最初から開いたままだった。騎士がシェルヒの耳元で囁く。 「ダメじゃないか、諦めちゃ。若さもない、力もない、心も弱い。お前に残っているのは、何だ?」 51
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:51:30
    そして騎士はシェルヒを解放した。勝負がついたのだ。騎士は立ち上がり、床で呻いているシェルヒを見下ろす。 「くそ……殺せ」  屈辱でシェルヒは立ち上がることもできない。 「いつでも殺せるさ」  そう言って、ホールの壁で埃を被っている豪奢な椅子にゆったりと腰をかける。 52
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 14:55:41
    「ゲームをしよう」  騎士は足を組んで言った。 「俺は地下室に殺人鬼の被害者が眠っていることを知っている。それを俺は取りに行く。お前はそれを防げるかどうか、というゲームだ。死体の秘匿が俺の制約だ。だからこの館から出られない。死体さえ無くなれば俺は呪縛を解き放つことができる」 53
  • 減衰世界 @decay_world 2015-10-11 15:00:57
    シェルヒは呆然と倒れ伏したまま顔だけを上げていた。 「ん? どうした? お前がそうしていても時間は無くなっていくだけだぞ。プライドも無くしてしまったのか? お前はいま酷い侮辱を受けているんだぞ?」  騎士の嘲り。シェルヒは震えながら立ち上がり、館の奥へと歩いて行った。 54

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