『ア・レッドメモリア・オブ・バーサーク・ブルズ』#3

不幸鳥 @hukurou_nayuta

『ア・レッドメモリア・オブ・バーサーク・ブルズ』 #3

不幸鳥 @hukurou_nayuta

「──にて目撃証言多数、尚、キョートで出没したとの証言も数多く見られ…」「コワイですね」「外出の際は注意重点…」レディオから流れる物騒なニュースに耳を傾け、険しい表情を浮かべる男あり。ハンチングにトレンチコートのこの男は、イチロー・モリタである。1 #HkruNj

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「物騒だよね…ヒヒヒ」モリタの眼前に、薄ら笑いを貼り付けた胡乱な長髪の男が現れる。「模倣犯か」「その通り……ここのところヤツが見つからないのはこれが理由…」知らぬ間に第二、第三の「赤い闘牛」が各地に出没し、世間を賑わせているのだ。当の本物は行方を眩ませている…。2 #HkruNj

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「模倣犯はやりたい放題さ、昼間にも人を襲うわ赤い服ルールを無視して殺し回るわで… 」フィルギアは肩を竦め、頭を振った。「もうこの周辺には潜んでいないのか」モリタは鋭い眼光でフィルギアを見据える。彼は首をかしげ…「どうだろうね…今頃ガイオン辺りかも？」3 #HkruNj

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「単体でも充分厄介だけど…こんだけ増えられちゃあ」「だが、止めねばなるまい」モリタは立ち上がり、スタスタと歩き出した。フィルギアは徐にそれを追った。「どうする……いや、聞くまでもなかった…」モリタは無言で歩く。夜の町を男たちは歩く。4 #HkruNj

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騒がしい夜だった。あちらからも喧騒、こちらからも喧騒。珍しいことではない、だが……「アイエエエ！」「闘牛ナンデ！」ハッキリと聞こえる悲鳴！フィルギアは、モリタ……ニンジャスレイヤーを見、両者共に走り出す。悲鳴のした建物の窓が割れ、人が転がり出た。…死んでいる。5 #HkruNj

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二人はその建物に入り、そこで暴れている何かを見る。それは「赤い闘牛」ではない…「ドーモ！バーミリオンです！俺こそが赤い闘牛だ！」その…目に痛い赤色装束を纏ったニンジャは声高に叫ぶ。二人はアイサツを返す。「ドーモ。フィルギアです」「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」6 #HkruNj

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「イヤーッ！」目にも止まらぬニンジャスレイヤーの跳び蹴り！バーミリオンは構える間もなく吹き飛ばされる！「グワーッ！」建物の壁を貫通し、外に放り出されるバーミリオン！ニンジャスレイヤーはさらに追い討ちを加えようと歩み寄る。「所詮は偽者。だがニンジャは殺す」7 #HkruNj

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その時だ！「ニンジャスレイヤー=サン！上だ！！」フィルギアが叫ぶ。それはバーミリオンの頭部を落下の勢いのまま潰し、ニンジャスレイヤーの前で着地した。「サヨナラ！」バーミリオンは爆発四散！気にも留めず、次の獲物に狙いを定め……赤い影は目を光らせる。8 #HkruNj

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正真正銘、本物の「赤い闘牛」のお出ましである。「…ドーモ。ニンジャスレイヤーです。久方ぶりだ」ニンジャスレイヤーはアイサツをする。闘牛はその声に少し反応する。「ァ…？」その動きはひどく緩慢であった。だが油断ならない敵であることを、ニンジャスレイヤーは知っている。9 #HkruNj

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「ドーモ。フィルギアです……覚えてるかい」次いで、フィルギアがアイサツをした。此度は人の姿である。…いつものように、赤いシャツを着ている。それを闘牛は見逃さない。「アアアアアアッ！！」一声吠えると闘牛はフィルギアに向かって駆ける！実際ハヤイ！10 #HkruNj

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「イヤーッ！」だが、その無防備な背にスリケンが刺さる！「相手が一人ではないことを忘れたか」ニンジャスレイヤーは続けざまにスリケン投擲！闘牛は怯むことはない。声にならぬ叫びを上げながら、目標…フィルギアに突進攻撃！「イヤーッ！」それをいなし、回避！タツジン！11 #HkruNj

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突進攻撃を回避された闘牛はニンジャスレイヤーの方へ向き直り、予備動作もなく蹴りを放った！ガードするも、一撃は重い。「ヌゥーッ！」そこへ…闘牛はまだ気が付いていないが、その背後には梟頭の化け物！「イヤーッ！」化け物によるパンチだ！「グワーッ！」闘牛は膝をつく！12 #HkruNj

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「ホラ、ニンジャスレイヤー=サン。今だぜ…」 梟頭のそれ……フィルギアは言った。「オヌシに言われるまでもない。イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは赤い闘牛を殴り付ける！「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」「イヤーッ！」「グワーッ！」13 #HkruNj

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激しいカラテを一時的に止め、ニンジャスレイヤーはジゴクめいて言う。「…ハイクを詠め、カイシャクしてやる」赤い闘牛は、息も絶え絶えに何かを告げようとしていた。「アバッ……し…、…れ」それはもはや闘牛の声ではない。ヒトウ・タカゴという、一人のヨタモノの声だった。14 #HkruNj

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「……」ニンジャスレイヤーは、彼の首を掴んだまま、言葉を待った。「……殺し、て…くれ……」それが、彼の…「赤い闘牛」という都市伝説となった悲運の男の、最期の言葉であった。「…イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは、そのまま手に力を込め、その首をへし折った。15 #HkruNj

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「サヨナラ！」赤い闘牛は爆発四散した。残ったのは、その左腕だけだった。「ヌ…？」ニンジャスレイヤーは、闘牛の左手に、何か光るものが握られているのを見「待て、ダメだ、ニンジャスレイヤー=サン！」フィルギアの声。すると、目前に飛び込む白い影！16 #HkruNj

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突如現れた白スーツの男は、その左腕を素早く拾い、ニンジャスレイヤーたちにオジギをした。「ドーモ、はじめまして。ピンパーネルです。貴方たちには感謝しています」口調こそ丁寧ではあるが、この男が冷酷で邪悪なニンジャだということを、ニンジャスレイヤーは感じ取っていた。17 #HkruNj

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「ええ、だって、うまく爆発四散させてくださいましたでしょう」二人の言葉を待たず、ピンパーネルは一人で喋り続ける。そして、勝手に立ち去ろうとしている！「ああ、名乗らずとも結構です。存じ上げてますし何より、私に戦う意思はありません…では、オタッシャデ」18 #HkruNj

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勿論、そのような勝手をニンジャスレイヤーは許しはしない。「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーはピンパーネルの右腕を掴む！「…！」ピンパーネルは即座に振り払おうとする。だが離れない！彼は覚悟を決め、そして…「イヤーッ！」勢いをつけて上方へ跳躍する！19 #HkruNj

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なんという、ロケットじみた爆発的な推進力！そうして、彼はニンジャスレイヤーの手を逃れ、ビルからビルへと跳び移り、逃げおおせてしまったのだ…！…右腕という代償を失った代わりに。「これでいい、これで…たかが右腕など」血の滴る右腕を抑え、ピンパーネルは駆ける。20 #HkruNj

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ピンパーネルは拾った「赤い闘牛」の左腕を見つめる。その手に握られていた、花の意匠が施されたブローチをあるべき場所へと戻す。元々これは彼のものだった。…正式には、違うけれど。そして、用済みとなったはずのその左腕を…無くなった右腕に繋ぐことを思い付いた。21 #HkruNj

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何故そのような思い付きをしたのか。それを本気で実行しようとしたのはどうしてだったのか。そんなことはわからなかった。大事なのはブローチが返ってきたこと。無くなった腕の代わりがすぐ手元にあることだ。白スーツの男…否、自らの血に染まった赤スーツの男は闇に消えた。22 #HkruNj

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──かくして赤い闘牛は消えた。追い続けた赤い服の男、ピンパーネルを仕留めることはなく。各地に大量に出没した模倣犯もぱたりと姿を消し、都市伝説は忘れ去られる… 誰もがそう思っていた。だがそれはまた別の話だ…。23 #HkruNj

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『ア・レッドメモリア・オブ・バーサーク・ブルズ』完 #HkruNj