黄昏町(九板)九日目

柊 @hiiragi_r_t_d

【九日目】 【魂13/力1/探索2】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2) #hollytk

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「暴れれば暴れるほどよく回るぞ、これは」 ぽかんと口を開けるわたしに突きつけられたのは、鋭い矢尻。その先端は謎の液体に濡れ、てらてらと不穏な輝きを放っている。 「……はぁー」 わたしは現実逃避気味に、ここまでの経緯を思い返す。 01 #hollytk

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路面に大の字で仰向けに転がったまま目覚めたわたしは、顔をのぞき込む一匹の猫と目が合った。 わたしと……わたしの額の眼と目が合った猫は、ビクリとその身を震わせると走り去っていった。 どういうわけか、わたしのパナマ帽をかぶったまま。 「あっ、えっ」 03 #hollytk

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あのパナマ帽は、わたしが貰ったものだ。 猫風情にくれてやる義理はない。結構気に入っているのに！ 「こ……んのっ……返せっ！」 男がわたしにしたように、猫の動きを止められるかもしれない。その直感に従って、額の眼をカッと見開く。 04 #hollytk

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額の眼がじんわりと熱を持ち、それに見据えられた猫が一瞬、動きを止め……次の瞬間、脱兎のごとく猛然と駆け出した。 「…………」 なんで上手く行かないんでしょうか。文句を言いながら走っている間にも、黒い猫はどんどん離れていきました。 05 #hollytk

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「……らちがあきませんね」 わたしは建物の影に隠れ、息を殺して辺りを見回す。 「……いた」 壁越しに見える、こちらに向かって駆けてくる猫。やはり、自分の縄張りの中をぐるぐると駆け回っていたらしい。 ブロック塀から飛び降りた猫の前に、わたしは立ち塞がる。 06 #hollytk

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「捕まえ……って、うわわっ」 わたしのパナマ帽をかぶったまま、黒い猫はわたしの足の間をくぐり抜けていった。 「……逃がすかっ！」 こうなればもう自棄だ。わたしは全力疾走で、猫の後を追い始めた。 07 #hollytk

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「こ……の……」 わたしはスピードを上げ、猫との距離を縮める。 黒猫は駆ける。わたしはそろそろ息が上がり始める。 「返せぇぇぇ！」 わたしは大きく踏み切り、猫に向かって飛び込んだ。路面に激突し、頭の中に火花が散る。 08 #hollytk

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「痛……った……」 起き上がったわたしの目の前で、黒い猫はパナマ帽を振り落として去っていった。 「はぁー……」 パナマ帽を拾い上げ、服の埃を払っていたわたしは、ふと右を見る。 右に伸びる路地はバリケードで塞がれ、その隙間からは、鋭い矢尻が顔を覗かせていた。 09 #hollytk

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「さあ、どうするんだ。アンタくらい人間に近い奴なら、この矢から逃げられねえ事くらいは分かるだろ」 男の声に、私は回想を切り上げる。ギリギリと引き絞られた弦の音に、慌てて両手を上げて後ずさる。 「……わたしは猫を追いかけてただけ」 矢尻は、心臓を指している。 11 #hollytk

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「人間に近づくバケモノは問答無用だ。……規則を破れば、俺もあの世行きだ」 ずいぶんと厳しい規則があるらしい。 「……自警団」 「その通り。分かったらとっとと回れ右して帰んな。嬢ちゃんみたいな可愛い子に、この毒はちぃっとばかし過激だぜ」 「見逃すのですか？」 12 #hollytk

柊 @hiiragi_r_t_d

「まさか。逃げる弱いバケモノに無駄遣いすんのも、規則違反ってだけだ」 「……ありがとうございます」 顔の見えない、バリケードの向こうの誰かにわたしは一礼して、踵を返して走り去った。 途中で振り返ると、脅すように矢尻がこちらを向いていた。 13 #hollytk

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──────── 【九日目】 【生存】 【魂+1】 【魂14/力1/探索2】 【異形】三ツ目(力+1、探索+2) 14 #hollytk

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[町]バリケードの向こうから、自警団の矢尻が君を指している。「暴れれば暴れるほどよく回るぞ、これは」《異形5つで毒死【魂-2/異形『毒(力+3、探索-2)』入手】異形4つ以下は見逃される【魂+1】》 #黄昏町の怪物 shindanmaker.com/541547 #hollytk