0.ここのところ自分の宣伝ばかりしているので、今日はひさしぶりにシナリオの基礎をTwitterでつぶやいてみようと思う。今日のテーマは.“芸道もの”のキモである。
2015-10-17 00:05:281.“芸道もの”っていうのは、歌、将棋、スポーツなど技芸に打ち込む者を主人公に据えて、その切磋琢磨を描くものを便宜上こう呼ぶ。本当は戦時中の溝口健二のある種の映画を呼ぶときに使われることが多い呼称だけれども、今日はそれを借用する。
2015-10-17 00:05:502.技芸の道を究めるストーリーを書く場合はまずは、その芸の種類、特に知名度に注意を払った方がいい。
2015-10-17 00:06:143.まず思い浮かぶのは、①観客もよく知っている芸術・芸能・競技。すぐに思いつくのは、ピアノ ギター ドラム 油絵 ボクシング サッカーなどだ。これらは観客の中に一家言持っている人が多い。また、ホンモノの競技に日頃から接しているので、技を見る目が厳しくなる傾向がある。
2015-10-17 00:08:134.次に思いつくのは、②みんなが名前くらいは知っている(知っているつもりでいる)が、実態をよく知らない芸術・芸能・競技。僕の感覚で言えば、ゴスペル 自転車レース 相撲 ケチャ舞踊 クロスカントリーなんかだ。
2015-10-17 00:08:515.次は③非常に知名度が低いもの。そんなものあったのかよ、というくらいのもの。インドのカバディとか。
2015-10-17 00:09:516.最後は④知らなくてもいいくらいのレベルのもの。そんな技能に長けていても、なかなか周囲から尊敬されないようなもの。スイカの種飛ばしとか、スコップ三味線とか、ペン回しとか。このジャンルは観客にまったく知らない世界をお披露目するという強みもある。
2015-10-17 00:10:207.で、覚えておかなければならないのは、知名度が下がりニッチなものになればなるほど、対決の構造は効かなくなる。この手のストーリーでよくある<全国大会におけるライバルとの勝つか負けるかのクライマックス>ってやつは構築しにくくなる。他の何かのドラマ構築が必要だ。
2015-10-17 00:10:448.と同時にその教義や技芸を知らない人に対しては、その本質の抽出や開陳が必要になってくる。まあ、簡単に言ってしまえば能書きだ。これをあぶり出すことによって、対決以外のドラマ構築が可能となる。
2015-10-17 00:11:429.例えば、『スクール・オブ・ロック』はロックを “自由を求める反抗”だとしていた。『セッション』はジャズドラムの極意を速さと正確さだと抽出していた。まあ、ここは僕みたいなジャズファンは「え?」って思ったところだったが。
2015-10-17 00:12:1410.また、対決の構造が効かない場合は、人間関係のプロットがストーリー全体に及ぼす影響が拡大し、キャラクターは複雑化する。これは『スクール・オブ・ロック』と『セッション』を比べてみるとよくわかる。『スクール・オブ・ロック』の主人公の方が複雑で立体的なキャラクター造型がされている。
2015-10-17 00:13:4911.④の知らなくてもいいくらいのニッチな技芸を素材として書くときには、別の注意が必要である。こういったストーリーは中盤で、主人公が技芸習得の為に切磋琢磨するという過程が挿入されることが多いが、それを見ている観客は劇的感動を持ちにくい。
2015-10-17 00:14:2912.こういう場合は競技そのものに焦点を当てるのではなく、主人公を取り巻く状況や人間関係を分厚くした方がいい。そして競技のエッセンスを抽出し、それを状況や人間関係にリンクしてドラマを構築した方がいいと思う。
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