「響け!ユーフォニアム」キャラの生理表現に見る新しい芝居の作り方

「響け!ユーフォニアム」の映像表現に関してのメ之助さん@japanoffの感想ツイートをまとめさせていただきました。 この作品について改めて考える/楽しむきっかけになればと思います。 前回語り分のまとめはこちら 「響け!ユーフォニアム」主人公・久美子の心情描写に寄り添う京アニの本気 続きを読む
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メ之助 @japanoff

前回の『響け!ユーフォニアム』感想ツイートが思いのほか反響をいただき、続きを読みたいというご要望をいただいたので、性懲りもなくまた連投させていただこうと思います。フォロワーさんによるまとめがtogetterで取りあげられているので、前回の内容に興味がある方はそちらをご参照下さい。

2015-10-18 19:52:44
メ之助 @japanoff

前回は主に1話と2話を中心に、このアニメがいかに挑戦的な作り方をしているかについて、僕なりの考えを述べましたが、そのボリュームが予想以上に膨らんでしまったため、前回本題として掲げておきながら言及できなかった本作の「芝居の深さ」について、今回連投させていただこうと思います。

2015-10-18 19:56:43
メ之助 @japanoff

以前にも呟いた通り、原作も取材記事も未読の上、放送終了後からまともに見返せていないため、以後の内容は放送当時の思考の再現になります。おそらく今回の内容は、前回以上に独断と偏見に満ちているはずなので、「こんな見方もあっていいわな」くらいの寛大な目で読み流していただけると幸いです。

2015-10-18 19:59:19
メ之助 @japanoff

映像処理上の演出やカメラワーク、演奏シーンの運指描写や楽器の考証などの専門的な部分については、以前にも何度か触れている上、他の方も随所で言及されているはずなので、今回はできるかぎり割愛しようと思います。前回同様、興味のない方はしばらくミュートまたはリム対応でお願いします。

2015-10-18 20:01:55
メ之助 @japanoff

前回、個人的にユーフォを評価する最も大きな理由として「芝居の深さ」を挙げました。具体的にはどういうことか。大きくいえば、①生理描写②声優の演技③シーンの設です。これらの要素が不可分に重なり合い、芝居を深くしている。主に①を中心に、これらの観点から順に見ていきます。

2015-10-18 20:04:49

① 生理描写について

メ之助 @japanoff

一般にアニメの感情芝居では、こう思う、だからこう動く、という因果が透けて見えがちです。だからキャラの演技がものすごく説明臭い。それでも面白いアニメは無数にあるのですが、芝居自体は割と単純なものが多く、酷いところだと、キャラが自分の感情について、その理由を延々と語り出してしまう。

2015-10-18 20:08:01
メ之助 @japanoff

アニメだからといえばそれまでですが、どうしても記号的に見えてしまう面は否めないでしょうし、それがノイズとなって作品に没入できない人もいるでしょう。我々自身が本音と建前の中で生きている以上、自らの心情を容易に口にできるキャラに違和感を抱くのは、半ば無理からぬ話です。

2015-10-18 20:10:49
メ之助 @japanoff

また単純に心理描写といっても、人間には意識的なものだけではなく、当然、無意識というものがある。本人自身さえ思ってもみなかった挙動が画面に見え隠れする。そういったものは芝居を深くします。しかし直截的なダイアローグや安易なモノローグに頼っている限り、そういったものを捉えるのは難しい。

2015-10-18 20:15:02
メ之助 @japanoff

ところがユーフォでは、そういった定型的な感情芝居、安直な心理描写よりも、「生理」が先行していると思しき芝居作りが随所に見てとれます。例えば1話冒頭、麗奈が「全国目指してたんじゃないの」と言いながら苛立たせる足の動きは、その感情的なセリフ以上に彼女のやるせなさを思い知らせてくれる。

2015-10-18 20:19:12
メ之助 @japanoff

前回、僕はユーフォの芝居について「等身大の女の子である久美子の心情や無意識に振り回される形で芝居が組み立てられている」と指摘しましたが、そこにはこのユーフォ独自の生理描写が大きく貢献しています。さりげない仕草の蓄積によって、自覚なき葛藤という最も難しい芝居に説得力を持たせている。

2015-10-18 20:24:27
メ之助 @japanoff

要するに、生理を通して心理を捉えることで、芝居を深くしている。それが最もドラマチックな形で描かれたのが、久美子の成長が真正面から描かれた12話であり、久美子が突然走り出す例の名シーンなのですが、その前にユーフォの生理描写について、まず7話のあるシーンに触れてみたいと思います。

2015-10-18 20:28:33
メ之助 @japanoff

かなり細かい場面になりますが、7話のラストで、葉月から「塚本と付き合ってんの?」と訊かれた久美子が玉子焼きを落とすシーンがあります。「やった、玉子づくし」と喜ぶ久美子ちゃんが可愛すぎるという問題もありますが、そこはひとまず置いといて、ここでの一連の流れを思い出していただきたい。

2015-10-18 20:34:19
やーさん @yaasan9

随所に見え隠れする久美子愛

2015-10-18 20:35:20
メ之助 @japanoff

思いがけぬ質問を受けた久美子が、まず「はい?」と答え、次に無意識のうちに玉子焼きを箸から落とす。ただそれだけの場面なのですが、ここで描かれる久美子のリアクションの順序に注目してみて下さい。食事中に思いがけぬ出来事に遭遇したアニメキャラの反応として、ある違和感があるはずです。

2015-10-18 20:38:46
メ之助 @japanoff

というのも、心理に添って芝居を段取りした場合、すなわち従来の典型的なアニメ芝居ならば、ここではまず先に玉子焼きを落とし、それから何かセリフを発するというリアクションの順序になったはずだからです。思いがけぬ出来事に遭遇し、そのショックで食べ物を落とし、それに対してコメントを発する。

2015-10-18 20:43:07
メ之助 @japanoff

実際に「普通は玉子焼きを落とすのが先じゃないか」というコメントを何度か見かけたので、一般的にもそのように認識されていると考えて差し支えないと思います。事実、食事を妨げるほどの出来事と、それに対する心理的反応を描くことができれば、それで展開上の効果には足りるわけです。

2015-10-18 20:48:36
pianonaiq @PIANONAIQ

RT>メ之助さんのユーフォ考察ツイート、連投第2弾が始まった模様… いかにこの作品の芝居が従来のアニメと異なり深いものであったか、を生理描写から検証するという興味深い試み…

2015-10-18 20:49:36
メ之助 @japanoff

それに対し、ユーフォではセリフの後に玉子焼きが落ちている。なぜ逆なのか。結論からいえば、挙動が久美子の心理ではなく、生理に添っているからです。「はい?」と口をついて出た直後、箸を持つ手の筋肉が弛緩し、玉子焼きの重さを支えきれずに落とす。感情ではなく、その感情の生理から捉えている。

2015-10-18 20:53:15
メ之助 @japanoff

例えば「笑い」の生理反応を思い出してほしいのですが、人間というのは面白いから笑うのではなく、笑うから面白いのだ、というのが生理の正確な順序です。つまり、まず対象に「おかしい」と反応して横隔膜が痙攣し、大脳に伝達され、心理的にそれが「笑い」であると判断される。生理が心理に先行する。

2015-10-18 20:59:20
メ之助 @japanoff

疲れてきた。久美子ちゃん肩揉んでー!

2015-10-18 21:00:06
メ之助 @japanoff

それを踏まえて改めて見直してみると、食べ物が落ちてからセリフを発するという慣行的な定型芝居を、どうもユーフォでは意図的に崩しているとしか思えないのです。玉子焼きを落とすという生理反応をあえて先に描かないことで、逆説的に生理を正確に捉えている。だから芝居に説明臭さがない。

2015-10-18 21:02:54
メ之助 @japanoff

こう思う、だからこう動く、という説明的な因果に縛られず、あくまで久美子の生理に寄り添う形で芝居を拡げている。それゆえ腑に落ちない出来事に遭遇した時の人間の生理反射(無意識)の実際として、とてもよくカットに反映されている。それがユーフォにつきまとう幸福な違和感の正体だと思います。

2015-10-18 21:06:53
真瀬朔人@マサ @s_manase

メ之助さんの話は趣味レベルとはいえ創作をやっている身には参考になる話なのでファボりまくるのであった。

2015-10-18 21:10:17
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