『ジェントリー・グリーンブリーズ・オブ・ザ・モーメント』#1

不幸鳥 @hukurou_nayuta

(土曜日とか言ったがあれは嘘だ) (始めます) #HkruNj

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『ジェントリー・グリーンブリーズ・オブ・ザ・モーメント』#1

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「テメッコラー！言い掛かりつけてんじゃねえよ！」黄色いパーカーのフードを目深に被り、怒声を響かせる若者を、男は眉一つ動かさず見下ろす。しかし、その態度が気に入らないらしい若者は、男に掴みかかり、捲し立てる。「テメーに言ってるんだよ、おっさん！聞いてンのか？」1 #HkruNj

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くたびれたスーツの襟を掴まれながらも、男は気圧されることはない。ぼんやりと、若者を見るだけである。スーツの男がだらだらと口を開く。「ちょっと、いいかね」黄色パーカーの若者は怪訝な表情を浮かべながら、ぶっきらぼうになんだよと言った。「タバコ、吸わせてくれや…」2 #HkruNj

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そのあまりに間抜けた返答に、黄色パーカーは怒りを通り越し何も言えずにいた。これを了承と見たスーツ男は、胸ポケットからタバコを取り出してくわえ、火を点けた。「で？何だったっけ？」「決まってンだろ、テメーが…」言いかけて若者は異変に気が付く。足が、動かない…。3 #HkruNj

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足だけではない。ポケットに突っ込んでいたもう片方の腕も、まるでなにかに固定されたように… 「なんだよこれ、ブルーシートか！？」慌てふためく黄色パーカーの若者には、青い布が巻き付いていた。外そうとするも、全く外れそうにない。破けもしない…。4 #HkruNj

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「人と話すときくらいはよ、フード脱いだらどうだ」スーツ男は、黄色パーカーのフードを脱がせた。「あとそのポケットの中に入れた物、出しな。盗っただろっつってンの」若者のポケットを探ると、あちらこちら傷だらけの古そうな財布が出てきた。明らかに、この若者のものではない。5 #HkruNj

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黄色パーカーはわけがわからなかった。「なんだよ、何なんだよテメー！マッポか？タイホするってのかよ！」スーツ男は何も言わない。黙って若者を引っ張り、歩く。「引っ張ってンじゃねえよ！このブルーシート外せよ！！おい！」はいはい、と受け流すスーツ男は足を止めずに歩く。6 #HkruNj

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しばらく歩き、スーツ男は足を止めた。連れてこられたのは警察署などではなく、ごく普通のカフェだった。ますます黄色パーカーは事態が飲み込めなかった。ずんずんと店内に入っていくスーツ男。若者は引っ張られるがままであった。「恥ずかしいからこれ取ってくれよ…」7 #HkruNj

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席に通されると、男はメニューを手に取り眺めた。黄色パーカーは、青い布のせいでどうすることもできない。しばらく眺めたのち、スーツ男はコーヒーとマッチャ・パフェを頼んだ。「…紹介がまだだったっけ」タバコを灰皿に押し付け、緩慢に懐から名刺を取り出すスーツ男。8 #HkruNj

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「ヤマミダ・ガイジ……」受け取った名刺に…縛られているため、実際は受け取ってはいないが、目の前に差し出された名刺に書かれた名を見た。この名刺には、名前しか書かれていない。「次はお前の番だけど、エート…ハヤキ・カザキシ？」ヤマミダと名乗った男の手には己の学生証が！9 #HkruNj

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「な…返せよ！いつの間に盗ったんだ、俺よりも手癖が悪い！」黄色パーカー…ハヤキ・カザキシはじたばたと暴れる。「まだ学生か？盗みとは大したものじゃねえか。何回盗った。今回限りじゃあねえだろ？」ヤマミダはハヤキの学生証を指先で弄ぶ。「…中退したんだ、学生じゃない」10 #HkruNj

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「何回スリをしたかだって？いちいち覚えちゃいねえ。あんたもイイカモだと思った…」「読みは大ハズレだったがな…」それきり、二人は黙り込んだ。やがて店員が、コーヒーとパフェを運んできた。ヤマミダはコーヒーに砂糖を大量に入れ、それを飲んだ。ハヤキは顔をしかめた。11 #HkruNj

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「ハヤキ。…お前、親は」ヤマミダは、低い声で尋ねる。ハヤキの表情が無になる。そして答えた。「いねえよ。…逃げたよ！」「…一人か」「そうだっつってンだろ…だからなんだって言うんだよ！」この少年は、このとき初めて少年らしさを見せた。親に逃げられた。それは何故か？12 #HkruNj

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ヤマミダはチョイと指を振る。ハヤキに巻き付いていた青い布が少しほどけ、片腕が動かせるようになった。「…食え、どーせロクに食ってもいないんだろ」言いながら、マッチャ・パフェを差し出した。「………」ハヤキはヤマミダとパフェを暫く睨んでいたが、程なくしてがっついた。13 #HkruNj

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あっという間にパフェ容器を空にし、ハヤキは独白を始める。小声で。「俺はニンジャだ。何だかよくわからねえけど、ニンジャなんだ。前に学校で暴れて、逃げて。家に帰って、バレて、次の日には親が逃げて」ヤンクに絡まれたハヤキは、彼らに対しその力を振るってしまったという。14 #HkruNj

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「学校にも行けなくなった。親もいなくなった。だから…働こうかと思ったけどダメだった。新聞配達しようにも、新聞はバラバラに千切れた。コケシマート店員のバイトもしたけど、客の手を切った」無表情に語るハヤキを真っ直ぐ見据えながら、ヤマミダは黙ってそれを聞いた。15 #HkruNj

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話を聞き終えたヤマミダは席を立ち、「来い」と告げた。彼は引っ張られるように立ち上がり、言う通りにする。そしてカウンターで料金を払い、外に出た。そのまま細い路地へ差し掛かり、再び足を止め、ヤマミダは言った。「何て言うんだ…その、インストラクション？だぜ」14 #HkruNj

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顔を上げれば、目の前には苛立った顔の…ニンジャ装束を着た男が一人。その背後には同じ顔したヤクザの群れが。「…ニンジャだと？」ハヤキの呟きに被せるように、相対するニンジャは言う。「ドーモ、ツートンキラーです。契約違反だ、ワカルね」ヤマミダに動揺する素振りはない。17 #HkruNj

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「別に。裏切っちゃあいけないなんて規約は無かった…あれ、あったっけ？だが、ホラ」言いながら彼は紙切れを掲げ…破いて見せた。「もう、関係ないね」言い捨てた男はもう、ヤマミダ・ガイジではない。「ドーモ。ツートンキラー=サン。ブルーシートです」18 #HkruNj

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ブルーシートは、ハヤキを見やる。そこにいたのは、黄色のニンジャだ。「ドーモ。…イエローゲイルです」 青と黄のニンジャと、ヤクザを引き連れたニンジャが睨み合う。なんたるアトモスフィアだろうか。まさに、一触即発である。「いいか、イエローゲイル=サン」 19 #HkruNj

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「まずは意識しろ。…何を？当然の疑問だが、それを理解しなけりゃならん」ブワッと、二人の眼前に青い布が広がる。「イヤーッ！」ツートンキラーはスリケン投擲！しかしそれが通らないことを、イエローゲイルは確信していた。「これが俺の力だ、では、お前の力とは何か？」20 #HkruNj

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「スッゾコラー！！」BLAM！BLAM！ヤクザたちが、アサルトライフルの一斉射撃を始めたようだ。だが、それを敵ニンジャは制した。「やめろ！この布の前ではどうやら何もかも無意味だ…」ツートンキラーは冷静に状況判断する。ならば引きずり出させるしかあるまい。21 #HkruNj

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「見ろ。見て、わからんなら…聞け。お前に渦巻くそれを。弱々しくも荒々しく猛る音を」イエローゲイルは出来る限り集中し、見て、聞いた。…いまいちわからない。だが…「…風が。強い」気付いたことはそれだけだ。「おう。それだけわかれば充分だ！」叫び、青い布を取り払う！22 #HkruNj

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ツートンキラーに向かって走り出す二色の影！「フン、引きずり出す手間が省けたな」吐き捨て、スリケンを数枚投擲！「イヤーッ！」二人はこれを難なく回避！「イヤーッ！」ツートンキラーの前に躍り出たイエローゲイルは手刀を繰り出す！「貴様。ドロボー風情が何…グワーッ！」23 #HkruNj