#オーク転生 (Part.3)

風呂を求めて雪中キャンプ中のオークと執事。襲撃者に対し文化的迎撃を試みる。 切腹の人さん(@HarakirimanEX)による小話 承前: #オーク転生 (Part.2) http://togetter.com/li/890341
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切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生  エルフの住まう森に行く前の話。 オーク「雪深い森でも凍傷になりにくい。オークの身体は便利だ」 カエル執事「そんな事より旦那様、何をされて?」 オーク「風呂作り」 カエル執事「はあ。地面に少し深く穴を掘って、粘土を穴の壁に満遍なく塗って、燃やしてますよね」

2015-10-23 22:33:14
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「森が近いので薪には困らない。雪はうんざりするほどある。雪を敷き詰めて焼いた石を放り込めば身体を拭く程度の湯は手に入るだろう」 カエル執事「随分と乱暴ですな」 オーク「む、粘土の練りが悪かったのか燃やす傍からわれてしまう」 カエル執事「風呂は風呂屋ですな」

2015-10-23 22:39:24
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「風呂……」 カエル執事「この高原を沢伝いに降りれば、少し暖かい丘陵地と滝がありますよ。そこで行水されてはどうです?」 オーク「……そうだな。そろそろ付近の芋虫も食べつくしたし」 カエル執事「今すぐ行きましょう旦那様」

2015-10-23 22:42:50
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「暖かい土地に行くということは、住人と遭遇する可能性もあるのか」 カエル執事「奪いますか?」 オーク「どうしよう、着ていく服がない」 カエル執事「こっちの世界じゃオークが腰蓑以外を着用してたら天変地異の前触れと騒がれますがな」 オーク「天変地異で呼ばれたな」

2015-10-23 22:48:07
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 カエル執事「それにしても、あのクソ女神が証拠隠滅に追っ手を差し向けてくると思ったのですがね」 オーク「物騒だね」 カエル執事「そりゃあもう。罪もない異世界の人間を同意なく強制召喚し、挙句に魔王が勇者に向けて放った呪いの身代わりにした訳ですから」

2015-10-24 19:56:06
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「直接襲ってこない理由は」 カエル執事「体面が悪いですからな。それに頑強とはいえオークは亜人にも分類されることのあるモンスター。数の暴力には勝てませぬ」 オーク「なるほど。では基本的に引きこもり生活が良いのだね」 カエル執事「雪山生活も十日目ですがな既に」

2015-10-24 19:58:20
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「そうか。じゃあ、つまり」  オークは固めた雪のブロックを積んで作ったドーム状の小屋より出た。  目の前には全身金属鎧の騎士達が半ば氷漬けになって震えている。 オーク「火を起こしてあるので、とにかく暖まりなさい」 騎士「……かたじけないっ」

2015-10-24 20:01:36

切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「寒さで馬は倒れ、荷物を抱えた従者は凍傷で麓の村に預け、武器と鎧だけで来たと」 騎士「この鎧は女神の祝福を受け、竜のブレスにも耐えられるのですが」 カエル執事「そして自身の汗が凍り低体温で瀕死だと」 騎士「ぐぬぬ」

2015-10-24 20:16:27
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「それで、追っ手ですか」 騎士「討伐部隊という名目ではありますが、正直その。世界は魔王を倒して平和ムードなので……狂暴化していた魔物も姿を消しましたし」 カエル執事「むしろ人間の国家同士での戦争が始まるかもしれませんからな」 オーク「やりきれん話ですな」

2015-10-24 20:22:43
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 騎士「どうしよう、話が通じる相手です」 隊長「神託では、世界を引っ繰り返す可能性を孕んだ存在とあるのだが」 オーク「まあまあ、まずは身体を温めてください」 カエル執事「旦那様、隣の焚火より掘り起こしました」 騎士「……大きな石?」 隊長「それは」

2015-10-24 20:31:20
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「森の入り口で薪になるモノを探したり土を掘って芋を得ていた時に、ハリネズミの大型種を見つけたもので」 騎士「ハリネズミ、ですか」 隊長「……土着神を信仰するドルイド僧より聞いたことがある。あくまで口伝レベルの知識ですが」

2015-10-24 20:37:00
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 カエル執事「ハリネズミの針を埋めるように粘土で包み、焚火に投じてじっくり蒸し上げました。ほれ、焼けた粘土を砕けば面倒な針が一緒に外れて上等な肉が」 オーク「枝を削った串と匙しか用意できず、申し訳ない」 騎士「……その、貴殿らの分は?」 オーク「お気になさらず」

2015-10-24 20:41:10
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 隊長「……死を御覚悟か?」 オーク「いえ、人里に降りる事を考え減量せねばと考えている次第」 騎士「……」 隊長「……」 カエル執事「減量しても、着る服がなくて困っているお方の言葉とは思えませんな」 オーク「春になったら小屋を建てて工房建てて服を作ろう」

2015-10-24 20:48:55
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 騎士「あー。オーク殿」 カエル執事「殿、ですか」 騎士「うむ。貴殿は命の恩人であり、文化と知性を持った存在だ。少なくとも我らが神託なるモノで示された悪鬼羅刹の類とは到底同一のものとは思えん」 隊長「確かに」 騎士「故に、我らは恩と義に報いたい」

2015-10-24 20:56:59

切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生  そして数日後。 騎士「間に合わせではあるが、貴殿の体格に合わせた服とマントを用意した。麓の村で女将たちが農閑期に作っていた毛織物を使っているので頑丈であろう」 オーク「あの、物凄く高価そうなのですが」 隊長「ハリネズミの蒸し焼き料理の対価でもある」

2015-10-24 21:02:26
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 カエル執事「土着神のドルイド僧にすら現在は失伝した調理法ですからな」 隊長「詳細を宮廷魔術師に伝えれば、この出費を上回る稼ぎにもなるだろうよ」 オーク「そうでありますか」 騎士「では我らは国に戻る……沢沿いに山を下りれば、二日ほどでエルフの集落に到達するだろう」

2015-10-24 21:04:48
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 カエル執事「げ」 オーク「エルフに何か問題でも」 カエル執事「いえ、あいつら広い意味では魔族の筈なのに美形だからって理由で人間の仲間としてちゃっかり勇者一行を支援したり、普段の生活が物凄く地味なのに対外的には煌びやかに飾りたがる見栄っ張り共だなどと微塵も思っては」

2015-10-24 21:07:32
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 騎士「……今の話は、聞かなかったという事で」 隊長「いずれどこかで会えば、その時は酒を酌み交わしつつ愉快な話を」 カエル執事「行かれましたな」 オーク「僕らも行きますか。風呂のある文化的な生活を営める新天地を目指して」 カエル執事「そういえば」

2015-10-24 21:10:05
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オーク「?」 カエル執事「エルフの連中は汗腺も少ないし体臭もそんなにきつくないので、入浴と言う習慣がありません。汚れたら布で身体を拭くか、たまに水辺で行水程度」 オーク「……」 カエル執事「なんですかその、夢潰えたような悲しい表情」 オーク「流石は元魔王だなと」

2015-10-24 21:11:59
切腹の人. @HarakirimanEX

#オーク転生 オークさんはエルフへの清純イメージを失いつつ、旅を再開したという話。

2015-10-24 21:12:37

切腹の人. @HarakirimanEX

ハリネズミを生きたまま粘土(泥?)に包んで焚火で蒸し焼きにするというのは、C.W.ニコルの自伝の中で彼がジプシーの馬車に乗った時にジプシーのお爺さんが振る舞ってくれたという料理。 極めて美味だとか。

2015-10-24 21:18:28