「アヴェンジャー・フロム・ジ・アフターライフ」

嘗て世界を望んだ憎悪あり。 その者は英雄の刃を受けて死んだ。 だが、今再び。アノヨの果てより復讐者が帰還する!
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Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「激闘!嵐舞う西方海域」-第二部 (第一部:togetter.com/li/881392

2015-10-25 21:04:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アヴェンジャー・フロム・ジ・アフターライフ」

2015-10-25 21:06:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

CRAASH!「ハハハ!ハハハハハ!」破壊音。そして哄笑。それが気絶した艦娘の意識を呼び戻した。「……」腹這いのまま、視線だけ敵を見る。そう、敵だ。艦娘は思い出す。リランカ島海域哨戒。いつも通りの代わり映えしない退屈な任務。その筈であった。今目の前で嗤う敵に出会わなければ。 1

2015-10-25 21:08:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

艦娘は悟られぬよう改めて、敵を見た。壊れた通信機を踏みにじり、哄笑し続けるソレは、あの特徴的な頭部艤装を装備していないが、間違いなく空母ヲ級であった。フラッグシップ改。ただの一隻。本来ならば問題なく迎撃できる戦力である。筈であった。だが現実はどうだ?艦娘は仲間の骸を見る。 2

2015-10-25 21:10:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

骸。そう、骸だ。自分を除き、全員が惨たらしく殺された。艦娘は音も無く魚雷発射管から魚雷を引き抜く。幸い、敵はこちらの生存に気付いていない。「注意は一瞬。後遺症が死ぬまで」かのミヤモト・マサシの警句を思い知らせてやろう。艦娘は静かに心の中で復讐の刃を研ぎ、息巻く。 3

2015-10-25 21:14:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ハハハハハ!」敵は嗤い、そして空を見た。「事は順調。瑠奈花め、思い知らせてやろう」瑠奈花?艦娘は訝しんだ。何故宿毛湾の英雄の名が?だが、知った事ではない。艦娘は飛び掛かろうとした。ヲ級は杖で地を叩いた。そして呟く。「無駄だ」頭だけが反転し、艦娘を見る。「エッ」ZOOOOM! 4

2015-10-25 21:17:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

瞬間、地が揺れ、砕けた。下から突き上げられたかのような衝撃を受け、艦娘は宙を舞い、仰向けの姿勢で地に落ちた。「ンアーッ!」艦娘は敵を探す。敵は己に背を向け、海へと歩みを進めていた。それほど遠くではない。艦娘は魚雷を投げようとした。刹那、空が陰る。艦娘は咄嗟に頭上を見上げた。 5

2015-10-25 21:19:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

見上げた先。頭上から白く巨大な何かが降ってきた。艦娘のニューロンが加速し、主観時間が鈍化する。瓦礫?否、あれは、装甲に覆われた……手?そこまで思考するのと、手が艦娘を押し潰すのに、然したる時間差は無かった。 6

2015-10-25 21:21:43
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ZOOOOM…ZOOOOM…巨躯を誇る何かが、地表を砕き、地の底より這い出して来る。ヲ級はそれを見ず、海へと歩みを進めた。「復讐の時来たり」左目の青い炎が燃え盛り、ヲ級は嗤った。風が吹く。敵意を乗せて。遠く来る飛空艇へ向けて。 7

2015-10-25 21:24:15
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

大型飛空艇・フライトリバティーが西方海域前線仮設基地から飛び立つ。複数の艦娘達が戦闘態勢でそれに続く。物々しいアトモスフィアである。フライトリバティーが基地に降り立ってから、まだ10分も経っていないというのに。フライトリバティー艦橋で、瑠奈花は物々しい表情で海を睨む。 9

2015-10-25 21:27:52
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

舵を握る秋津洲は、いつもとは違う瑠奈花を心配そうに横目で見つめる。付き合いこそ短いが、彼があそこまで心乱す様を見るのは初めてであった。特徴的な蒼黒の甲冑を身に纏うリカルドも同様だ。リカルドは秋津洲の後方に立ち、艦娘達からの報告を受け取りながら、時折瑠奈花の背を見た。 10

2015-10-25 21:28:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あんなるなか提督、初めて見たかも」秋津洲は心細げに呟く。「俺もだ」リカルドも同意するように呟く。「やっぱり、あの報告が原因かも?」「そうだろうな」リカルドは思い返す。10分前、到着と同時に届けられた哨戒部隊からの報告を。 11

2015-10-25 21:30:32
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

『戦艦棲姫と交戦中。随伴艦に黒フリルの深海棲艦を確認』内容は概ねこんな所だ。報告後、哨戒部隊のバイタルサインは消えた。黒フリルの深海棲艦。現在確認されている中では離島棲鬼だけだ。そして戦艦棲姫と離島棲鬼の組み合わせ。瑠奈花が語った“レジスタンス”と奇妙なまでに一致していた。 12

2015-10-25 21:32:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

離島棲鬼が出現したという報告は、初めてその存在が確認された昨年春の大規模作戦から途絶えている。瑠奈花の言を信じるならば、深海棲艦の側から離脱し、独自に行動していたことになる。その間、人類に対し敵対行動を取っていなかった彼の者が、今になって何故? 13

2015-10-25 21:34:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

この西方海域に、行動に値する何らかの旨みを見出したのか。はたまた、人類が彼の者の怒りを買ったのか。或いは、今までの彼の者の行動は一種の2重スパイ行為だったのか。リカルドは渋い表情で思案する。判断材料が少なすぎる。何よりリカルドはその者達について何も知らぬ。 14

2015-10-25 21:37:07
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドにとって深海棲艦とは、海に沈んだ死者達が変異した存在だ。今まで数度、そう確信するに値する者達と遭遇してきた。リカルドは不安げに海を見つめる駆逐棲姫を見た。彼女こそ、その最たる証だ。彼女の正体は嘗ての軍艦“春雨”。旧き船の付喪神。艦娘の宿す船魂の本体たる神霊。 15

2015-10-25 21:38:46
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは敢えてその正体を瑠奈花に伝えなかった。深海棲艦を裏切り、一度消滅したはずの存在。更には、貴重な春雨の船魂の本体ですらある。駆逐棲姫は、余りにも特異かつ、貴重なのだ。大っぴらに彼女の存在を喧伝することは即ち、彼女の安寧を脅かすことに他ならない。 16

2015-10-25 21:39:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

それはリカルドも、何より彼女を救った春雨が望むことではない。故にリカルドは語らなかったのだ。リカルドの視線に気づいた駆逐棲姫が、リカルドに近寄る。「どうした?」「いや…すまんな、作戦にまで同行させちまってよ」「いいよ。気にしないで」駆逐棲姫はそう言い、瑠奈花に視線を向けた。 17

2015-10-25 21:41:25
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「瑠奈花司令官、どうしたんだ?何か怖いぞ」「どうも、今回の敵が奴さんの友人かもしれんって話だ」「友人…深海棲艦に友達がいるのか?」「らしいぜ。詳しくは聞いてねぇがな」リカルドはふと思い至り、駆逐棲姫に問う。「なぁ」「何だ?」「お前さん、深海棲艦に知り合いはいなかったのか?」 18

2015-10-25 21:42:44
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「深海棲艦の…?」駆逐棲姫は首を傾げた。「答える前に聞くけど、何でそんなことを聞くのさ」「瑠奈花=サン曰く、深海棲艦ってのは深海に棲む文明人の一種らしい」「文明人?」駆逐棲姫は眉を顰めた。「馬鹿な。私は元軍艦だぞ」「そうだ。お前さんが人間じゃないことは俺も了承済みだ」 19

2015-10-25 21:43:10
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「瑠奈花=サンの話の正否は一旦置いておくが、深海棲艦の一部が文明的行動や軍事的行動をしてるってのは事実だ。だから聞きたい。ビアク島に居た頃、お前さんは誰かから指示を受けていたのか、ってな」「受けてない」駆逐棲姫は即答した。「少なくとも、直接命令された覚えはないわ」 20

2015-10-25 21:45:00
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「少なくとも?」リカルドは駆逐棲姫の言に含みがあることに気付く。「直接誰かに会って、何かを話したことは無い。けど、衝動的と言うか。本能的と言うか。害を為す様に内側から煽り立てられた感覚があった」駆逐棲姫は言葉を探す。 21

2015-10-25 21:45:12
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

やがて、駆逐棲姫は言葉を見つけた。「そう、敵意を駆り立てられてるよな」「敵意、か」「憎悪って言ってもいいかもしれない」駆逐棲姫は苦々しい表情で遠くを見た。「あの頃の私は、目に付くモノに害意を振り撒く存在だった」 22

2015-10-25 21:46:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あの時、春雨と出会わなければ、今もビアク島で有象無象に敵意を持って見境なく暴れていたと思う」一息つき、駆逐棲姫はリカルドを見上げた。「そう言う意味では、感謝してる。アンタには」「俺は春雨の意志を尊重しただけだ」 23

2015-10-25 21:47:10
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