平成27年 司法 論文 刑法 答案例

出題趣旨等も踏まえて
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羽廣政男 @m_hahiro

カ したがって,乙は,A株式会社に対して,甲が新薬の書類(A3サイズのもの)10枚を取り出した行為を依頼した行為につき,甲との間で,窃盗罪の共同正犯が成立し,その罪責を負う。                           以 上

2015-10-26 08:34:43
羽廣政男 @m_hahiro

また,②法益について,本権(横領)と占有(窃盗)では重なり合いはないものの,窃盗の法益も究極的には本権と考えるので,その意味で重なり合いがある。

2015-10-26 08:34:38
羽廣政男 @m_hahiro

意味で,罪質の重なり合いに近づけて判断するべきであると考える。 オ これを本件についてみるに,業務上横領と窃盗とは,①行為態様につき,占有侵害の有無では重なり合いはないものの,どちらの行為も領得行為という意味ででは重なり合いがあり,

2015-10-26 08:34:29
羽廣政男 @m_hahiro

両構成要件が重なり合っている場合,重なり合いの限度で,軽い罪の故意を認めることができると考える(重なり合いの限度論)。重なり合いがあるか否かを判断するための事情は,①行為態様及び②法益であり,それは実質的に考慮するべきもの,その

2015-10-26 08:34:18
羽廣政男 @m_hahiro

らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。」と規定しているところ,その逆,すなわち,軽い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその軽い罪に当たることとなる事実を知らなかった場合であり,この場合,軽い罪である窃盗罪の故意を認めることができるか,

2015-10-26 08:33:59
羽廣政男 @m_hahiro

エ 業務上横領罪の法定刑は,「十年以下の懲役」であるのに対して,窃盗罪の法定刑,「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」なので,選択刑に罰金刑のある窃盗罪が軽い。刑法第38条(故意)第2項は「重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知

2015-10-26 08:33:49
羽廣政男 @m_hahiro

ウ ただ,主観的には業務上横領罪の共同正犯の故意で,客観的には窃盗罪の共同正犯の結果を生じさせているので,異なる構成要件に跨る錯誤(抽象的錯誤)の問題となる。

2015-10-26 08:33:37
羽廣政男 @m_hahiro

以上の事情を総合して判断すると,乙は,重要な因果的寄与をしている(重要な役割を演じている)ので,実質的共同惹起をしているから,教唆ではなく,共同正犯である。

2015-10-26 08:33:01
羽廣政男 @m_hahiro

,③犯行後の事情につき,乙は,いわばアクシデントで本件書類を入手できなかったものの,仮に丙による置き引きがなければ乙が描いた計画とおりに,経営陣に加わることができたのであって,

2015-10-26 08:32:56
羽廣政男 @m_hahiro

本件犯行のメリットは,乙の方が甲よりもはるかに大きいこと,②犯行中の事情につき,確かに,乙は,実行行為には関与していないものの,乙の依頼がなければ,甲は実行行為をする動機がないので,実質的には,②の事情は①の事情と一体と評価すべきであること

2015-10-26 08:32:46
羽廣政男 @m_hahiro

300万円を甲先輩に払いますし,甲先輩を海外の支社長として我が社に迎え入れます。」と して,犯行の計画を主導しているだけではなく,「私は,その書類を我が社の商品開発に活用したい。成功すれば,私は将来,我が社の経営陣に加わることができる。」とあるように,

2015-10-26 08:32:36
羽廣政男 @m_hahiro

そのための事情として,①犯行前の事情,②犯行中の事情,③犯行後の事情を総合して判断するのが相当であると考える。 イ 当てはめ これを本件についてみるに,①犯行前の事情につき,乙は,甲に,「是非,その書類を持ち出して私に下さい。」「その書類と交換に,私のポケットマネーから

2015-10-26 08:32:13
羽廣政男 @m_hahiro

共同正犯と教唆犯の区別の基準は,正犯と狭義の共犯の区別の問題なので,構成要件的結果を共同で惹起した共同員の一員か否かであり(実質的共同惹起の存在),その判断のための基準として,重要な因果的寄与があるか否か(重要な役割を演じたか否か)が問題となり、

2015-10-26 08:31:59
羽廣政男 @m_hahiro

第3 乙の罪責 1 A株式会社に対して (1) 甲が新薬の書類(A3サイズのもの)10枚を取り出した行為を依頼した行為について ア 共同正犯と教唆犯の区別の基準

2015-10-26 08:31:44
羽廣政男 @m_hahiro

(オ) したがって,丙は,甲に対して,ベンチに置かれた甲のかばんを抱え,待合室を出た行為につき,窃盗罪が成立するが,自首も成立するので,刑は任意的に減軽される。

2015-10-26 08:31:24
羽廣政男 @m_hahiro

刑法第42条(自首等)第1項「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」により,自首が成立する。

2015-10-26 08:31:20
羽廣政男 @m_hahiro

(エ) ただ,犯行が発覚する前(甲がB駅の待合室に入ってから丙が甲のかばんを持って待合室を出るまでの間,待合室を利用した者は,甲と丙のみであったし,被害者である甲は,窃盗罪終了後に何者かによる犯行を認識するに至った。)なので,

2015-10-26 08:31:10
羽廣政男 @m_hahiro

なぜなら,かばんは,速やかに所有者の甲に返されるであろうから,法定刑の軽い器物損壊罪の法定刑から想定する財産的法益の侵害すら認めることはできないからである。

2015-10-26 08:30:47
羽廣政男 @m_hahiro

甲のかばんを持って交番へ行き,他人のかばんを勝手に持ってきた旨警察官に申し出れば,逮捕されて留置施設で寒さをしのぐことができるだろうと考え,ベンチに置かれた甲のかばんを抱え,待合室を出る行為につき,直ちに,かばんの効用を喪失したとは言えないと考える。

2015-10-26 08:30:42
羽廣政男 @m_hahiro

しかし,領得罪と器物損壊罪との関係は,特別法と一般法ではないので,積極的に,「損壊」に当たると説明しなければならない。ここで「損壊」とは,物理的損壊に限らず,効用を喪失する場合も含むところ(効用喪失説),

2015-10-26 08:30:29
羽廣政男 @m_hahiro

(挿入) 仮に,不法領得の意思を否定した場合,領得罪は成立し ないので,窃盗罪が成立しないばかりか、占有離脱物横領罪も成立せず,財産に係る法益侵害があるにもかかわらず,これを等閑視することはできないので,器物損壊罪の成立を認めることになろう。

2015-10-26 08:30:16
羽廣政男 @m_hahiro

によっても推認することができるから,その経済的用法に従い利用・処分する意思(利用意思)に欠けるようにもみえるが,利用意思を要件とする根拠は毀棄隠匿罪との区別のためなので,警察官に渡す意思である場合であっても,毀棄隠匿の意思ではないから,これを満たす。

2015-10-26 08:29:46
羽廣政男 @m_hahiro

,ベンチに置かれた甲のかばんを抱え,待合室を出たのであり,その意思は,実際,丙は,甲のかばんを持って直ちにロータリーの先にある交番(待合室出入口から50メートルの距離)に行き,警察官に,「駅の待合室からかばんを盗んできました。」と言って,甲のかばんを渡したという事後的な事情

2015-10-26 08:29:31
羽廣政男 @m_hahiro

(ウ) ただ,主観的要件としての不法領得の意思について,丙(70歳,男性)は,ホームレスの生活をしていたが,真冬の生活は辛かったので,甲のかばんを持って交番へ行き,他人のかばんを勝手に持ってきた旨警察官に申し出れば,逮捕されて留置施設で寒さをしのぐことができるだろうと考え

2015-10-26 08:29:19
羽廣政男 @m_hahiro

(イ) 主観的要件としての窃盗罪の故意について,丙(70歳,男性)は,待合室の奥にあるベンチに座って甲の様子を見ていたので,主観的に,甲のかばんにつき,占有が甲にあることを認識していた。

2015-10-26 08:29:06
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