ミイラレ!SS集その1(原文のみ)

怪異に好かれる少年と退魔師の少女がなんやかんやするやつの、あんまり本編に関係ない話の寄せ集め。 こちらは原文のみです。実況付きはこちら→ http://togetter.com/li/891903
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鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern
【ミイラレ!SSその1:御伽 巡の憂鬱】 #4215tk
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern
昆虫怪異たちとの戦を終わらせたその日の夜。四季はすでに寝室で寝息を立て、いつもは夜通し暇を潰しているはずの幽霊、小夜子も疲れ果てたか姿を消している。つまるところ、居間には現在一人しかいない。御伽 巡。四季を百鬼夜行『山ン本組』の長へ押し上げた張本人である。1 #4215tk
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彼女は暗い部屋の中、古ぼけたノートPCを前に顔をしかめている。「……まったく。面倒事を増やしてくれたもんだねえ」『そう憎まれ口を叩くもんじゃねえだろうよ、巡』音もなくディスプレイ上に文字が出力される。『よかったじゃねえか。あれだけ手塩にかけてたんだからよ』2 #4215tk
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern
巡の眉間のしわが深くなる。彼女は声で返事をする代わりにブラインドタッチ。『それとこれとは別問題。またあいつらの世話をしなきゃならないと思うと胃が痛い』少しの沈黙。『贅沢な悩みじゃねえか。どうせまたすぐに仲睦まじくなるんだろ』『それが一番面倒なんですよ』3 #4215tk
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タイピングをする指に力が入り、キーボードが小さな音を立てる。今度の返事は早かった。『観念して最後まで面倒見てやんな。それが上にいるもんの務めだからな』ばたん。勢いよくノートPCが閉じられ、スリープモードに移行する。音を立てて溜息をついた巡は宙を睨んだ。4 #4215tk
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まあ。まあ、確かに。巡は頭を冷やすためにも思考する。また赤城たちの力を使えるのであれば、それは喜ばしいことではある。まだ未熟で自分の想定する敵には到底及ばぬ連中とはいえ、それ以外の雑用を任せるには充分だ。故に、あの少年の判断は渡りに船。そう思うことにしよう。5 #4215tk
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彼女はふと寝室の扉へ目を走らせる。いくつか不愉快なことを押し切られはしたものの、あの少年も案外役に立ってはくれている。天狗や山姫、ないしは大悪魔の力を借りられたは実に僥倖。それに。巡りはふと、自身の腹に手をやった。こちらの『切り札』を成長させるには最適の環境だ。6 #4215tk
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彼の提供する霊気は質も量も申し分なし。まだ力の足らぬ連中にもそれとなく霊気を供給させ、戦力にできるよう頑張ってもらわねばならぬ。あとは……自分に憑かせたこの子にも。腹の奥でわずかに動きを感じ、巡は微笑んだ。が、その表情はすぐに険しくなる。彼女は後方に糸を放った。7 #4215tk
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「ひゃっ」予想通りの声。溜息をついて振り向くと、床に倒れていたのは赤黒縞装束の女。先ほど飛ばした糸で簀巻きにされている。「まぁた夜這いか、貴崎ィ……」「あ、あははー」ごまかすように笑った貴崎 茜は、ゴロゴロと転がって巡の元まで。「落ち着いてよめぐりん。話聞いて」8 #4215tk
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近づきすぎた彼女を少し押し戻しながらも、巡は黙って言葉を促す。相手の表情が存外に真剣だったからだ。「あたしがここに忍び込んで来てるのは、何も夜のお楽しみ目的じゃないのよ。めぐりんのため、組のためなの。それをまずわかってちょうだい」彼女は神妙に言った。9 #4215tk
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巡は片眉を跳ね上げ、続きを促す。「……めぐりんがあたしたちを捨てた理由は、まあなんとなく察してる。方針に従わなかったからって言うより、単純に力不足だったから。そうだよね?」「まあね」忌憚なく頷く。わざわざ隠す必要もない。「それとこれとどういう関係がある」10 #4215tk
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「あたしの主力は式神よ。式神の強化ができれば、もっとめぐりんの役に立てると思うの」「成る程、道理だ。それで?」「それには特殊な作り方をする必要があるのよ……安全な場所で、霊気を注ぎながらじっくりと作り上げる。そうすれば、即席の式神とは段違いの子が生まれるわけ」11 #4215tk
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真剣な眼差しで見上げてくる茜を、しかし巡は冷たい視線で見下ろした。「で?それを作るために具体的にどうするつもりだい。言ってみな」「それはもう、めぐりんのお腹を借りてゲフゥッ!」最後まで言葉を発するより先に、茜の腹に鋭い蹴りがめり込んだ。「この色情魔が!」12 #4215tk
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丸太のごとく転がって壁に衝突した蜂の怪異へ、巡は容赦なく罵倒の言葉を投げつける。「少し見ない間に反省してるかと思ったが、よりひどくなってるとはどういうことだ!消え失せろ変態!」「がふ……うふふ。めぐりんの愛が痛い」「貴様に注ぐ愛情なんぞないわっ!」13 #4215tk
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吐き捨て、侮蔑の眼差しで部下を睨む。貴崎 茜。実力、機転ともに申し分はない。この性格さえ除けば。元となる雀蜂以外にも複数の蜂の特性を取り込んだ彼女は、獲物に『卵』を埋め込むことで強力な式神を作る術を編み出した。そして事あるごとに巡でそれを実行しようとするのだ。14 #4215tk
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巡はつかつかと茜に歩み寄る。やはりこいつだけは始末しておこう。あの少年には、不埒な真似に及ぼうとしたため手討ちにしたとでも説明すればよい……そう思った矢先、茜の体が浮かび上がった。いや、持ち上げられたのだ。小柄な影たちによって。「発見!」「確保!」「撤収!」15 #4215tk
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影たちは互いに呼びかけ、てきぱきと茜をどこかへ運んでいく。「失礼いたします、巡隊長」小さな影の一つが巡の前まで近づき、敬礼する。黒基調の軽装をした、褐色肌の少女。蟻の怪異、蟻塚 家鳴である。「緊急事態であったため、確認なしの入室をお許しください」16 #4215tk
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「ああ、ああ。それくらいはいいさ」巡は疲れたように言う。家鳴はなおも生真面目に報告を続けた。「回収した貴崎 茜は軍曹の手により懲罰を課す予定であります」「キツく絞るように言っておきな。まあどうせまたやるんだろうがね、まったく」「はっ」家鳴が了承の返事をする。17 #4215tk
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巡はちゃぶ台に戻ろうとし……動こうとしない家鳴を見て、足を止めた。怪訝に見下ろす彼女の前で、家鳴はヘルメットを脱ぎ、なにか期待するような目を巡に向けている。「あー……」巡は頭を掻き、屈み込んだ。「今回はよく迅速に行動してくれたねえ。ありがとうよ」18 #4215tk
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern
そして手荒に家鳴の頭を撫でた。家鳴はくすぐったげに目を瞑る。「あ、ありがとうございます!ではこれで失礼いたします!」満足したのか、ヘルメットを被り直した家鳴がお辞儀をし、足早に退室していく。巡は溜息混じりにそれを見送った。褒めてやらねば人は動かぬというが…… 19 #4215tk
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern
巡はその足でキッチンへ向かい、ヤカンに入ったままの茶を湯飲みに入れて一気に飲み干す。またあの一癖も二癖もある連中をなだめすかしながら従えねばならぬ日々が戻ってくるのだ。なんと煩わしいことか!(若旦那も面倒ごとを押し付けてくれる……)彼女は再度溜息をついた。 #4215tk

鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern
【ミイラレ!SSその2:日条 四季の自習時間】 #4215tk
鹿奈しかな a.k.a SS @RiverInWestern
シャープペンシルが紙の上を滑る音だけが教室に響き渡る。四季は額に手を当てつつ目の前の紙切れを睨んでいた。物理の小テストである。彼の手は最後の文章題で止まっていた。どこから何を計算したものやら、まるで見当がつかない。彼にとって高校のテストはまだ難しいのだ。1 #4215tk
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