【倍返し!ジンジ・ニンジャ ファービー常務の巻】

忍殺テキストカラテ風味なサラリマンドラマ。本編がカレーならば、カレーピラフみたいな作品です。倍返ししたい上司をお持ちのサラリマンな皆様にスッキリしていただければ幸いです。
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赤い方の蟹 @kaori6113

これからUPしますお話は、カラテ風味はあれど本編とは何の関係もない、会社ドラマです。たとえて言うなら本編がカレーであれば、カレーピラフ。「カレー風味のピラフ」、すなわち「忍殺風味の会社ドラマ」。予めご了承願います。ご不快に思われた方すみません。何せカニなんで空気が読めないのです。

2015-11-05 22:21:55
赤い方の蟹 @kaori6113

@kaori6113 ではスタート! 【倍返し!ジンジ・ニンジャ ファービー常務の巻】

2015-11-05 22:22:25
赤い方の蟹 @kaori6113

(あらすじ:オーキニ・オーサカ・シティに出勤するマコト・カラツは保険の営業サラリマン。新規営業よりも顧客と後輩社員へのケア業務を重点するため、営業重視のファービー常務に度々呼び出され、「指導」と称した嫌がらせを受けてきた。)

2015-11-05 22:22:42
赤い方の蟹 @kaori6113

(そんなある日、1人のニンジャが彼に接近。彼が受けた「指導」の証拠を集めたそのニンジャは、本社から1本のマキモノを手にオーキニ・オーサカ・シティへ戻ってきた。)

2015-11-05 22:22:59
赤い方の蟹 @kaori6113

オーキニ・オーサカ・シティのアリンコ・ジャパン支社ビル。ファービー常務は今日も、マコト・カラツを自室に呼び出し、「指導」を始めた。「……キミのようなユ・ウ・シュ・ウ!な人間が、どうして顧客の保険適用業務なんて雑務に追われて、新規営業に回れないんだろうネェ?おかしいじゃない?」1

2015-11-05 22:23:21
赤い方の蟹 @kaori6113

バーン!!そのとき木製のドアが開き、白い影が飛び込んできた!「イヤー!」「グワーッ!!」影はファービー常務の顎部をキック攻撃!ファービー常務はイスごと後ろに倒れ込む!影は反動を利用して優雅に着地すると、倒れた常務のハゲ頭に向かって何かを投擲!スリケン!?いや……巨大ハンコだ!2

2015-11-05 22:23:42
赤い方の蟹 @kaori6113

「ドーモ、ジンジ・ニンジャです。おかしいのはキサマの頭の方だ」ニンジャは倒れたままブザマにもがく常務に歩み寄る。「顧客を大事にし、仲間を励ましつつ業務に勤しむ社員に言いがかりをつけ、皆の前で執拗に責め立てる。経営陣の一員として到底許される行為ではない」3

2015-11-05 22:24:02
赤い方の蟹 @kaori6113

「いや、ただ私は彼の営業成績を基に」「営業成績は月次、週次の実績資料が手元にあるだろう。マコト・カラツの営業成績は他の社員より良い。彼のデータだけ既存顧客からの営業分が含まれていないために、そのように見えるだけだ」ニンジャは右手でまばらな髪を掴んで常務の顔を持ち上げた。4

2015-11-05 22:24:21
赤い方の蟹 @kaori6113

「髪が!髪が抜けるぅぅ!ブレイモノ!」悲痛な叫びが室内外に響く。他のフロアからも社員が集まってきた。常務のハゲ頭には「アホはオマエ」「粘着質ハゲ」「油枯れる」の巨大ハンコの文字。先ほど複数のハンコを同時に投擲し、印字したのだ。ワザマエ!しかも油性のため簡単には消えない!5

2015-11-05 22:24:45
赤い方の蟹 @kaori6113

「アイエエエ!」「会社、会社ニンジャナンデ!?」集まった社員は逃走!常務の腰巾着、ヨコガワ専務もしめやかに失禁し、這いつくばって逃げ出す!「専務、何してるんだ、こいつをどうにかしろ!」ファービー常務が喚くが、社員の逃走の勢いは止まらない。6

2015-11-05 22:25:04
赤い方の蟹 @kaori6113

「権力を持つ者でありながらその背負う責任を忘れてこれを濫用し、有能な人材の働きを殺す所業は本社に報告させてもらった。オヌシは今日付けで免職処分だ。慢心上司退職すべし。慈悲はない」ジンジ・ニンジャはマキモノを縦に開き、大きく掲げて見せた。7

2015-11-05 22:25:29
赤い方の蟹 @kaori6113

それは社長の実印入り辞令通達!「グワーッ免職!退職金すらもらえないのか!」ファービー常務は少ない毛を掻き毟って悔し涙を流す。マコトは唖然として、白装束のニンジャをまじまじと眺めた。8

2015-11-05 22:25:49
赤い方の蟹 @kaori6113

「不服があるならば本社に申し立てよ。もっとも、キサマの愚痴を聞いてくれるものはもはやおらぬ。オーキニ・オーサカ支社は営業成績が著しく悪いため、本社は抜本的な人事改革に乗り出す。観念してハイクを詠め」ジンジ・ニンジャはそういうと、マコトを連れて取締役室を後にした。9

2015-11-05 22:26:12
赤い方の蟹 @kaori6113

「常務とその取り巻きの排除はこれで終了だ。オヌシを貶める輩は駆逐された。今後は引き続き、自らの業務に勤しむがよい」ジンジ・ニンジャは支社ビルの出口で立ち止まり、マコトにそう告げた。「ありがとうございました。あの、一つ聞いていいですか?」「何なりと」11

2015-11-05 22:28:29
赤い方の蟹 @kaori6113

「あなたは本当にニンジャなんですか?伝説に伝わるニンジャなら、人間が見れば深刻なニンジャ・リアリティ・ショックが後遺症として残るはず。なのに僕は初めてあなたにお会いしてから、一度もショックを受けていない。周りの社員も驚いていたけれど、深刻な後遺症は出ていません」12

2015-11-05 22:28:45
赤い方の蟹 @kaori6113

「よく気が付いたな。いかにもその通りだ」ニンジャは自らの白装束を剥ぎ取った……すると現れたのはスーツ姿の青年!少し恥ずかしそうだ。13

2015-11-05 22:29:04
赤い方の蟹 @kaori6113

「人事通達を行う際に、サラリマン姿ではトラブルが起こることが多いのです。何しろ私はまだ若いので、辞令を突きつけても舐められて往生際が悪いんですね。そこで、古代から日本人が本能的に恐れるニンジャに身をやつすこともあります。この支社の場合はこの方法が有効と判断しました」14

2015-11-05 22:29:27
赤い方の蟹 @kaori6113

「うちのことをよくご存じですよね。短い期間に、社内の細かい人間関係まで把握し、手を打っていた。あなたはいったい、何者なんですか」マコトは内心の動揺を隠せないまま答える。青年は彼と同じ30代前半くらいと思われた。15

2015-11-05 22:29:44
赤い方の蟹 @kaori6113

青年はふたたび照れた。「実は私も、元社員なんです。退職後、MBAを取得し、人事コンサルタントとして独立しました。以来、雇用先から承諾を得て、内部の人間では着手しにくい人事改革プランの遂行などを手がけています」16

2015-11-05 22:30:02
赤い方の蟹 @kaori6113

青年は支社ビルを見上げた。「この支社はちっとも変わっていない。社員の入れ替わりが激しく、上はいつまでものさばっている。私もファービーが専務の時にずいぶんいびられました。もっとも、その時にはもう少し毛がありましたが」二人は揃って吹き出した。17

2015-11-05 22:30:26
赤い方の蟹 @kaori6113

「あなたの観察・洞察力、困難への対応力はたいしたものだ。この支社はこれから激動の時を迎えます。社員にも精神的負担がかかり、顧客へのサービスに影響を及ぼすかもしれない。今後、あなたがここに残っておられる間は、お力を貸していただけると嬉しい。私も本社にバックアップを要請します」18

2015-11-05 22:30:54
赤い方の蟹 @kaori6113

「もちろんです。たいした力はありませんが、支えてくれた社内のみんなとしばらくは頑張りたいと思います」二人は握手した。「これは勘ですが、あなたもきっと成し遂げたいことをお持ちなんでしょうね。志を。幸運を祈ります」青年は握手したまま言った。19

2015-11-05 22:31:20
赤い方の蟹 @kaori6113

「ありがとう。私もあなたのご活躍を祈ります」マコトは正面から相手の瞳を見つめた。青年が微笑んだ。「それでは失礼します」「お気をつけて」青年は振り返り、颯爽と歩き出す。その後ろ姿を見送り、マコトも支社に向かってまっすぐ歩きだした。20

2015-11-05 22:31:37
赤い方の蟹 @kaori6113

【倍返し!ジンジ・ニンジャ ファービー常務の巻】終わり

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