北野勇作さんの【ほぼ百字小説】

北野勇作さんの【ほぼ百字小説】と関連ツイートをまとめました。 2016年6月30日発売の年刊日本SF傑作選「アステロイド・ツリーの彼方へ」(創元SF文庫)に、2015年にツイートされた1~151から100作が収録されました。 https://www.amazon.co.jp/dp/448873409X/ref=cm_sw_r_tw_dp_5mczxb130CQX9 1001篇以降を「その2」 https://togetter.com/li/1130221 にまとめました。 続きを読む
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北野勇作 『じわじわ気になる(ほぼ)100字の小説』発売中! @yuusakukitano
【ほぼ百字小説】(1) 娘とプールに行った帰り道、巨大な天使が更地に落ちていた。家に着くなり妻に娘を渡し、カメラを掴んでまた自転車に飛び乗る。どうしたの、と叫ぶ妻に、天使っ、とだけ答えて自転車を漕ぎながら見上げる空は、赤。
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【ほぼ百字小説】(2) 二階の物干しのすぐ前に裏の家との境のブロック塀があって猫の通路になっている。とつとつと肉球を鳴らし、猫一匹分の幅の塀の上を猫が次々に歩いていく。夕方、交通量が増えると、後足で立って横歩きですれ違う。
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というわけで、【ほぼ百字小説】をたまに(週に2つくらい)ここに書くと思いますが、いつまで続けるかわかりません。まあ気が向いたら続けるし、めんどくさくなったらやめます。あ、「百字」ではなく「ほぼ百字」にしたのは、そのほうがボボ・ブラジルっぽくてかっこいいと思ったからです。
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とくに理由はないです。なんとなくおもしろそうだと思ったから。
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【ほぼ百字小説】(3) ぼくたちは黄昏テレビと呼んでいた。日の光が弱くなって、誰が誰だかわからなくなる時刻に映るから。四角い枠の中の小さな世界に色は無い。それもやっぱり黄昏みたいで、本当は何色なんだろうね、とよく話し合った。
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【ほぼ百字小説】(4) 妻が山に行っている間に稲刈りに田舎へ帰り、稲刈りついでに蛙を捕まえて戻ってきた。前から蛙を欲しがっていた娘はご機嫌だ。でもなあ、蛙を飼うのはかなり難しいと思うぞ。大丈夫だよ、理科の先生に相談するから。
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【ほぼ百字小説】(5) 工業高校の塀の上を歩けば、工場との境目を抜けて商店街の屋根まで一直線、支柱についた梯子を降りれば駅はすぐそこで、かなりの近道。ただ、途中の屋根の張り出したあたりは近所の猫の集会場で、夜間は注意が必要。
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【ほぼ百字小説】(6) あの路地を通るのを怖がっていた娘は、それを言うだけでも怖いから、と理由を教えてくれず、でも四年生になったら怖くなくなってるよ。そんな言葉を信じて楽しみに待っているのに、五年生の娘はまだ教えてくれない。
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【ほぼ百字小説】(7) ごとごとごとごと、ベランダが騒がしいから覗いてみると、また亀が何か作っている。いつからか、いろいろ器用に自作するようになった。なあ、あれって亀なのかなあ? 妻に言うと、今さらそんなこと、と呆れられた。
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【ほぼ百字小説】(8) 稲刈りだというのに田植えのようなぬかるみで、稲刈り機のタイヤがいちど空回りを始めるともう前進も後退もできず、ただずぶずぶと泥に沈んでいく。そうか、稲刈り前によく見る夢だ。いっしょに沈みながら思い出す。
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【ほぼ百字小説】(9) ごとごとごとごと、ベランダが騒がしいから覗いてみると、また近所の猫たちが集会を開いている。中心にい るのはうちで飼っている亀だ。なあ、あいつら猫なのかなあ? 妻に言うと、今さらそんなこと、と呆れられた。
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【ほぼ百字小説】(10) 夜、水路に架かる石の橋まで走っていく。夜でなければ、見ることができない。あの橋の上からでないと、見ることができない。走ったあとでなければ、見ることができない。いろんな方法を試して、やっとわかったこと。
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【ほぼ百字小説】(11) 缶詰工場だ。缶詰を作る工場ではなく缶に詰められた工場。缶で送られ、目的地で缶から出されて稼働する。工員も缶詰になる。仕事がら自分で自分を詰めることはできるが、蓋だけは外の誰かにしてもらわねばならない。
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【ほぼ百字小説】(12) 妻がザリガニを拾ってくる。アスファルト道路の上を歩いてくるのが遠くから見えたのだという。なるほど赤い立派な鋏はよく目立つ。恩返ししてくれるかもね。いや、恩返しに行くところを邪魔しちゃったんじゃないか。
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【ほぼ百字小説】(13) 納戸の奥には、今もスナイパーがいる。私が小学生の頃からだから、もう四十年以上になるのか。その位置からでないと標的を狙えないのだという。許可を与えた父と母はもうこの世におらず、妻にはまだ話せていない。
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【ほぼ百字小説】(14) 離陸直前、娘の手から蛙を没収したのはキャビンアテンダントで、もちろん仕事だから仕方がないが、娘のテンションは急降下。責任を持って自然に還しておきますからね、とにっこり笑う彼女に、還すわけないよ、と娘。
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【ほぼ百字小説】(15) いざというときのために抜け穴を確認しに来たのだが、公園の隅にある穴の入口には長い行列ができていて、順番はなかなか回ってきそうにない。前はこんなことなかった のになあ。どうやら皆、そろそろだと思っているらしい。
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【ほぼ百字小説】(16) それが銀杏の葉だとこちらが気づいていることには、まだ気づかれてはいないはず。このまま化かされたふりで化かし続けるか。来なくなってしまったら寂しいからな。で、今夜も酒を用意して、狸が来るのを待っている。
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【ほぼ百字小説】(17) ここはホウキの墓場。ぶっ壊れたホウキが吹き溜まるところさ。懐かしいチリトリには、もう会えない。しかしチリトリって、文字だけ見てるとなんかチリトリじゃないみたいなんだよな。長いこと見ていないせいかなあ。
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【ほぼ百字小説】(18) 火星を目印にすれば複雑な路地を抜けて簡単に帰宅できると聞いてずっとそうしてきたのに、火星だとばかり思っていたあの赤い星が火星ではなかったことを知り、ここが私の家ではなかったこともわかって、今さら困る。
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【ほぼ百字小説】(19) 稲刈りが終わると、田んぼは湧き上がる緑の液体と赤黒い触手でたちまち誰も近づけなくなる。もちろん春までは用事がないのだから問題はない。いつそんな契約を結んだのか知らないが、まあ無駄がなくて結構なことだ。
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【ほぼ百字小説】(20) 定期的に襲ってくる人食い巨大怪獣への対策として行われたのは人を巨大化する計画。誰か一人が巨人となって戦う。勝てるんですかね。勝てなくても、今回から食われるのはひとりで済むだろ。あんなに大きいんだから。
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【ほぼ百字小説】(21) あの地底怪人の正体、これまでは超進化をとげたモグラと考えられていたが、じつはイタチ。土の中ではなく道端の溝の中を歩いて移動して、登場のときだけ別売のドリルを用いて地底からの出現に見せかけていたらしい。
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【ほぼ百字小説】(22) これって何のスイッチなの、と妻が言って、壁のスイッチをぱちん。途端に、何もなくなってしまった。仕方がないから手探りで壁沿いにスイッチを探して、ぱちん。妻と世界が戻ってきた。あ、壁だけはずっとあったな。
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【ほぼ百字小説】(23) 亀の子束子でベランダの亀を磨き、部屋に入れてやる。冬眠前のこの時期は、何も食べず何も出さず、でもけっこう動く。メカっぽい。カーペットの上をしゅるしゅるると音を立てて移動する。ルンバか、と私はつぶやく。
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