とあるIFの独り言

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

錠の、落ちる音。 男は、天井を見上げて座る。 窓が１つ、上の方にあいている。 寒空月から光が差し込む、暗がり。 目の前には、１本のロープ。 手には酒、それだけで。 #IFの日

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

見上げて一口酒を飲む。 喉を焼く、味がする。 美味くは無い。甘美でもない。 ただの頭を麻痺させるだけの水。 飲むたびに寿命が縮む気がするけれど、それで死ぬならとっくに死んでる。 ロープ越しに窓を見る。本日の月はなお美しい。 それすら、意味は無いけれど。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

吹き込む風は、寒い。 これならそう簡単には腐らない。 風の入りは悪くない。 これなら、臭気が満ちる事も無い。 月の光りが白くて目映い。 きっと間違えずに、手に取る事が出来るだろう。 思うだけで動きはしない。 座ったまま、ただ、酒を飲む。流し込む。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

ぼうっと見上げて、いるだけ。 死にたいやつは死ねば良い。 ならば自分が死ぬ事を、何故良しとしないのか。 大きな矛盾。どうしようもない、相反する問い。 生きたいんだろうか。 何十回と、何百回と繰り返す声に、いつだって答えは出ない。 生きたいと、思って良い筈じゃないか。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

その間にも思考はループする。 登って、落ちて、自重で骨が外れるか　それとも気管が閉まるのか。 助かる見込みは一桁のパーセンテージ。それすらも０にしてしまえたら。 縄が切れる可能性。壁をぶち破るバカがいる可能性。この部屋を誰かが訪ねる可能性。 自分が救われる、確率を。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

「ああ、まったくもって馬鹿らしい」 ゆらり、揺れる身体の幻視。 「しないさ」 そんな馬鹿なこと 「怒られるのは、嫌いだ」 誰に？という問いに、聞こえないふりをする。 きっとそこには何もない。 天国や地獄なんて、そも、幻想だ。 きっとそこには何もない。 そうでなければ救われない

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

揺れる、身体を幻視する。 いなくなる、自分が終わる事に対する、愉悦は、多分言ったところで解る物では無いだろうし、解ると言われても困ってしまう。 酒を飲む。ぐいと、流し込む。 意識が途切れる時、そこに月は見えるだろうか。 呼吸が出来なくなった時、自分は嫌だと足掻くだろうか。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

くつくつと笑う。そうしたら、格好悪いなぁ。 死ぬのなんて、きっとそれほど良いもんじゃない。 そんな事は解ってる。 死の女神なんて居るわけがない。 そんな事は知っているんだ。 自分が終わるその時を、出来れば自分で決めたいだけだ。 「我儘だなぁ」 傲慢で、強欲だ。そういう人間だ。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

それでも魅かれるんだ。自分が終わるその時に。 ゆらゆらと、揺れる幻視に語りかける。 ぐったりと動かない身体は、ただ大きいだけで邪魔だろう。 虫がくるのはいつだろう。冬だからきっと遅い。 誰かに見つかるのはいつだろう。 この場所から出されるのは、どんな時だろう。 首吊りは、嫌だなぁ

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

顔が膨れるんだ。折角のイケメン顔が台無しだ。首も伸びるし、体液も、多分どうやったってこぼれる。格好悪い。 「格好良く死にたいよなぁ」 くつくつ、笑いながら、揺れる幻視に語りかける。 出来れば戦場で。 出来れば他の人間と共に。 出来る事なら、誰かの前で、笑いながら。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

出血多量の末に、鼓動が止まるのも悪くない。真っ二つにされるのはちょっとやだ。出来れば顔は残して欲しい。折角のイケメンだし。 ああ、そうだ。炎に焼かれるのも悪くない。出来れば灰も残らない様な。そも、最初から自分が、居なかったかのような。 思ってから考える。 ああ、それはさみしいな。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

誰か覚えていてくれたらなぁ。ぼんやりとで良いからさ。 そう言えば、こんなやつが居たなぁなんて、その程度で良いからさ。 その割には、この手に色んなものを掴んでしまったけど。 誰かの心に居座るのは、すこし苦手なんだ。 誰を表舞台の英雄にしよう。 友の顔を思い浮かべる。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

ああ、だめだ。どいつもこいつも引き受けてくれそうにない。 テメエが立てと背中を蹴り飛ばしてくる連中ばかりだ。 「なんでだろうなぁ」 くつくつ笑いながら酒を飲む。少しだけ、甘い気がした。 幻想だ。その味もまた。 見上げる。何もぶら下がっていやしない、揺れてもいない縄だけが見える。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

立ち上がる。 そのまま手を伸ばして、天井からぶら下がる、ざらついた、まとめられた束に手を伸ばす。死んだ植物の手触り。 そのまま一歩、後ろへ下がる。 夜も更けてきた。おひらきにしよう。

スッフィー@今は休憩中 @dindesfidante

錠を開けて、外へ出る。 これはとあるIFのお話。 いつだって彼の頭に有って、誰に語る事も無い「もしも」の話。 誰が聞く事も恐らくない。 そんな他愛も無い話。 それだけの事。 #IFの日　11/12